バルス!優勝候補のニーバリやロドリゲスではなく、グリーンマウンテンの頂上に先頭でやってきたのはランプレ・メリダ所属の27歳ラファエル・バルス(スペイン)だった。サプライズウィンを飾ったバルスが総合リーダージャージを着て残る2ステージを走る。



KOMジャバル・アル・アクダルに向けてオマーン内陸部を進むKOMジャバル・アル・アクダルに向けてオマーン内陸部を進む photo:Tim de Waele


ツアー・オブ・オマーン2015第4ステージツアー・オブ・オマーン2015第4ステージ image:A.S.O.平均勾配10.5%・登坂距離5.7kmのKOMジャバル・アル・アクダル(通称グリーンマウンテン)でツアー・オブ・オマーンの総合争いは佳境を迎える。序盤から10%オーバーが続き、ゴール手前2kmの平均勾配が13%を超える難易度の高い登りがオマーンの総合優勝者を導き出す。

トレックファクトリーレーシングやBMCレーシングが牽引するメイン集団トレックファクトリーレーシングやBMCレーシングが牽引するメイン集団 photo:Tim de Waele第4ステージのコース全長は189km。レース時間は6時間近く、暑く、レース後の移動が長いのが特徴だ。ステージ5位に入ったティボー・ピノ(フランス、FDJ)のSTRAVAログによると、獲得標高差は2,178mで平均スピードは32.6km/h。平均気温36度で最高気温41度。ピノはKOMジャバル・アル・アクダルを平均17.9km/h、平均400W、平均上昇速度1799mで登りきっている。

逃げるステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とハイス・ファンフック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)逃げるステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とハイス・ファンフック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン) photo:Tim de Waele4日連続エスケープのジェフ・ファンメイルハーグ(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)やアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)ら4名が序盤から先行する。両者は中間スプリントでポイントを稼ぐとペースダウンし、ステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、エティックス・クイックステップ)とハイス・ファンフック(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)の2名が引き続き逃げた。

KOMジャバル・アル・アクダルでアタックを仕掛けるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)KOMジャバル・アル・アクダルでアタックを仕掛けるヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleトレックファクトリーレーシング、チームスカイ、ティンコフ・サクソ、モビスター、そしてBMCレーシングが集団前方を固めて逃げを追い、KOMジャバル・アル・アクダル突入前についに先頭2名は捕らえられる。勾配のある登りバトルが始まった。

アタックを仕掛けるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)アタックを仕掛けるティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) photo:Tim de Waele人数を減らす集団から飛び出したのはツール・ド・フランス覇者ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)だった。ニーバリはチームメイトのヤコブ・フグルサング(デンマーク)のために揺さぶりアタックを数回仕掛けたが、BMCレーシングの守りを崩せないままやがては脱落してしまう。

ヴァンガーデレンに対してアタックを仕掛けるラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)ヴァンガーデレンに対してアタックを仕掛けるラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waeleフィニッシュまで2kmを切ったところで動いたのは昨年ステージ2位だったティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)。総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はこの動きに反応できず、ヴァンガーデレン、バルス、ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)の3名が飛び出して残り1kmに差し掛かる。

ヴァンガーデレンが断続的にダンシングで加速するとやがてマイカが脱落。しかしバルスを振り切ることが出来ず、残り200mで腰を上げたバルスにヴァンガーデレンは反応できない。ヴァンガーデレンを振り切ったバルスがそのままKOMジャバル・アル・アクダル頂上まで登りきった。

バルスはスペイン南東部バレンシア地方出身の27歳。レラックスGAMやスコット・アメリカンビーフ/フジ・セルヴェット/フットオン・セルヴェット、ヴァカンソレイユDCMを経て2014年からランプレ・メリダで走る。2010年ツール・ド・サンルイスの山頂フィニッシュで優勝しているが、この日のスタートの時点では伏兵だったと言っていい。

強豪集うオマーンのクイーンステージでプロ2勝目を飾り、リーダージャージまで手にしたバルスは「今日のような完璧な一日に、これ以上のものは望めない。クイーンステージを制し、総合首位の座に着いた。世界チャンピオンのコスタを含むチームメイト全員のサポートを勝利で締めくくることができて良かったよ」と語る。

今シーズンからランプレ・メリダに移籍したフィリップ・モデュイ監督は「決してシンプルな戦いではないが、最後までレッドジャージを守り抜きたい。特に明日は4つのKOMが設定された複雑なステージだ」とコメントしている。総合首位バルスと総合2位ヴァンガーデレンのタイム差は9秒、総合3位バルベルデのタイム差は19秒。この日最も攻撃的だったBMCレーシングが残る2ステージで再び攻撃に出ることは想像に容易い。

選手コメントはチーム公式サイトより。



山頂フィニッシュを制したラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)山頂フィニッシュを制したラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele
総合リーダージャージを手にしたラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)総合リーダージャージを手にしたラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele


ツアー・オブ・オマーン2015第4ステージ結果
1位 ラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)          5h46’48”
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)        +05”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +19”
4位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)            +22”
5位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                     +35”
6位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)               +49”
7位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)     +54”
8位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)            +58”
9位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)              +1’00”
10位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)

個人総合成績
1位 ラファエル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)          18h05’54”
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)        +09”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +19”
4位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)            +32”
5位 ジャック・ジャンセヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)     +1’04”
6位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               +1’10”
8位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)               +1’15”
9位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)   +1’25”
10位 パトリック・コンラート(オーストリア、ボーラ・アルゴン18)       +1’36”

ポイント賞
アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)

ヤングライダー賞
ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)

チーム総合成績
BMCレーシング

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele