2015年も残すところ5日。今シーズンの海外ロードレースを振り返るプレイバックシリーズを全4回に分けてお届けします。第1回は1月のシーズンインから3月のクラシックシーズンまでをプレイバック!



1月

美しいビーチを横目に進むメイン集団美しいビーチを横目に進むメイン集団 photo:Kei Tsuji

バトルを繰り広げるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)バトルを繰り広げるローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:TDWsport2015年もシーズン幕開けを告げるのはオーストラリア。多くの選手にとってシーズン初戦であるUCIワールドツアー初戦ツアー・ダウンアンダー開幕前の興行クリテピープルズチョイスクラシックではマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が勝利。しかしキッテルは春先に患ったウィルス感染症で不調に陥り、2015年シーズンは8月のツール・ド・ポローニュ第1ステージの1勝に終わっている(2014年シーズンは13勝)。

表彰台に向かうカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)表彰台に向かうカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)にとって最後のUCIワールドツアーレースであるダウンアンダー本戦ではオーストラリア勢が激突。第3ステージの山頂フィニッシュで勝利したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が首位に立ち、最難関第5ステージではリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)がデニスを振り切って勝利。しかしポートは総合首位に2秒届かず、地元アデレード出身のデニスがダウンアンダー制覇を果たした。総合3位でダウンアンダーを終えたエヴァンスは、自身が主催するカデル・エヴァンス・グレートオーシャンレースを最後に現役を引退した。

アルゼンチンで総合争いを繰り広げるダニエル・ディアス(アルゼンチン、ファンヴィック・ブラジルインベスト)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)アルゼンチンで総合争いを繰り広げるダニエル・ディアス(アルゼンチン、ファンヴィック・ブラジルインベスト)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVosダウンアンダーと同時期にアルゼンチンで開催されたツール・ド・サンルイスにも多くのビッグネームが出場。集団スプリントで2度カヴェンディッシュを下した新星フェルナンド・ガビリア(コロンビア)はその後エティックス・クイックステップへの移籍を決めている。総合ではキンタナを寄せ付けない強さを見せたダニエル・ディアス(アルゼンチン、ファンヴィック・ブラジルインベスト)が山岳ステージで2勝し、自身2度目の総合優勝を果たした。

1月下旬にはヨーロッパでもシーズンが始動。地中海に浮かぶ温暖なマヨルカ島を舞台にしたチャレンジマヨルカには別府史之(トレックファクトリーレーシング)も出場した。4日間のレースでマッテオ・ペルッキ(イタリア、IAMサイクリング)が2勝し、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が大会3日目に独走勝利を飾っている。



2月

中東第3のレースとして定着しつつあるドバイツアー中東第3のレースとして定着しつつあるドバイツアー photo:RCSsport

砂漠を貫く直線路を走るツアー・オブ・カタール砂漠を貫く直線路を走るツアー・オブ・カタール photo:A.S.O.ジロ・デ・イタリア主催者RCSスポルトが手がける中東第3のレースとして2014年に産声をあげたドバイツアーが2月上旬に開催。連日スプリンターたちがバトルを繰り広げ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)が1勝ずつ飾って後半戦へ。最大勾配17%の激坂フィニッシュが設定された第3ステージでジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が勝利して首位に立ったものの、最終ステージで2勝目を飾ってボーナスタイムを獲得したカヴェンディッシュが総合優勝に輝いた。

登り基調のスプリントで勝利したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)登り基調のスプリントで勝利したファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waeleドバイツアーに続いてASO主催のツアー・オブ・カタールツアー・オブ・オマーンが開催。カタールではアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)がステージ3勝でハットトリックを達成する。第3ステージの個人TTで最速タイムを叩き出したニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)が大会2連覇を果たした。砂嵐と灼熱の過酷なコンディションによって精鋭スプリントでファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)がシーズン勝利をつかむ。クイーンステージでヴァンガーデレンらを下した27歳のラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)が総合優勝に輝いている。

アンダルシアを制したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)アンダルシアを制したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleグランツールさながらの激しい総合バトルが繰り広げられたのが、スペインのブエルタ・ア・アンダルシア初日の個人タイムトライアル3日目の山頂フィニッシュを制したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)に対してクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がアタック。フルームは第4ステージの山頂フィニッシュでコンタドールを引き離すことに成功し、ステージ優勝を飾るとともに2秒差で大会制覇を果たしている。

チームスカイの勢いはポルトガルでも継続。ヴォルタ・アン・アルガルヴェでミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)を下したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)が総合優勝に輝いている。オールラウンダーとして真価を発揮したトーマスは好調のままクラシックシーズンに挑むこととなった。



3月

バイクを風上に倒しこみながらの走行バイクを風上に倒しこみながらの走行 photo:Tim de Waele

ワンツーフィニッシュを決めたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)のスカイコンビワンツーフィニッシュを決めたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)とゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)のスカイコンビ photo:CorVos3月に入るといよいよクラシックシーズン幕開け。セミクラシックのオンループ・ヘットニュースブラッドではイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)がエティックス・クイックステップ3名のアタックを単独で処理してスプリント勝利。翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネではカヴェンディッシュが勝利してエティックス・クイックステップの面目を保っている。

雪で霞むゴールに単独飛び込むナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)雪で霞むゴールに単独飛び込むナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:CorVos世界王者クヴィアトコウスキーのプロローグ制覇で幕開けしたパリ〜ニースは最終日まで総合争いがもつれる展開に。第4ステージの山頂フィニッシュでポートとトーマスがチームスカイにワンツー勝利をもたらしたもののクヴィアトコウスキーが首位キープ。ニースにフィニッシュする第6ステージで逃げ切ったトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)が首位に立ったが、エズ峠を駆け上がる最終山岳タイムトライアルでポートが最速タイムを叩き出し、2度目のパリ〜ニース制覇を果たしている。

フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waeleイタリア・トスカーナの未舗装路を走るストラーデ・ビアンケではゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)が勝利。続く新城幸也(ユーロップカー)出場のティレーノ~アドリアティコではヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が激突。急勾配の登りを含む第4ステージでワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)が勝利したものの、降雪に見舞われたテルミニッロ山頂にフィニッシュするクイーンステージでキンタナが勝利すると総合でも首位に。キンタナ総合優勝の第50回大会は、新城の逃げとペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)の今シーズン初勝利、そしてカンチェラーラの個人タイムトライアル制覇で締めくくられた。

横風に煽られて落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)横風に煽られて落車したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleイタリアに春の訪れを告げるミラノ〜サンレモは雨の中のサバイバルレースに。チプレッサとポッジオの攻防を切り抜けた26名の集団スプリントでジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が勝利した。3月後半に入ると人々の関心はベルギー方面に移り、ツールの石畳対策としてキンタナも出場したドワーズ・ドア・フラーンデレンでイェーレ・ワレイス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)が、バイクが斜めに傾く暴風雨の中で行われたヘント〜ウェヴェルヘムでルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)が勝利している。なお、パオリーニは7月のツール・ド・フランス出場中にコカイン陽性が発覚。現在UCIアンチドーピング判事がパオリーニの陽性を審議中だ。

アジアンライダー賞トップの早川朋宏(愛三工業レーシング)を含め、各賞ジャージの着用者が表彰台にアジアンライダー賞トップの早川朋宏(愛三工業レーシング)を含め、各賞ジャージの着用者が表彰台に photo:Kei TsujiE3ハレルベークではカンチェラーラが落車して腰椎横突起骨折。クラシックシーズンの主役がフランドルやルーべを前に戦線を離脱する事態に。好調トーマスがE3ハレルベークを制している。

ショレ・ペイ・ド・ロワールで6位に入った新城はクリテリウム・アンテルナシオナルにも出場。ジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が2年連続で同大会を制した。スペインのボルタ・ア・カタルーニャではバルベルデがステージ3勝の活躍。ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)がクイーンステージを制したものの、総合優勝の栄冠はパリ〜ニース覇者ポートの手に。

アジアでもシーズンは本格化。ツール・ド・ランカウイクイーンステージを制したヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)が総合優勝。同ステージで16位に入った早川朋宏(愛三工業レーシング)がアジア人最優秀賞に輝く。イラン勢の支配的な強さが目立ったツール・ド・台湾では土井雪広(チーム右京)が総合6位でフィニッシュした。

4月のクラシックシーズン以降の模様はvol.2で!




text:Kei Tsuji

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