焼け焦げた内陸部を進む逃げグループ焼け焦げた内陸部を進む逃げグループ photo:Kei Tsuji
マヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)と宮島正典マッサーマヌエーレ・ボアーロ(イタリア、ティンコフ・サクソ)と宮島正典マッサー photo:Kei Tsujiリーダージャージを着るジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)リーダージャージを着るジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji
アデレード内陸部を進むプロトンアデレード内陸部を進むプロトン photo:Kei Tsuji


大規模なブッシュファイアーに見舞われた内陸部を進むプロトン大規模なブッシュファイアーに見舞われた内陸部を進むプロトン photo:Kei Tsujiツアー・ダウンアンダー第3ステージは前半戦最大の山場だ。コース全長は143.4kmで、獲得標高差は2555m。前日同様アデレードヒルのアップダウンをこなし、最後の最後に初登場の1級山岳パラコームを駆け上がる。

補給地点でサコッシュを受け取るウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック)補給地点でサコッシュを受け取るウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック) photo:Kei Tsuji登坂距離1200m/平均勾配9%の登りを終えると、そこからフィニッシュラインまでは600mの緩斜面。特に登りの前半部分の勾配は15%近く、試走した選手が「壁だった」と口を揃えるほど。総合争いにも大きく影響する3時間半のレースは、30度オーバーの夏らしい暑さの中で繰り広げられた。

サコッシュを受け取るピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)らサコッシュを受け取るピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji大規模なブッシュファイアー(山火事)でダメージを受けたアデレードヒルを進むうちに、メイン集団からカルヴィン・ワトソン(オーストラリア、トレックファクトリーレーシング)、ウィリアム・クラーク(オーストラリア、ドラパック)、ラッセノーマン・ハンセン(デンマーク、キャノンデール・ガーミン)、アクセル・ドモン(フランス、AG2Rラモンディアール)の4名が抜け出すことに成功。タイム差を3分半まで広げると、平均38km/h前後のスローペースを刻みながらの巡行が始まった。

モビスター、チームスカイ、UniSAオーストラリアによる安定したペースメイクがレースを支配する。先頭4名の逃げ切りチャンスはレースとともに減り、ドモン、ハンセン、ワトソンの順に白旗。最後まで抵抗したクラークもフィニッシュまで8kmを残して吸収された。

下り基調の渓谷沿いの2車線路から右に曲がってすぐに1級山岳パラコームの「壁」が始まるため、メイン集団の先頭ではポジション争いが熾烈化する。

ジャイアント・アルペシン、チームスカイ、BMCレーシング、アスタナ、オリカ・グリーンエッジが人数を揃えて先頭に上がり、残り2kmを切って1級山岳パラコームに突入。すぐさまメイン集団は崩壊した。



モビスターやチームスカイ、UniSAオーストラリアが牽引するメイン集団モビスターやチームスカイ、UniSAオーストラリアが牽引するメイン集団 photo:Kei Tsuji
抵抗を見せるラッセノーマン・ハンセン(デンマーク、キャノンデール・ガーミン)抵抗を見せるラッセノーマン・ハンセン(デンマーク、キャノンデール・ガーミン) photo:Kei Tsuji抜けるような快晴の第3ステージ抜けるような快晴の第3ステージ photo:Kei Tsuji
1級山岳パラコームに向かうプロトン1級山岳パラコームに向かうプロトン photo:Kei Tsuji


1級山岳パラコームを登るリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)1級山岳パラコームを登るリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)やカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji先頭で登りに入ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)を、ポートを連れたゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がハイペースで追い抜く。そこからアタックの口火を切ったのはリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)だった。

1級山岳パラコームで遅れるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)1級山岳パラコームで遅れるジャック・ボブリッジ(オーストラリア、UniSAオーストラリア) photo:Kei Tsuji前年よりも4kg軽い状態のポートが軽快なアタックを繰り返したが、エヴァンスが紐で繋がれたようにぴったりと食らいついて離れない。ポート、エヴァンス、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)、トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)の4人が飛び出した状態で残り1kmを切った。

後続を振り切ってフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)後続を振り切ってフィニッシュするローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji結局ポートは最後までエヴァンスを引き離せず、先頭4名は後続を引き離せず、1級山岳パラコームの頂上手前で後続がジョイン。するとカウンターアタックでデニスが鋭く飛び出す。周囲が躊躇した一瞬のうちにデニスが独走を開始した。

「登りで位置取りに失敗したものの、先頭でカデル(エヴァンス)がリッチー(ポート)をマークしていたからストレスは無かった。モビスターの選手の後ろについて、リズムを崩さずに急勾配の登りをこなしたんだ」と語るデニスが独走に持ち込み、追いすがるライバルたちを振り切ってフィニッシュ。3秒差の2位にはエヴァンスが入り、BMCレーシングがワンツー勝利を飾るとともに総合ワンツー体制を築いた。

「カデルの走りは素晴らしかった。彼は多くを語らない選手だけど、上手く協力してレースを運べている。正直言ってこの勝利は予想外。リーダージャージを手にしたけど、これからもカデルとともに闘いたい」と24歳のデニスは語る。オーストラリア選手権タイムトライアルで2位に入り、アワーレコード挑戦も表明しているTTスペシャリストが総合首位を走り始めた。

積極的に動きながらも勝利を掴めず、逆にボーナスタイムを獲得したライバルたちから遅れをとってしまったポートは「ここまで全く力を使っていなかったBMCレーシングがこれからレースをコントロールすることになる。人数を揃えた彼らが(最終日前日の)ウィランガで警戒すべき相手になる。理想的な状況とは言えないけど最悪でもない。レースはまだ終わっていないんだから」と笑みを浮かべる。総合9位のポッツォヴィーヴォまで総合タイム差15秒以内。2015年も僅差の総合争いが繰り広げられることになりそうだ。



リーダージャージに袖を通したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージに袖を通したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiポイント賞ジャージを手にしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)ポイント賞ジャージを手にしたカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji



ツアー・ダウンアンダー2015第3ステージ結果
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)         3h35’08”
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)           +03”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
4位 マキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)        +05”
5位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
6位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
7位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
8位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
10位 サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)         +13”

個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)         10h17’06”
2位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)           +07”
3位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)          +09”
4位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)             +15”
5位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、UniSAオーストラリア)
6位 ルーベン・フェルナンデス(スペイン、モビスター)
7位 マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)
8位 マキシム・ブエ(フランス、エティックス・クイックステップ)
9位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
10位 ダリル・インピー(南アフリカ、オリカ・グリーンエッジ)         +22”

ポイント賞
カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)

山岳賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)

ヤングライダー賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)

チーム総合成績
BMCレーシング

text&photo:Kei Tsuji in Adelaide, Australia

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