アメリカ・カリフォルニアのMTB専業ブランドであるサンタクルズの新モデル、5010(フィフティー・テン)をインプレッション。21モデルとしてリアサスのリンク機構をアップデート。27.5のタイヤサイズでトレイルライドでの機敏な動きを追求したプレイバイクのキャラクターに迫る。



サンタクルズ5010(フィフティー・テン)サンタクルズ5010(フィフティー・テン) photo:Makoto AYANO
MTB専業メーカーとしてエンスージアストに高い人気を誇るアメリカ・カリフォルニア州発祥のMTBブランド「SANTA CRUZ(サンタクルズ)」。幅広いモデル・ラインナップを揃える展開でマニアの心をつかみ、日本でも人気急上昇のブランドだ。今年発表されたニューモデルはリアサスペンション機構を刷新するフルモデルチェンジを受けた「5010(フィフティー・テン)」。

マッシブなダウンチューブ。ロワーリンク構造にも注目マッシブなダウンチューブ。ロワーリンク構造にも注目 photo:Makoto AYANO
アメリカでは7月に発表された5010。同社がフルサポートするダニー・マッカスキルが駆るプレイバイクとして知られたモデルで、27.5インチ&130mmトラベルのフルサス、ショートチェーンステーに低いBB、アングル可変ヘッドチューブ(66.2 / 66.5度をフリップチップで調整)、広いリーチ&短いステムのコンビネーションにより俊敏な運動性能を獲得。ジャンプやバックフリップも自由自在の操縦性を楽しめるバイクとしてユニークな存在のバイクだ。

軽量で取り回しに優れる27.5インチホイールの可能性を追求。テストバイクには27.5✕2.4タイヤが装着されていた軽量で取り回しに優れる27.5インチホイールの可能性を追求。テストバイクには27.5✕2.4タイヤが装着されていた photo:Makoto AYANO
他の大手ブランドが29インチにラインナップを絞るなか、「27.5は不滅」とは、他にもNOMADやBRONSON、CHAMEREON等も展開するサンタクルズが掲げるモットーだ。「27.5はファン(楽しい)サイズ」として、走破性や速さだけではない、操る楽しさを追求する27.5インチモデルを幅広く揃えるのはサンタクルズの世界観の表れだ。

モデルチェンジにより、今まで上付きだったリアサスリンクが「ロワーリンク」に変更され、より低重心となったのが新5010の大きな変更点だ。ダウンヒルの最高峰モデル「V10」で培ったロワーリンク構造の可動域の大きさは評価が高く、昨年は29インチモデルのTALLBOY等がロワーリンク化。そして今年は27.5インチの5010にも採用された。

ロワーリンク化とVPP(Virtual Pivot Point)システム搭載によってより低重心となったロワーリンク化とVPP(Virtual Pivot Point)システム搭載によってより低重心となった photo:Makoto AYANO
ロワーリンク化とVPP(Virtual Pivot Point)システム搭載によってより低重心となった新5010は、ダウンヒル性能を上げつつ、低ストローク量域での動きの軽やかさを演出することに成功している。サスのストローク量はF:140mm/R:130mm。

新モデルよりリアのスイングアームがサイズごとに造り分けされるようになった新モデルよりリアのスイングアームがサイズごとに造り分けされるようになった photo:Makoto AYANO
5010のもう一つの変化は、リアのスイングアームがサイズごとに造り分けされるようになったこと。他のバイクでは異なるサイズに同じスイングアームが使用されるが、5010にはサイズごとに最適設計したスイングアームがセットされる。XSとSのみが共通だが、他の3サイズはそれぞれ異なる長さのスイングアームを使用することで理想的なジオメトリーを追求。リアセンターもサイズごとに異なっている。なおリアエンドにはスラムのユニバーサルディレイラーハンガーが採用される。

リアエンドにはスラムのユニバーサルディレイラーハンガーが採用されるリアエンドにはスラムのユニバーサルディレイラーハンガーが採用される photo:Makoto AYANO完成車の5010Cのヘッド周辺完成車の5010Cのヘッド周辺 photo:Makoto AYANO


VPP(Virtual Pivot Point)システム  シートステー内側はタイヤサイドを逃がす形状VPP(Virtual Pivot Point)システム シートステー内側はタイヤサイドを逃がす形状 photo:Makoto AYANOボトルケージ台座も低重心な位置に設置されるボトルケージ台座も低重心な位置に設置される photo:Makoto AYANO


「ホップ、スキップ、ジャンプを得意とする、BMXのような機敏さのプレイバイク」と形容されてきた5010の走りに、より懐の深い下り性能がプラスされることで、今まで以上に下りも楽しめるバイクとなる。

トレイルで真価を発揮する、手のひらの中でコントロールできるようなトライアル感覚で乗れるバイクに仕上がったという5010。小さなホイールの重量からくる軽さと、クイックなハンドリングや反応性により実現したプログレッシブな操縦性とは。信州・伊那の「トレイルカッター」で一日実走してのインプレッションをお届けしよう。


―インプレッション

「日本の里山トレイルにジャストミートなプレイバイク」
三上和志(サイクルハウスMIKAMI)


27.5インチ採用の5010はクイックな操縦性が楽しめる27.5インチ採用の5010はクイックな操縦性が楽しめる photo:Makoto AYANO
トレイルカッターの変化に富んだトレイルで一日乗った印象は、ホイール径の小ささとコンパクトなコックピットポジションが相まって、とても機敏なバイクに仕上がっています。タイトなコーナーでの振りの軽さなどがうまくまとまって、カッコ良くライディングしたいという人が選んで面白いバイクです。

トレイルの起伏、バーム、コーナーなどで「ちょっと跳ねてバイクをヒネってみよう」といった動きにも反応良くついてくる。タイトコーナーが連続するポイントでの切り返しの素速さがあり、もたつくことなく、より攻め込んで、クイクイと切り込んでいけるので、トレイル上で状況判断をしながら「あのラインを行ってみよう、いや、こっちだ」と、ラインを切り替えていくのが容易。目が回るほど忙しく操れます。

左右の切り返しの速さは低重心からくるものでしょう。モデルチェンジによるロワーリンク化で重量物(ユニットやリンク)がすべて下がった位置にきました。重心が下がったことでのメリットが機敏さとして感じられます。

ジャンプスポットで技を披露するのも容易だジャンプスポットで技を披露するのも容易だ photo:Makoto AYANO
27.5の5010は29インチバイクとは全く違う乗り物ですね。29はスピードが出ているときの安定感があるからより攻めることができるけど、27.5はより低速域での扱いやすさが際立っています。だから日本の里山の狭いシングルトラックにはとても相性がいい。5010をMTBゲレンデに連れていけば、高く飛んだりするアクション派のライダーにはたまらなく楽しいでしょう。私は里山のテクニカルなシングルトラックを走るのが好きなので、サンタクルズのフルサスを選ぶなら5010を選びたいな、と思います。

タイトなスイッチバックをこなすトレイルダウンヒルを楽しむタイトなスイッチバックをこなすトレイルダウンヒルを楽しむ photo:Makoto AYANO
タイヤは太さ2.3のマキシス MINION DHRがセットされていました。ゲレンデなど硬い路面でレースのように最速のラインを狙うなら2.3、トレイルであまり人が踏んでいない轍をいくなど、路面に埋まらずに走破したい場合は2.5や2.6を使いたいですね。

MTBは選択肢がいろいろあって迷うところですが、29インチが主流のなか、5010は27.5のトレイルバイクとして際立つ存在ですね。ホイールの小ささ、軽さによる旋回性の良さが特徴です。サンタの場合、安定感をもたせたモデルと、キビキビした操る楽しさをもたせたモデルの2系統のラインナップに分かれており、それぞれで1cmづつ違うストロークのバイクもラインナップしているから、走り方や好みで選べます。走るフィールドの地形やどんなふうに走りたいかのイメージが明確にある人なら、自分にドンピシャなバイクを選べるのもサンタの良いところです。5010やBRONSONが同系列のアクション系、速さや安定感を求めるなら29インチのHIGH TOWERやTALLBOYが比較候補になります。

「5010は里山ライドにぴったりな操縦性の機敏なトレイルバイク」
大野茂一郎(ワイズロード東大和店)


5010は里山ライドにぴったりな操縦性の楽しいプレイバイクだ5010は里山ライドにぴったりな操縦性の楽しいプレイバイクだ photo:Makoto AYANO
富士見パノラマなどのゲレンデに行くより、身近な里山トレイルでのライドがメインの人なら絶対に楽しく遊べるバイクだと思います。「主流の29じゃなくて27.5なのはどうなの?」という否定的なイメージをもつ人が居ると思うけれど、スピード域が高くなくていい人なら、5010はダルさが無くて軽快でタイトターンも軽く曲がれる俊敏なバイクです。トレイルカッターで29インチバイクと乗り比べてみれば、スピードが出せるコースならサスのストローク長さと29ホイールの特性が活かせるけど、スピードが出せないテクニカルなコーナーの続くトレイルなら5010のほうが動きが良くて楽しいと思いました。

日本の里山トレイルにはジャストミートなバイクです。本当に乗っていて楽しかった。でもふじてんやパノラマなどのゲレンデが苦手なワケじゃなく、すごく軽快でコーナリングのいいバイクになるでしょう。タイヤのチョイス次第で味付けを変えられます。

サンタクルズ5010(フィフティーテン)サンタクルズ5010(フィフティーテン) photo:Makoto AYANO
今回の完成車についていたタイヤはマキシス MINION DHR2 27.5✕2.3だったけれど、車体そのものが軽いのでタイヤの重さを感じさせない軽やかさがあるんです。だから下り系の重いハイグリップタイヤをつけても重量を感じることなく安心感が出せるでしょう。逆に軽いタイヤだとフィーリングが軽すぎちゃうんじゃないかと思います。

クロカン系ベースの人なら下りを楽しく走るためにマキシス MINION DHRなどのタイヤでちょうどよく楽しめるでしょう。太さは2.3ぐらいがちょうど良く、2.4だとダルになると感じました。DHRを前後に、ASSEGAIが必要なほどではない。でも転がるほうが好みな場合は前後DHFか、後輪だけDHFでもいいかも。とにかく操るのが楽しいバイクですから、フィールドに合うセッティングをいろいろ試してみたくなります。
サンタクルズ 5010(フィフティー・テン)
サイズ XS、S、M、L、XL
サスペンションユニット トラベル量 130mm
ホイールサイズ 27.5インチ
重量 13.36kg〜(完成車)
フレーム価格
CC ¥470000
完成車価格
C R-kit ¥589000
C S-kit ¥709000
C XT-kit ¥849000(+¥150000でリザーブホイールに交換可能)
CC X01kit ¥976000(+¥150000でリザーブホイールに交換可能)

インプレッションライダーのプロフィール

三上和志(サイクルハウスMIKAMI)三上和志(サイクルハウスMIKAMI) 三上和志(サイクルハウスMIKAMI)

埼玉県飯能市のサイクルハウスMIKAMI店長。地元の山でのMTBライドを毎朝欠かさず、ENSエンデューロシリーズにも参戦するマウンテンバイカー。愛する飯能・阿須の山々では奥武蔵マウンテンバイク友の会を主宰し、トレイル整備や清掃活動を通して地域に貢献、自治体と協力し合いながらマウンテンバイクの地位向上につとめている。ENSシリーズではハードテイルMTBでフルサスに乗ったワークスライダーを喰ってしまう成績を出すテクニックの持ち主だ。

サイクルハウスMIKAMI フェイスブックページ

大野茂一郎(ワイズロード東大和店)大野茂一郎(ワイズロード東大和店) 大野茂一郎(ワイズロード東大和店)

東京都東大和市にあるワイズロード東大和店の店長。過去にはスポーツクラブでトレーナーを務め、東京ボディビル選手権準優勝という異色の経歴の持ち主。ウェイトトレーニングやコンディショニングにも深い造詣を持つ。MTB歴は25年以上で、ダウンヒルレースでの入賞経験も豊富。エクストリーム系スポーツ全般への深い素養を持つベテランライダー。オフロードライドの楽しさをロードバイクライダーに伝えるエヴァンジェリストだ。

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