やられたらやり返す。まるでグランツールのクイーンステージのような闘争心むき出しの登坂劇場がブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージで繰り広げられた。ライバルを力でねじ伏せたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が2秒差で総合首位を奪っている。



白壁が特徴的なアンダルシア地方の田舎町を行く白壁が特徴的なアンダルシア地方の田舎町を行く photo:Tim de Waele


逃げ続けるミルコ・セルヴァッジ(イタリア、ワンティ・グループグベルト)とサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)逃げ続けるミルコ・セルヴァッジ(イタリア、ワンティ・グループグベルト)とサイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele急勾配の1級山岳アリャナダス峠(ラ・グアルディア・デ・ハエン)にフィニッシュするブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージ。ラ・グアルディア・デ・ハエンの町を見下ろす山頂に向かって、登坂距離4.4km/平均勾配10%の登りが続く。下り区間を含んでいるため実質的な勾配は12〜13%。残り2kmを切ってから20%の急勾配区間が登場する厳しい登りだ。

リーダージャージを着て走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)リーダージャージを着て走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele冷たい雨が降る中、レースはヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル)、サイモン・ゲシュケ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)、ミルコ・セルヴァッジ(イタリア、ワンティ・グループグベルト)、ロメン・シカール(フランス、ユーロップカー)、エドワード・テウンス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)の5名が先行し、セルヴァッジだけが生き残って最後の1級山岳アリャナダス峠に突入する。

献身的にメイン集団のペースを上げるニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)献身的にメイン集団のペースを上げるニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ) photo:Tim de Waeleセルヴァッジは急勾配の登りをダンシングで登り続けたが、その1分後方ではチームスカイがペースアップを組織する。ニコラス・ロッシュ(アイルランド)、ピーター・ケノー(イギリス)、ミケル・ニエベ(スペイン)、そしてクリス・フルーム(イギリス)が集団先頭を固めてハイペースで登りを突き進んだ。

揺さぶりのアタックを仕掛けるピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)揺さぶりのアタックを仕掛けるピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleロッシュの牽引が終わるとケノーがアタックし、ライバルチームが追走を強いられる展開に。残り1kmに差し掛かったところで先頭セルヴァッジは捕らえられ、ケノーの吸収後すぐに今度はニエベがアタック。チームスカイによる断続的なアタックによって集団が10名以下に縮小したところで、満を持してフルームが腰を上げた。

コンタドールを引き離すことに成功したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)コンタドールを引き離すことに成功したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleフルームのアタックにはリーダージャージのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がすぐさま反応。38x32Tという軽いギアをシッティングで回したフルームに対し、39x30Tのコンタドールはダンシングで応戦する。急勾配区間を進むにつれて、やがてフルームの背中からコンタドールが離れていった。

1級山岳アリャナダス峠に先頭でやってきたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)1級山岳アリャナダス峠に先頭でやってきたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele寒さのためニーウォーマーを装着したままのフルームがコンタドールを置き去りにすると、そのままダンシングを交えてハイペースを維持。一気に形勢が逆転し、両者のタイム差は拡大していく。勢いよく両手を挙げてフィニッシュしたフルームから遅れること29秒。コンタドールが肩を落としてフィニッシュした。

ボーナスタイムが設定されていないため、山頂でついたタイム差がそのまま総合成績に反映。コンタドールは27秒あった総合リードを失い、2秒差でフルームにリーダージャージを明け渡した。

「結果を残すことができて最高の気分だ。自分の脚をテストすることだけを考えて出場したルタデルソルでステージ優勝して、レースリーダーの座に就くなんて信じられない気持ち。チームメイトたちのお膳立ては素晴らしかったし、ハードな展開に持ち込んでくれた彼らの働きが勝利につながった。新加入の選手たちもしっかり輪の中に入って活躍してくれている」と逆転劇を演じたフルームは語る。

「昨日はアルベルトの番で、今日は自分の番。彼の一騎打ちはレースにとってもファンにとっても魅力的だと思う。でもレースは最後の最後まで分からない。アルベルトが最後まで諦めないことは経験上知っているし、明日はフィニッシュ手前に急勾配の登りが登場するからね」と警戒心を解かない。

敗れたコンタドールは「自分の走りには満足している。この時期はコンディションに波が出てしまうので、良い日もあれば悪い日もある。今日は昨日のような感触がなかった」とコメント。しかし「昨日の勝利の後、コンディションのピークが早すぎるんじゃないかと言われたけど、あくまでもコンディショニングはスケジュール通りなので問題はないよ」と、5月のジロ・デ・イタリアに向けて好感触を得ている様子だ。

翌日の最終ステージはアラウリン・デ・ラ・トレにフィニッシュする169.8km。カテゴリー山岳ではないが、残り1kmから高低差80mを駆け上がる登りフィニッシュが設定されている。コンタドールがパンチ力ある走りで首位奪還を狙ってくるはずだ。

選手コメントはチーム公式サイトより。



コンタドールを29秒引き離してフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)コンタドールを29秒引き離してフィニッシュするクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・アンダルシア2015第4ステージ
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               5h08’54”
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)          +29”
3位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                  +49”
4位 シルヴェスタ・シュミット(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)   +59”
5位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              +1’00”
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)            +1’13”
7位 セバスティアン・ライヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)         +1’26”
8位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +1’27”
9位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)
10位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)        +1’38”

個人総合成績
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)              17h32’16”
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)          +02”
3位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)              +2’32”
4位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                  +2’52”
5位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)             +3’13”
6位 ピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)                 +3’50”
7位 カンスタンティン・シウトソウ(ベラルーシ、チームスカイ)          +5’07”
8位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   +5’10”
9位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)           +5’30”
10位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、カハルーラル)            +5’44”

ポイント賞
アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)

山岳賞
クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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