落車に泣いた昨ステージから一夜、エズ峠を駆け上がるリッチー・ポートの走りは冴え渡っていた。9.6kmの登坂TTで最速タイムを刻み、伸び悩むライバル勢を一蹴して2度目のパリ〜ニース総合優勝に輝いた。



ニースの街並みを見下ろす第7ステージ。山岳賞のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が行くニースの街並みを見下ろす第7ステージ。山岳賞のトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が行く photo:A.S.O.8日間に渡って続いた第73回パリ〜ニースもいよいよ最終日、3月15日にはニースから1級山岳エズ峠まで登る第7ステージの個人タイムトライアルを迎えた。

TTバイクで走ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は長らくホットシートを守ったTTバイクで走ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)は長らくホットシートを守った photo:CorVosミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)はステージ5位。マイヨジョーヌが手元から逃げてしまったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)はステージ5位。マイヨジョーヌが手元から逃げてしまった photo:CorVosマルティンのタイムを更新、ステージ2位に入ったサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)マルティンのタイムを更新、ステージ2位に入ったサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ) photo:CorVos美しいコートダジュールの海岸を見下ろすエズ峠(Col d'Eze)は登坂距離9.6km平均勾配4.7%を誇り、序盤と中盤には平均6〜9%が続く区間も用意され、かつ最後の1.6kmは緩斜面であるため一瞬も気を抜くことが許さない。2013年以来2年ぶりに復活した山岳TTで、この日もまた総合順位が大きく動くこととなる。

第1走者のステイン・ファンデンベルフ(ベルギー、クイックステップ)に続き、105名の選手たちが雨に濡れる登坂に向けて1分おきにスタートを切っていく。なお2012年のパリ〜ニース勝者でエズ峠の最速レコード(19分12秒)を持つブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)は出走しなかった。

まずアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)が最終的に6位に入る好タイムをマークすると、次に前後ディープリムホイール装備のTTバイクで走った元世界王者のトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が上回る。

平均時速27.604km/hで走り抜けたマルティンの暫定首位は長く続いたが、登坂力に秀でる総合上位勢がスタートを切ると、中間計測でタイム更新を続けた総合7位のサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)が15秒上回って首位の座を奪い取る。

ポートに対して1秒差と、実質的なマイヨジョーヌ争い上のライバルであるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)やヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)もスピラックのタイムには届かず終わり、残るは大本命ポートとマイヨジョーヌのトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)を残すのみ。

昨日落車で精彩を欠いてしまったが、この日のオーストラリアTTチャンピオンの走りは冴え渡っていた。中間計測でスピラックを12秒上回るとその後もペースを落とすこと無く、20分33秒(平均時速28.258km/h)というトップタイムでフィニッシュしてみせる。

一方「スタートして直後に"今日は良くない日だ"と分かった。実際にパワーメーターの表示を見ていても数字が出ていなかったし、その中でメンタルを保つのはとてもタフだった」と語るギャロパンはタイムを伸ばすことができず、最終的にステージ29位となる1分39秒遅れでフィニッシュ。このタイム差によって、ポートはギャロパンを逆転し、さらにクヴィアトコウスキーやスピラック、コスタらを突き放してマイヨジョーヌを手中に収めた。



トップタイムを叩き出したリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)トップタイムを叩き出したリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:CorVos
ステージ表彰を受けるリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)ステージ表彰を受けるリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:CorVosリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)と話すミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)と話すミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) photo:CorVos

第73回パリ〜ニース総合表彰台第73回パリ〜ニース総合表彰台 photo:CorVos


「今朝の時点で36秒というタイム差は決して小さくなかったし、ギャロパンに対してナーバスになっていたが、彼は昨日の走りで消耗しているだろうと考えていた。僕は何度もトレーニングでエズ峠は登っているし、今日はその練習よりも良いタイムが出たと思う」と語るポートは、2013年に続く2回目のパリ〜ニース総合優勝を達成。

ポートは更に「(総合優勝した)2年前よりも甘美な勝利だ。昨日落車してタイムを失ってしまった分、よりそう感じるのかもしれない。ただただファンタスティックな気分だし、チームも全力を尽くしてくれた。パリ〜ニースのようなステージレースで2度目の優勝という結果は自分に自信を与えてくれるし、今まさに僕は絶好調の状態にある。去年は散々だったけれど、ようやく戻って来れた。と加え、次なる目標であるジロ・デ・イタリアに向けて最良のステップを踏んだ。



パリ~ニース2015第7ステージ結果
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
2位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
3位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
4位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
5位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
6位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)
7位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
8位 ヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)
9位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
10位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
20'33"
+13"
+24"
+29"

+37"
+39"
+50"
+54"
+55"


個人総合成績
1位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
2位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
3位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
4位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
6位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
8位 ラファル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)
9位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
10位 ティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)
29h20'41"
+30"


+41"
+1'03"
+1'05"
+1'24"
+1'38"
+2'18


ポイント賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:So.Isobe
photo:CorVos