ベルギー、フランドル地方でオンループ・ヘットニュースブラッド(UCI1.HC)が開催され、ヨーロッパにクラシックシーズンが到来。盤石な体制を敷いたエティックス・クイックステップを、イアン・スタナードが破って優勝。大会連覇を成し遂げた。
オンループ・ヘットニュースブラッド2015 コースマップ (c)www.omloophetnieuwsblad.be
オンループ・ヘットニュースブラッド2015 コースプロフィール (c)www.omloophetnieuwsblad.be
8名の逃げグループがエシュロンを組んで石畳を走る photo:CorVosヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙が1945年に創設したセミクラシックである、オンループ・ヘットニュースブラッド。
集団をコントロールするチームスカイやエティックス・クイックステップ photo:CorVos今年で70回目を迎える今大会には、計23チームから2回の優勝経験を持つフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)や、昨年一騎打ちを制したイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)の他、トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)ら春の大一番を見据える強豪選手を含む、179名の選手達がエントリー。フランドル地方を代表する急坂が11カ所、石畳セクションが10カ所凝縮された200kmのコースに向け、ベルギー第3の都市ヘントからスタートを切った。
逃げグループに単騎合流したルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos冷雨に見舞われた昨年とは異なり、この日の最高気温は10℃ほど。スタート直後から始まったアタック合戦を経て、アレクシ・グジャール(フランス、AG2Rラモンディアール)やアルバート・ティマー(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)、マシュー・ブラマイヤー(アイルランド、MTNキュベカ)ら8名の逃げグループが形成される。
先頭4名を必死に追走するセプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)やグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:CorVos最大で6分のリードを稼ぎだしたエスケープを追うのは、レース前から2強と目されていたブラドレー・ウィギンズ(イギリス)らチームスカイとエティックス・クイックステップ勢。集団内では多数の落車が発生し、後半のペースアップも加わったことで最終的には74人が未完走という非常に厳しいレースが繰り広げられることとなる。
すると140km地点のターイエンベルグ(最大勾配15.8%)でボーネンが動く。チームメイトと共に先頭に立ちペースアップを図ると集団は引き伸ばされ、エティックス4名(ボーネン、ニキ・テルプストラ、ゼネク・スティバル、ステイン・ファンデンベルフ)、スタナード、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)らを含む集団ができあがる。
エイケンベルグを越えると集団の動きも小康状態となり、パンクで遅れていたロットNLユンボのエース、セプ・ファンマルク(ベルギー)は無事に合流。その中からルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が単騎先行しティマーとブラマイヤーのみとなっていた逃げグループに追いついたが、次第に勢いを増すプロトンには敵わず。46km地点でレースは振り出しに戻った。
続くレベルグ、モーレンベルグでも人数を揃えるエティックス・クイックステップを中心に活発なペースアップが行われ、先頭はスティバルを除いたエティックス3名とスタナードの4名にまで絞り込まれる。再びパンクに見舞われたファンマルクは遅れたスティバル、ファンアフェルマートと共に必死の追走を試みたものの、結果的にハイペースを維持する先頭4名に追いつくことはできなかった。
エティックス・クイックステップ(ボーネン、テルプストラ、ファンデンベルフ)とスタナード。強力なファンマルクとファンアフェルマートの合流を嫌ったため、エティックスはスタナードを蹴落とす戦略を取ることなく3名でハイペースをキープする。
「エティックス・クイックステップの3人は勝利に向けて意思統一されていた。彼らはここ10年このレースで勝利が無かったし、ボーネンを勝たせたいことは明白だった。ファンマルクとファンアフェルマートが追走を掛けていたから、彼らは牽き続けるしか無かった。反対に僕は彼らの後ろに付いているだけで良かったんだ」とスタナードはこの時のことを振り返っている。
残り10kmを切って4名の逃げ切りが確定的になると、ボーネンはローテーションに加わらずにスタナードのマークに切り替える。そしてスタナードが先頭にでてペースが緩んだ瞬間、満を持してボーネンが発進。苦しそうな表情を見せつつ数秒のリードを稼いだが、3人の後方で脚を温存していたスタナードが冷静に追いかけて吸収する。
次いでテルプストラがファンデンベルフを連れてアタックしたものの、脚を使ってしまったボーネンが取り残されたため踏み止め合流を待つことに。するとこの状況を見たスタナードが先行すると、まずはファンデンベルフが、ついでボーネンが脱落。テルプストラと1対1の状況に持ちこむことに成功すると、そのまま最終ストレートへと到達した。
ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)とのマッチスプリントを制したイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos
追走したものの、5秒届かなかったトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:CorVos
疲れた表情で4位フィニッシュするステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ) photo:CorVos先行でスプリントを開始したテルプストラだったが、昨年大会でファンアフェルマートを下しているスタナードはゴール寸前で失速したテルプストラをパス。2年連続、ヘントのフィニッシュラインでのマッチスプリントを制し連覇を飾った。
2年連続で表彰台の中央に立ったイアン・スタナード(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos「ボーネンがアタックしたときは冷静にどうすべきか?と考えた。全力で追いついたら再びアタックを掛けられてしまう。だから時間を掛けて少しづつ差を詰めていった。後ろに付く彼らもキツそうだったから、僕にとっては最高の展開だったんだ」とスタナードは後に語る。
「今日はチームメイトが大きく僕の勝利に貢献してくれたよ。ツールの優勝者がサポートしてくれるなんて、どんな気分だったことか!常に集団前方で展開していたし、ポジション取りも完璧だった。最後はエティックス・クイックステップが僕を運んでくれたから、僕は最後の4kmだけレースをするだけで良かったんだ」と笑いながらTVインタビューに答えた。
一方で「今日は最終盤に大きなミスをしてしまった」と悔やむのは、3対1という絶対的有利な状況を落としてしまったボーネン。「僕らは3人でレースをコントロールしていて、まずはニキが、次いで僕がアタックを掛けた。間違いなく最高のタイミングだと思っていたけれど、スタナードは3対1の状況でも戦略を持って走っていた。だから僕らよりも脚がフレッシュだったんだ」
「あの時僕らがするべきはスプリントを待つことだった。にもかかわらず最後の1時間を本能的に全開で踏んでしまったんだ。そこでニキが行き、スタナードが追い、最後はマッチスプリントになってしまった。勝てるレースを逃してしまったけれど、これが自転車競技だ。スタナードにおめでとうと言いたい。彼は本当に強かったし、スマートに走ってみせた。でも僕らはチームとして強さを見せたことは確かだし、来るべきレースに向けて良い感触を掴むことができた」と翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネ、またクラシック大一番に向けてのリベンジを語った。
オンループ・ヘットニュースブラッド2015結果
text:So.Isobe
photo:CorVos






すると140km地点のターイエンベルグ(最大勾配15.8%)でボーネンが動く。チームメイトと共に先頭に立ちペースアップを図ると集団は引き伸ばされ、エティックス4名(ボーネン、ニキ・テルプストラ、ゼネク・スティバル、ステイン・ファンデンベルフ)、スタナード、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)、エドアルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)らを含む集団ができあがる。
エイケンベルグを越えると集団の動きも小康状態となり、パンクで遅れていたロットNLユンボのエース、セプ・ファンマルク(ベルギー)は無事に合流。その中からルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)が単騎先行しティマーとブラマイヤーのみとなっていた逃げグループに追いついたが、次第に勢いを増すプロトンには敵わず。46km地点でレースは振り出しに戻った。
続くレベルグ、モーレンベルグでも人数を揃えるエティックス・クイックステップを中心に活発なペースアップが行われ、先頭はスティバルを除いたエティックス3名とスタナードの4名にまで絞り込まれる。再びパンクに見舞われたファンマルクは遅れたスティバル、ファンアフェルマートと共に必死の追走を試みたものの、結果的にハイペースを維持する先頭4名に追いつくことはできなかった。
エティックス・クイックステップ(ボーネン、テルプストラ、ファンデンベルフ)とスタナード。強力なファンマルクとファンアフェルマートの合流を嫌ったため、エティックスはスタナードを蹴落とす戦略を取ることなく3名でハイペースをキープする。
「エティックス・クイックステップの3人は勝利に向けて意思統一されていた。彼らはここ10年このレースで勝利が無かったし、ボーネンを勝たせたいことは明白だった。ファンマルクとファンアフェルマートが追走を掛けていたから、彼らは牽き続けるしか無かった。反対に僕は彼らの後ろに付いているだけで良かったんだ」とスタナードはこの時のことを振り返っている。
残り10kmを切って4名の逃げ切りが確定的になると、ボーネンはローテーションに加わらずにスタナードのマークに切り替える。そしてスタナードが先頭にでてペースが緩んだ瞬間、満を持してボーネンが発進。苦しそうな表情を見せつつ数秒のリードを稼いだが、3人の後方で脚を温存していたスタナードが冷静に追いかけて吸収する。
次いでテルプストラがファンデンベルフを連れてアタックしたものの、脚を使ってしまったボーネンが取り残されたため踏み止め合流を待つことに。するとこの状況を見たスタナードが先行すると、まずはファンデンベルフが、ついでボーネンが脱落。テルプストラと1対1の状況に持ちこむことに成功すると、そのまま最終ストレートへと到達した。




「今日はチームメイトが大きく僕の勝利に貢献してくれたよ。ツールの優勝者がサポートしてくれるなんて、どんな気分だったことか!常に集団前方で展開していたし、ポジション取りも完璧だった。最後はエティックス・クイックステップが僕を運んでくれたから、僕は最後の4kmだけレースをするだけで良かったんだ」と笑いながらTVインタビューに答えた。
一方で「今日は最終盤に大きなミスをしてしまった」と悔やむのは、3対1という絶対的有利な状況を落としてしまったボーネン。「僕らは3人でレースをコントロールしていて、まずはニキが、次いで僕がアタックを掛けた。間違いなく最高のタイミングだと思っていたけれど、スタナードは3対1の状況でも戦略を持って走っていた。だから僕らよりも脚がフレッシュだったんだ」
「あの時僕らがするべきはスプリントを待つことだった。にもかかわらず最後の1時間を本能的に全開で踏んでしまったんだ。そこでニキが行き、スタナードが追い、最後はマッチスプリントになってしまった。勝てるレースを逃してしまったけれど、これが自転車競技だ。スタナードにおめでとうと言いたい。彼は本当に強かったし、スマートに走ってみせた。でも僕らはチームとして強さを見せたことは確かだし、来るべきレースに向けて良い感触を掴むことができた」と翌日のクールネ〜ブリュッセル〜クールネ、またクラシック大一番に向けてのリベンジを語った。
オンループ・ヘットニュースブラッド2015結果
1位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
2位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
3位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
4位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
5位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
7位 ゼネク・スティバル(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
9位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
10位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
2位 ニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)
3位 トム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
4位 ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
5位 セプ・ファンマルク(ベルギー、ロットNLユンボ)
6位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
7位 ゼネク・スティバル(ベルギー、エティックス・クイックステップ)
8位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
9位 ルーク・ロウ(イギリス、チームスカイ)
10位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
4'58"41"
+08"
+15"
+1'24"
+1'29"
+4'35"
+4'55"
+08"
+15"
+1'24"
+1'29"
+4'35"
+4'55"
text:So.Isobe
photo:CorVos
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