21日間に渡る長い戦いはマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)が4勝目で〆。スプリントに加わりマイヨプントスを守ったクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)は史上初のツール&ブエルタ連続総合優勝を達成した。



クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら、総合ワンツースリーがシャンパンで乾杯クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)ら、総合ワンツースリーがシャンパンで乾杯 photo:CorVos
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージ image:Unipublic


アングリル決戦を終えた選手たちは陸路で500kmの大移動をこなし、マドリード郊外のアロヨモリノスの市街地から途中寄り道を経て北東のマドリード中心地へ。3週間前に南仏ニームをスタートした198名選手のうち、ここまで辿り着いたのは158名。オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、エフデジ)がDNSを選び、リタイアは40名。

17時ちょうどにスタートが切られても、グランツール恒例の和やかで落ち着いた雰囲気のまま。選手たちは3週間に渡る長い戦いを共に振り返りながら、マドリードまで残り僅かとなったレースを味わうかのようにゆったりとペースを進めた。

チームカラーのスカイブルーを赤に変えた特別ジャージを着用したチームスカイは、ワウト・プールス(オランダ)が自撮り棒で撮影したり、マイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス)を中心に特別ラベルのビールで乾杯したり。マイヨコンビナーダを着用するアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)は、自身の育成チーム出身でアングリルでの攻撃をアシストしたエンリク・マス(スペイン、クイックステップフロアーズ)をTVカメラに紹介したり。

シャンパンで乾杯するアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)シャンパンで乾杯するアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:Unipublic/Photogomez Sport
ファンの大声援を受けながら、単独でマドリード周回コースに到着したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)ファンの大声援を受けながら、単独でマドリード周回コースに到着したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:CorVos
唯一心穏やかでなかったのは、まだマイヨプントス(ポイント賞)逆転に可能性を残しているマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)。トレンティンはこの日首位のフルームと2位ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)がポイントを取らず、かつ中間スプリントで3位以上に入り、最終スプリントで勝利すれば緑ジャージを着用できる。

建物の影が長く伸びる頃、マドリード周回コースを目前にコンタドールが集団から単独で抜け出した。沿道の大歓声を一身に受けると、胸に手を当て、手を振りながら1回目のフィニッシュラインを通過。ここから集団もペースアップを行い、本格的なレースの幕が切って落とされた。

レースを動かしたのは、ポイント賞奪還を狙うクイックステップフロアーズではなく、守る立場のチームスカイだった。フルームのマイヨプントス確保を明確に示したチームスカイは、ここからクイックステップフロアーズのコントロールに対して度々アタックを仕掛け、この2チームが激しく火花を散らしていくこととなる。

マッテオ・トレンティン(イタリア)のために集団をコントロールするクイックステップフロアーズ)マッテオ・トレンティン(イタリア)のために集団をコントロールするクイックステップフロアーズ) photo:CorVos
途中逃げを打ったルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)、ニック・シュルツ(オーストラリア、カハルーラル・セグロスRGA)途中逃げを打ったルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)、ニック・シュルツ(オーストラリア、カハルーラル・セグロスRGA) photo:CorVosマイヨモンターニャのダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が集団前方に位置取るマイヨモンターニャのダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック)が集団前方に位置取る photo:CorVos


一度限り用意された中間スプリントを前に、フルーム自ら驚きのアタックを仕掛けた。クイックステップフロアーズはトレンティンとジュリアン・アラフィリップ(フランス)の力で1-2位通過を果たしたが、もしトレンティンが最終スプリントで勝利しても、フルームがフィニッシュで4点(着順で12位)以上を確保すれば逆転は成し得ない。予想外の展開にクイックステップフロアーズは作戦修正を強いられた。

するとこれまでも度々逃げに乗ってきた元世界王者ルイ・コスタ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)やアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)、ニック・シュルツ(オーストラリア、カハルーラル・セグロスRGA)がアタック。ここから暫く逃げを続けたものの、集団の徹底コントロールによって逃げ切りのチャンスは見えてこない。

最終周回突入前にシュルツが遅れ、ボーラ・ハンスグローエも牽引に加わった集団がフィニッシュライン上で2人を飲み込む。斜陽が街をオレンジ色に包む中、スプリンターを抱えるチームが激しくスプリントトレインをぶつけ合った。

マドリードで逃げる3名。その差は20秒〜30秒ほどで推移したマドリードで逃げる3名。その差は20秒〜30秒ほどで推移した photo:CorVos
最終スプリントを制したマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ)最終スプリントを制したマッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) photo:CorVos
70km/hにも迫る超高速バトルの末に、主導権を握ったのはやはりクイックステップフロアーズ。アラフィリップのリードアウトからトレンティンが発進し、ケニース・ヴァンビルセン(ベルギー、コフィディス)やロレンゾ・マンザン(フランス、エフデジ)を並ばせずに、ステージ勝利数を4に伸ばす勝利を達成。しかしその背後で、スプリンターの中に紛れたフルームがしたたかに11位でフィニッシュしており、トレンティンのマイヨプントス奪還は成らなかった。

マイヨロホとマイヨプントス、そしてマイヨコンビナーダ獲得を、史上初のツール・ド・フランス/ブエルタ・ア・エスパーニャのダブルツール獲得と共に成し遂げたフルーム。「これまで6度ブエルタ・ア・エスパーニャに挑んできて、これまで総合2位を3回。それを経て、今こうして表彰台の上に乗っているだなんて最高の気分」と語り、マドリードのど真ん中に位置するシベレス広場で3つの特別ジャージを受け取った。

マイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)をヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が囲むマイヨロホのクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)をヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ)とイルヌール・ザカリン(ロシア、カチューシャ・アルペシン)が囲む photo:CorVos
アレクサンドル・ヴィノクロフGMと、チーム総合成績首位を獲得したアスタナのセルフィーアレクサンドル・ヴィノクロフGMと、チーム総合成績首位を獲得したアスタナのセルフィー photo:CorVos紙吹雪か舞う中、ファンの声援に応えるクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ)紙吹雪か舞う中、ファンの声援に応えるクリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:CorVos

スーパー敢闘賞を受賞したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード)スーパー敢闘賞を受賞したアルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) photo:CorVos
マイヨプントス奪還成らなかったトレンティンだが、「もちろんジャージを取り戻せていたらより良かったけれど、最終ステージを獲れたという素晴らしいこの気持ちをスポイルするものじゃない。今日はずっと主導権を握って誰にもチャンスを渡さなかった」と笑顔を絶やさなかった。

そしてトラブルなくブエルタを乗り切ったアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ソウダル)はグランツアーの連続完走記録を19に伸ばし、コンタドールは大会を通して最も積極的に走った選手に贈られるスーパー敢闘賞を獲得。トレック・セガフレードのスタッフやチームメイトと共にマドリードの表彰台に上がり、カメラの砲列に向けて全員で現役最後のピストレロポーズを披露した。

H3
ブエルタ・ア・エスパーニャ2017第21ステージ
ステージ結果
1位 マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 3h06'25"
2位 ロレンゾ・マンザン(フランス、エフデジ)
3位 ソーレンクラーク・アンデルセン(デンマーク、サンウェブ)
4位 トム・ヴァンアスブロック(ベルギー、キャノンデール・ドラパック)
5位 イヴァン・ガルシア(スペイン、バーレーン・メリダ)
6位 マグナスコルト・ニールセン(デンマーク、オリカ・スコット)
7位 ケニース・ヴァンビルセン(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)
8位 サーシャ・モードロ(イタリア、UAEチームエミレーツ)
9位 ミヒャエル・シュヴァルツマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
10位 ダニエル・ホールゴール(ノルウェー、エフデジ)
マイヨロホ(個人総合成績)
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 158pts
2位 マッテオ・トレンティン(イタリア、クイックステップフロアーズ) 156pts
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、バーレーン・メリダ) 128pts
マイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)
1位 ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、キャノンデール・ドラパック) 67pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 47pts
3位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 35pts
マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・フルーム(イギリス、チームスカイ) 5pts
2位 ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ) 17pts
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、トレック・セガフレード) 18pts
チーム総合成績
1位 アスタナ 247h16'21"
2位 モビスター +6'16"
3位 チームスカイ +8'12"
txet:So.Isobe
photo:CorVos
Amazon.co.jp