合計4回に分けてお送りした海外ロードレースのプレーバックシリーズもいよいよ最終回。ブエルタ・ア・エスパーニャからロード世界選手権、ターキー、広西まで、シーズン終盤を振り返ります。



8月

白いポイント賞ジャージを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が逃げる白いポイント賞ジャージを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が逃げる photo:LC / TDWsport

集団前方に位置するリーダーチームのBMCレーシング集団前方に位置するリーダーチームのBMCレーシング photo:LC / TDWsportツール・ド・フランスと開催時期がずれたために、例年よりも多くのビッグネームが揃ったツール・ド・ポローニュがポーランドで開催。1週間のステージレースは、ツールで失格処分を受けたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)によるスプリント勝利に始まり、サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)やカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、チームスカイ)らがそれぞれ平坦ステージで勝利。難関山岳ステージでサガンが脱落すると総合リーダーの座はディラン・トゥーンス(ベルギー、BMCレーシング)に移る。サガンは最終ステージで逃げを試みるなど最後までレースを盛り上げ、トゥーンスが僅差で総合優勝に輝いた。

小林海や、NIPPOヴィーニファンティーニとトレーニー契約を結んだ西村大輝も出場したブエルタ・ア・ブルゴスのタイトルはミケル・ランダ(スペイン、チームスカイ)の手に。ランダは超級山岳フィニッシュを含む2ステージで優勝し、その後モビスターへの移籍を発表した。集団スプリントに持ち込まれたヨーロッパ選手権はアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)の勝利で締めくくられている。

エネコツアーから名称を変更したビンクバンクツアーではサガンがステージ2勝の活躍。オランダ・リンブルフの丘陵地帯を走る第5ステージで勝利したラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)が首位に立つも、最終的な総合争いはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュさながらの難コースが設定された第6ステージで逃げ切ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)とトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)の戦いに。石畳坂が設定された最終ステージでのウェレンスの攻撃は決まらず、デュムランが初の総合優勝に輝いた。

ドイツのユーロアイズ・サイクラシックスとフランスのブルターニュクラシック・ウエストフランスで勝利したのはクイックステップフロアーズへの移籍が決まっているエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)。2018年に向けてヴィヴィアーニののかにもビッグスプリンターの移籍が相次いでおり、マルセル・キッテル(ドイツ、クイックステップフロアーズ)がカチューシャ・アルペシンへ、アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)がUAEチームエミレーツに移籍。スプリンターの勢力図は大きく変わると見られる。

ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを登るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ)ミュール・ファン・ヘラールツベルヘンを登るトム・デュムラン(オランダ、サンウェブ) photo:TDWsportサガンを追うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード)サガンを追うティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)やジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、トレック・セガフレード) photo:TDWsport
集団スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)集団スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:RV / TDWsportスプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

グランツール最終戦のブエルタ・ア・エスパーニャが8月19日から9月10日までの日程で開催。ツールを制したフルームや、現役最終レースとして挑んだコンタドールが揃った3週間の戦いはBMCレーシングによるチムTT制覇とデニスのマイヨロホ獲得で幕開ける。フランス国内を走る第2ステージは横風吹く刺激的な展開となり、アンドら山岳を走る第3ステージでは早速本格的な山岳争いが勃発。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がステージ優勝してマイヨロホはフルームの手に。失速したコンタドールは早くも総合争いにおいて苦戦を強いられる展開に。

平坦ステージで抜群のスプリント力を発揮したのはマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)で、ポイント賞には2ポイント届かなかったものの最終ステージを含めて4勝。トレンティンはクイックステップフロアーズからミッチェルトン・スコット(オリカ・スコット)への移籍が決まっている。他にもトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)とミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)がそれぞれ山岳ステージで2勝をマークした。

15分58秒のトップタイムで優勝したBMCレーシング15分58秒のトップタイムで優勝したBMCレーシング photo:Tim de Waele / TDWsport
独走でフィニッシュするトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル)独走でフィニッシュするトーマス・マルチンスキー(ポーランド、ロット・ソウダル) photo:Tim de Waele / TDWsportフルームらを14秒引き離してフィニッシュするミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)フルームらを14秒引き離してフィニッシュするミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waele / TDWsport
力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)力強いガッツポーズでフィニッシュするクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos中盤からペースアップしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)中盤からペースアップしたクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

第3ステージで総合首位に立ったフルームは、チームスカイの屈強なアシスト陣に守られながらライバルたちのアタックを封じていく。フルームは第9ステージの急勾配フィニッシュでステージ優勝してリード拡大に成功。第12ステージでは2度落車するトラブルに見舞われながらも首位を守る。すると第16ステージの個人TTで圧勝し、マイヨロホを確かなものにした。

総合争いが決着したのは「魔の山」と恐れられる激坂アングリル峠にフィニッシュする最終日前日の第20ステージ。それまでほぼ毎日、断続的にアタックを続けていたコンタドールがライバルたちを振り切って超級山岳アングリル峠の登坂を開始し、ファンの大声援を受けながら激坂を単独登頂。実質的にキャリア最後のステージ優勝のチャンスをものにし、アングリル頂上で拳銃を撃ち抜くバキューンポーズを炸裂させた。

フルームはアングリルでさらに総合リードを広げる走りを見せ、スペインの首都マドリードの最終ステージに凱旋。6回目のブエルタ出場で果たした総合優勝。これまでジャック・アンクティルとベルナール・イノーしか成し遂げていないツールとブエルタの同年制覇(いわゆるダブルツール)を果たした。なお、その後ブエルタ期間中に採取されたフルームの尿サンプルから違反が疑われる分析結果が検出。現在UCIがチームスカイとフルームに説明を求めている段階で、フルームが出場停止処分を受けるとともにブエルタのタイトルが剥奪される可能性も。

現役最後のピストレロポーズを決めるアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)現役最後のピストレロポーズを決めるアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)
マイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)をヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が囲むマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)をヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が囲む photo:CorVos



9月
スコットランドの首都エディンバラをスタートしていくスコットランドの首都エディンバラをスタートしていく photo:Kei Tsuji / TDWsport

接戦を制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)接戦を制したカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット) photo:Kei Tsuji / TDWsportイギリス最大のステージレースであるツアー・オブ・ブリテンではカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)やエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)らが連日接戦スプリントを繰り広げる展開。ユアンがステージ3勝を飾り、第5ステージ個人TTを制したラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)が総合首位に立つ。最終ステージで3km独走勝利を飾ったエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)が追い上げたものの8秒届かず、ボームが総合優勝に輝いた。

UCIウィメンズワールドツアーレースのブールス・レンタル・レディースツアー第2ステージで與那嶺恵理(エフデジ・ヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)が逃げに乗り、終盤に独走。残り2kmを切ってから吸収されたが、敢闘賞を獲得して自身初のワールドツアー表彰台に上った。

カナダのUCIワールドツアー2連戦のグランプリ・シクリスト・ド・ケベックグランプリ・シクリスト・ド・モンレアルは、それぞれペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)とディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)の勝利に終わる。サガンはキャリア100勝目を飾って3連覇がかかったロード世界選手権に弾みをつけた。

ステージ優勝を飾ったラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)ステージ優勝を飾ったラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport最終ステージを制したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)最終ステージを制したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
100kmにも渡る逃げを決めた與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ)100kmにも渡る逃げを決めた與那嶺恵理(エフデジヌーヴェル・アキテーヌフチュロスコープ) photo:CorVos圧倒的なスプリントでキャリア100勝目を達成したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)圧倒的なスプリントでキャリア100勝目を達成したペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)

ノルウェーのベルゲンで開催されたロード世界選手権。初日の男子チームタイムトライアル女子タイムトライアルでサンウェブが二冠を達成。サンウェブのトム・デュムラン(オランダ)は勢いそのままに個人タイムトライアルでも初タイトルを獲得した。

ロード世界選手権女子エリートロードレースでもオランダのチーム力が光り、シャンタル・ブラークが独走勝利を飾る。そして最終日の男子エリートロードレースはジュリアン・アラフィリップ(フランス)らの果敢なアタックは決まらず26名による集団スプリントに。地元ノルウェーの声援を受けたアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)を下したサガンが史上初となる大会3連覇を達成した。期間中に行われたUCIマネジメント会議で、現職のブライアン・クックソン氏(イギリス)を大差で下したダヴィ・ラパルティアン氏(フランス)がUCI新会長についている。

好天のサーモンヒルを登るプロトン好天のサーモンヒルを登るプロトン photo:Kei Tsuji / TDWsport
44分41秒のトップタイムで優勝したトム・デュムラン(オランダ)44分41秒のトップタイムで優勝したトム・デュムラン(オランダ) photo:Tim de Waele / TDWsport独走でフィニッシュするシャンタル・ブラーク(オランダ)独走でフィニッシュするシャンタル・ブラーク(オランダ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
3年連続アルカンシェルを手にしたペテル・サガン(スロバキア)3年連続アルカンシェルを手にしたペテル・サガン(スロバキア) photo:Kei Tsuji / TDWsport



10月

コモ湖沿いの平坦路を走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らコモ湖沿いの平坦路を走るフィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)ら photo:Tim de Waele / TDWsport

独走でフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)独走でフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) photo:Tim de Waele / TDWsport9月下旬から10月上旬にかけてイタリアではレースが連続。その初戦であるジロ・デッラ・トスカーナとコッパ・サバティーニではワンティ・グループグベルトが2勝の活躍を見せる。ジロ・デッレミリアはジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、バーレーン・メリダ)、グランプレミオ・ブルーノ・ベゲッリはルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)、トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネはアレクサンドル・ジェニエス(フランス、アージェードゥーゼール)、
ミラノ~トリノ
はリゴベルト・ウラン(コロンビア、キャノンデール・ドラパック)がそれぞれ勝利を飾った。

モニュメント最終戦であるイル・ロンバルディアでは、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)が終盤の下りを満を持してアタック。そのままライバルを突き放したニーバリが2015年に続くロンバルディア2勝目をマークした。ヨーロッパ最終戦として知られるパリ〜トゥールではトレンティンが勝利している。

開催が4月から10月に延期されたプレジデンシャル・サイクリング・ツアー・オブ・ターキーではサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)が怒涛のスプリント4勝。大会唯一の山頂フィニッシュが設定された第4ステージで猛然と加速して勝利したディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)が総合優勝を果たした。

そして2017年のUCIワールドツアー最終戦ツアー・オブ・広西ではフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)がスプリント4勝。初開催レースの初代チャンピオンに輝いたのは、1級山岳フィニッシュでバウケ・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)との接戦を制したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)だった。広西の結果を受けて、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、BMCレーシング)とアンナ・ファンデルブレゲン(オランダ、ブールス・ドルマンス)が男女のUCIワールドツアーランキング首位に輝いた。

2級山岳セルチュクを制したディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ)2級山岳セルチュクを制したディエゴ・ウリッシ(イタリア、UAEチームエミレーツ) photo:Brian Hodes / VeloImages再びスプリントでトゥーンスを下したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)再びスプリントでトゥーンスを下したサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ) photo:Brian Hodes / VeloImages
ロットNLユンボとロット・ソウダル、クイックステップフロアーズがメイン集団を牽引ロットNLユンボとロット・ソウダル、クイックステップフロアーズがメイン集団を牽引
4本指を立ててフィニッシュするフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)4本指を立ててフィニッシュするフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) モレマを振り切ってフィニッシュするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)モレマを振り切ってフィニッシュするティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:TDWsport

text:Kei Tsuji