ウェールズの首都カーディフでフィナーレを迎えたツアー・オブ・ブリテン。残り3kmから独走に持ち込んだエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが勝利し、ラルス・ボームが2度目の総合優勝を果たした。


人だかりができるチームスカイのバス人だかりができるチームスカイのバス photo:Kei Tsuji / TDWsport
世界選手権でタッグを組むアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)とエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)世界選手権でタッグを組むアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)とエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ツアー・オブ・ブリテンを締めくくる第8ステージのスタート地点は、ウスターソースの語源であるウスターシャー州のウスター。イングランドから国境を渡ってウェールズに入る180kmコースには2級山岳とスプリントポイントがそれぞれ3つずつ設定されている。イギリスを構成する4つの国(イングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド)の1つで、人口300万人のウェールズ。ゲラント・トーマスやオウェイン・ドゥール(チームスカイ)の出身地である同国の首都カーディフでツアー・オブ・ブリテンはフィナーレを迎えた。

気温12度の肌寒いウスターをスタートするとすぐ、UCIワールドチームを中心にしたアタック合戦が始まった。アタックがかかり続けたまま最初の2級山岳に突入すると集団は4つに分裂。ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ)を先頭に頂上通過後、先頭では約50名の第1集団が出来上がる。

ほとんどの総合上位陣やスプリンターたちが第1集団に入った一方で、スプリント4勝目を狙っていたカレイブ・ユアン(オーストラリア、オリカ・スコット)や山岳賞ジャージを着るジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション)を含む約50名は第2集団に取り残される形に。ユアンらは最後まで集団復帰を果たせなかった。

レース序盤にアタックするダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)らレース序盤にアタックするダニエル・マーティン(アイルランド、クイックステップフロアーズ)ら photo:Kei Tsuji / TDWsport
逃げが決まらないままハイスピードで進む集団逃げが決まらないままハイスピードで進む集団 photo:Kei Tsuji / TDWsportスタート直後から集団は縦に長く伸びるスタート直後から集団は縦に長く伸びる photo:Kei Tsuji / TDWsport
UCIワールドチームを中心とした50名で形成された第1集団UCIワールドチームを中心とした50名で形成された第1集団 photo:Kei Tsuji / TDWsport
スプリントポイントで果敢にボーナスタイムを狙ったのは、総合で18秒遅れのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)。2つのスプリントポイントを連続先頭通過してボーナスタイム3秒を獲得したものの、グリーンジャージを着るラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)もスプリントに絡んだため総合タイム差は縮まらない。

フィリップ・ジルベール(ベルギー、クイックステップフロアーズ)らのアシストを受けたデプルスが2つめの2級山岳も先頭通過。山岳賞獲得に意欲を見せたデプルスだったが、同時にポイントを稼いだ山岳賞2位のルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)から山岳賞首位の座は奪えなかった。

やがてフィニッシュまで50kmを残した最後の2級山岳でゴルカ・イサギレ(スペイン、モビスター)とマーク・スチュアート(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション)がこの日最初の逃げグループを形成。チームスカイとクイックステップフロアーズ、カチューシャ・アルペシンの3チームが率いるメイン集団から30秒のリードを得て逃げる。時折嵐のような雨が降るカーディフの周回コース(合計2周半)に入ったイサギレとスチュアートだったが、1周回完了後すぐに吸収された。

カーディフ市役所前を通過するグリーンジャージのラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)カーディフ市役所前を通過するグリーンジャージのラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
最後のスプリントポイントで動いたクウィアトコウスキー、ボーム、キュング、ボアッソンハーゲン最後のスプリントポイントで動いたクウィアトコウスキー、ボーム、キュング、ボアッソンハーゲン photo:Kei Tsuji / TDWsport
ライバルたちの動きをマークした総合首位ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)ライバルたちの動きをマークした総合首位ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
カーディフ出身のゲラント・トーマスとオウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)がメイン集団を牽引カーディフ出身のゲラント・トーマスとオウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ)がメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji / TDWsport
最終周回突入時のフィニッシュラインに設定されたスプリントポイントでは総合1位ボームと総合2位シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、総合7位ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ)、総合8位ボアッソンハーゲンらがスプリントを繰り広げ、ここもボームが手堅くボーナスタイム2秒を獲得して首位を固めることに成功。先頭からさらにアタックして抜け出しを図るボアッソンハーゲンをボームはぴったりとマークする。

スプリンターチームが主導権を握り、大集団によるスプリント勝負に持ち込まれると思われた矢先、残り3kmでボアッソンハーゲンが再び飛び立った。クイックステップフロアーズとチームスカイが猛烈な勢いで追いかけたが、高速巡航に持ち込んだボアッソンハーゲンは5秒前後のリードを得たまま残り1kmアーチを通過。

約3秒のリードで残り300mの最終コーナーを先頭で抜けたボアッソンハーゲンが最後の力を振り絞って逃げる。集団先頭で最終コーナーを抜けたマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)がそのまま追撃態勢に入ったが届かず、ボアッソンハーゲンのタイム差なしの独走勝利が決まった。ボアッソンハーゲンは雨に濡れた滑りやすいコーナーを含む残り3kmを平均45km/hで駆け抜けている。

単独で飛び出したままフィニッシュに向かうエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)単独で飛び出したままフィニッシュに向かうエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
追撃するリケーゼらとの距離を測るエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)追撃するリケーゼらとの距離を測るエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
残り3kmからのロングスパートを成功させたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)残り3kmからのロングスパートを成功させたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
最終ステージを制したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)最終ステージを制したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
「大集団のスプリントに持ち込まれそうな場合には、残り3kmでアタックしようと決めていた。作戦通りにアタックして、誰にも追いつかせなかった。逃げ切れたことを本当に嬉しく思う。そして総合順位も上げることができてよかった」。超ロングスパートを成功させたボアッソンハーゲンは念願のステージ優勝を喜ぶ。スプリントポイントとフィニッシュで稼いだボーナスタイムによって総合8位から総合2位まで順位を上げた。ボアッソンハーゲンは地元ノルウェーで開催されるロード世界選手権に向けて上々の仕上がりを見せており、ポイント賞を獲得したアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)とタッグを組む予定だ。

ボアッソンハーゲンらの追い上げを振り切り、総合リードを守り抜いたボームは「序盤からハイスピードな展開だった。スプリントポイントでライバルたちの動きを封じ込める必要があったし、想像よりもずっとハードだったけど、幸い脚の状態がとても良くて助かったよ」とコメント。ボームは2011年に続く2度目の総合優勝に輝いた。

雨の中、表彰台に向かうラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)雨の中、表彰台に向かうラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ようやくステージ優勝を手にし、総合2位に浮上したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)ようやくステージ優勝を手にし、総合2位に浮上したエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport地元カーディフ出身のゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がベストブリティッシュライダー賞獲得地元カーディフ出身のゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)がベストブリティッシュライダー賞獲得 photo:Kei Tsuji / TDWsport
プレゼンターとして登場したブラドレー・ウィギンズ(イギリス)プレゼンターとして登場したブラドレー・ウィギンズ(イギリス) photo:Kei Tsuji / TDWsport最終総合表彰台 3位シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、1位ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)、2位エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ)最終総合表彰台 3位シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング)、1位ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ)、2位エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji / TDWsport
ステージ成績
1位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 4:19:00
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、クイックステップフロアーズ)
3位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン)
4位 ルカ・メズゲッツ(スロベニア、オリカ・スコット)
5位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、JLTコンドル)
6位 アンドレア・パスクアロン(イタリア、ワンティ・グループゴベール)
7位 フローリス・ヘルツ(ベルギー、BMCレーシング)
8位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ)
9位 ヨナス・コッホ(ドイツ、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)
個人総合成績
1位 ラルス・ボーム(オランダ、ロットNLユンボ) 30:56:24
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 0:08
3位 シュテファン・キュング(スイス、BMCレーシング) 0:10
4位 ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、ロットNLユンボ) 0:13
5位 ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、チームスカイ) 0:18
6位 ヨス・ファンエムデン(オランダ、ロットNLユンボ)
7位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ) 0:24
8位 トニー・マルティン(ドイツ、カチューシャ・アルペシン) 0:25
9位 オウェイン・ドゥール(イギリス、チームスカイ) 0:33
10位 ライアン・ミューレン(アイルランド、キャノンデール・ドラパック) 0:38
ポイント賞
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ・アルペシン) 86pts
2位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップフロアーズ) 70pts
3位 ブレントン・ジョーンズ(オーストラリア、JLTコンドル) 59pts
山岳賞
1位 ルーカス・オウシアン(ポーランド、CCCスプランディ・ポルコウィチェ) 36pts
2位 ジェイコブ・スコット(イギリス、アンポスト・チェーンリアクション) 34pts
3位  ローレンス・デプルス(ベルギー、クイックステップフロアーズ) 25pts
スプリント賞
1位 マーク・マクナリー(イギリス、ワンティ・グループゴベール) 16pts
2位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドル) 15pts
3位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、ディメンションデータ) 7pts
チーム総合成績
1位 ロットNLユンボ 92:49:50
2位 チームスカイ 0:24
3位 BMCレーシング 1:35

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