獲得標高差3,550mの丘陵ステージで争われたツール・ド・フランス6日目で、逃げ切り決まる。ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)が42.5kmの独走勝利を遂げ、逃げに乗ったファンデルプールが1秒差でマイヨジョーヌを取り戻した。

前日の個人TTでタイムを失ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

スタートを待つ4賞ジャージ photo:CorVos 
故郷バイユーの大声援を受けるヴォークラン photo:A.S.O.
7月10日(木)第6ステージ
バイユー〜ヴィル・ノルマンディー(丘陵)
距離: 201.5km
獲得標高差:3,550m
天候:晴れ
気温:26度

第6ステージ バイユー〜ヴィル・ノルマンディー image:A.S.O.
獲得標高は3,550mだがコース分類は丘陵ステージ。レースディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が「ツール史上最も過酷な”平坦”ステージ」と表す理由は、本格山岳が一切登場しないためだ。バイユーからその南側を回るように「スイス・ノルマンディー(ノルマンディーのスイス)」と呼ばれる地帯を駆けるため、アルデンヌクラシックのようなアップダウンが連続する。
コースにはカテゴリーの低い6つの山岳が散りばめられ、最後に登る4級山岳ヴォドリー(距離1.2km/平均7.2%)は最大勾配11%と強烈。そのため、ここまで過酷なレース展開が続く総合上位勢が脚を休めるべく、逃げ切りを容認するだろうと予想された。

レースディレクターであるクリスティアン・プリュドム氏がアクチュアルスタートの旗を振る photo:A.S.O.

スタート直後からアンテルマルシェ・ワンティがアタックを抑え込んだ photo:A.S.O.
スタート地点の集団先頭に並んだのはマイヨブラン(ヤングライダー賞)以外、マイヨジョーヌなど3賞ジャージランキングでトップに立つタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)。またバイユー出身で現在総合3位につけるケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)に大歓声が飛ぶ中、午後12時45分にレースはスタート。その直後からアンテルマルシェ・ワンティがハイペースで集団牽引を始めた。
その狙いは、わずか22.2km地点にある中間スプリントをエースのビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)で取るため。そのリードアウトからランキング3位のギルマイが駆けたものの、先頭通過したのはジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)。この日、繰り下げでマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るミランが、レース序盤にまずそのスピードを見せつけた。

レース中盤に入り、ようやく形成された8名の逃げグループ photo:A.S.O.
その攻防を利用するように飛び出したのが、この日の主役となるクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)だ。この2名へジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)などが合流を目指し、またヴィスマ・リースアバイクの執拗なチェックによって、シモンズらは1度メイン集団に引き戻される。しかし最初の4級山岳をシモンズが先頭通過すると、激しいアタック合戦の末、8名による逃げグループが出来上がった。
第6ステージで逃げた8名
サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)
ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)
クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)
エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)
ウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター)
アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)
レースも折り返しを迎える頃にようやく形成された逃げグループには、前日にマイヨジョーヌを失ったファンデルプールや初日に総合タイムを失ったサイモン・イェーツが入る。またシモンズとヒーリーはしっかりと乗り、今大会は総合エースの役割から解放され自由を得たエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)の姿も。世界最大のレースにふさわしい豪華メンバーの逃げに対し、メイン集団はUAEチームエミレーツXRGが牽引し、リーダーチームとしての責務を果たした。

連日、厳しいレースが続いたプロトンの選手たちはスローペースで脚を休める photo:A.S.O.

順調にタイムアドバンテージを得る逃げ集団 photo:A.S.O. 
沿道からはケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)を応援する声が飛ぶ photo:A.S.O.
連続する3級山に設定された山岳ポイントに興味を示したのは、ヒーリー&ダンバーというアイルランド人コンビに、オーストラリア人のストーラーを加えた3名。残り50km地点を過ぎた頃までに逃げは、プロトンに対し3分37秒のリードを得る。そして逃げ切り勝利の可能性が徐々に高まっていった残り42.5km地点の下りで、ヒーリーが逃げグループから飛び出した。
この動きを逃げの選手たちは静観し、元アイルランド王者は一気にリードを得る。ヒーリーに10kmで47秒差を許した追走集団では、残り29km地点でようやくシモンズが飛び出し、ストーラーと2名で1分先のヒーリーを追いかける。順調にローテーションを回した2名だったが、ここからアムステルゴールドレースで2位に入った経験もあるヒーリーが、驚きのペースアップを見せた。

逃げ集団を飛び出し、追走するクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とマイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) photo:CorVos

42.5km地点で飛び出したベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.
残り15km地点で1分27秒、残り10kmでその差は1分48秒まで拡がり、最後の4級山岳ヴォドリー(距離1.2km/平均7.2%)を越える頃に2分25秒まで拡大。そして42.5kmを独走したヒーリーが大観衆の待つヴィル・ノルマンディーに到着。最後まで一切ペダルを踏む力を緩めることなく、自身初となるツールのステージ優勝を手に入れた。

独走からツール初勝利を掴んだベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos
「本当に信じられないこと。ここでの勝利を目指し、今年だけじゃなくずっと努力を重ねてきた。本当に素晴らしい瞬間だし、これは僕だけではなく、共に努力してくれたチームの皆のおかげ。今日のステージは開幕から狙っていたが、丸をつけた1つ目のステージで勝てたなんて信じられない」と、喜びを語ったヒーリー。名門トリニティ・レーシングから2022年にEFでプロデビューした24歳で、ツール初出場だった昨年も何度も逃げに乗り、持ち前の積極的な走りから勝利を狙った。そして2度目の出場となった今年、ようやく初勝利を射止めた。
2位には2分44秒遅れでシモンズがフィニッシュ。後半に失速して勝利を逃したファンデルプールだったが、3分58秒遅れでレースを終え、ポガチャルを先頭にするプロトンが5分27秒遅れでフィニッシュしたため、わずか1秒差で前日に失ったマイヨジョーヌを取り戻した。
ポガチャルが独占していた特別賞ジャージは、マイヨヴェールがミラン、そしてマイヨアポワはチームメイトであるティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)に引き継がれている。

アイルランド人として7人目にツール勝者となったベン・ヒーリー(EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを取り戻したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O. 
マイヨアポワ(山岳賞)は再びティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)の手に photo:A.S.O.



7月10日(木)第6ステージ
バイユー〜ヴィル・ノルマンディー(丘陵)
距離: 201.5km
獲得標高差:3,550m
天候:晴れ
気温:26度

獲得標高は3,550mだがコース分類は丘陵ステージ。レースディレクターのクリスティアン・プリュドム氏が「ツール史上最も過酷な”平坦”ステージ」と表す理由は、本格山岳が一切登場しないためだ。バイユーからその南側を回るように「スイス・ノルマンディー(ノルマンディーのスイス)」と呼ばれる地帯を駆けるため、アルデンヌクラシックのようなアップダウンが連続する。
コースにはカテゴリーの低い6つの山岳が散りばめられ、最後に登る4級山岳ヴォドリー(距離1.2km/平均7.2%)は最大勾配11%と強烈。そのため、ここまで過酷なレース展開が続く総合上位勢が脚を休めるべく、逃げ切りを容認するだろうと予想された。


スタート地点の集団先頭に並んだのはマイヨブラン(ヤングライダー賞)以外、マイヨジョーヌなど3賞ジャージランキングでトップに立つタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)。またバイユー出身で現在総合3位につけるケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ)に大歓声が飛ぶ中、午後12時45分にレースはスタート。その直後からアンテルマルシェ・ワンティがハイペースで集団牽引を始めた。
その狙いは、わずか22.2km地点にある中間スプリントをエースのビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・ワンティ)で取るため。そのリードアウトからランキング3位のギルマイが駆けたものの、先頭通過したのはジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック)。この日、繰り下げでマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を着るミランが、レース序盤にまずそのスピードを見せつけた。

その攻防を利用するように飛び出したのが、この日の主役となるクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)だ。この2名へジュリアン・アラフィリップ(フランス、チューダー・プロサイクリング)などが合流を目指し、またヴィスマ・リースアバイクの執拗なチェックによって、シモンズらは1度メイン集団に引き戻される。しかし最初の4級山岳をシモンズが先頭通過すると、激しいアタック合戦の末、8名による逃げグループが出来上がった。
第6ステージで逃げた8名
サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク)
ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)
クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)
マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング)
エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)
ウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター)
アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ)
レースも折り返しを迎える頃にようやく形成された逃げグループには、前日にマイヨジョーヌを失ったファンデルプールや初日に総合タイムを失ったサイモン・イェーツが入る。またシモンズとヒーリーはしっかりと乗り、今大会は総合エースの役割から解放され自由を得たエディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー)の姿も。世界最大のレースにふさわしい豪華メンバーの逃げに対し、メイン集団はUAEチームエミレーツXRGが牽引し、リーダーチームとしての責務を果たした。



連続する3級山に設定された山岳ポイントに興味を示したのは、ヒーリー&ダンバーというアイルランド人コンビに、オーストラリア人のストーラーを加えた3名。残り50km地点を過ぎた頃までに逃げは、プロトンに対し3分37秒のリードを得る。そして逃げ切り勝利の可能性が徐々に高まっていった残り42.5km地点の下りで、ヒーリーが逃げグループから飛び出した。
この動きを逃げの選手たちは静観し、元アイルランド王者は一気にリードを得る。ヒーリーに10kmで47秒差を許した追走集団では、残り29km地点でようやくシモンズが飛び出し、ストーラーと2名で1分先のヒーリーを追いかける。順調にローテーションを回した2名だったが、ここからアムステルゴールドレースで2位に入った経験もあるヒーリーが、驚きのペースアップを見せた。


残り15km地点で1分27秒、残り10kmでその差は1分48秒まで拡がり、最後の4級山岳ヴォドリー(距離1.2km/平均7.2%)を越える頃に2分25秒まで拡大。そして42.5kmを独走したヒーリーが大観衆の待つヴィル・ノルマンディーに到着。最後まで一切ペダルを踏む力を緩めることなく、自身初となるツールのステージ優勝を手に入れた。

「本当に信じられないこと。ここでの勝利を目指し、今年だけじゃなくずっと努力を重ねてきた。本当に素晴らしい瞬間だし、これは僕だけではなく、共に努力してくれたチームの皆のおかげ。今日のステージは開幕から狙っていたが、丸をつけた1つ目のステージで勝てたなんて信じられない」と、喜びを語ったヒーリー。名門トリニティ・レーシングから2022年にEFでプロデビューした24歳で、ツール初出場だった昨年も何度も逃げに乗り、持ち前の積極的な走りから勝利を狙った。そして2度目の出場となった今年、ようやく初勝利を射止めた。
2位には2分44秒遅れでシモンズがフィニッシュ。後半に失速して勝利を逃したファンデルプールだったが、3分58秒遅れでレースを終え、ポガチャルを先頭にするプロトンが5分27秒遅れでフィニッシュしたため、わずか1秒差で前日に失ったマイヨジョーヌを取り戻した。
ポガチャルが独占していた特別賞ジャージは、マイヨヴェールがミラン、そしてマイヨアポワはチームメイトであるティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG)に引き継がれている。



ツール・ド・フランス2025第6ステージ
1位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4:24:10 |
2位 | クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) | +2:44 |
3位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) | +2:51 |
4位 | エディ・ダンバー(アイルランド、ジェイコ・アルウラー) | +3:21 |
5位 | サイモン・イェーツ(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) | +3:24 |
6位 | ウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター) | +3:29 |
7位 | アロルド・テハダ(コロンビア、XDSアスタナ) | +3:52 |
8位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +3:58 |
9位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | +5:27 |
10位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 21:52:34 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | +0:01 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +0:43 |
4位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +1:00 |
5位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:14 |
6位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:23 |
7位 | ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツXRG) | +1:59 |
8位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:01 |
9位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:32 |
10位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +2:36 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 127pts |
2位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 1087pts |
3位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 1067pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | ティム・ウェレンス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) | 7pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 5pts |
3位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 4pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | 21:53:17 |
2位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +0:17 |
3位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | +1:18 |
チーム総合成績
1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 65:39:59 |
3位 | UAEチームエミレーツXRG | +4:45 |
2位 | グルパマFDJ | +10:48 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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