劇的な独走勝利を飾ったヒーリーは静かに喜び、2位のシモンズは悔しさの中にも手応えを語った。1秒差でマイヨジョーヌを奪還したファンデルプールやポガチャルなど、それぞれの選手たちがツール第6ステージを振り返った。



ステージ優勝 ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)

42.5km地点で飛び出したベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.

本当に信じられない。ここでの勝利を目指し、今年だけじゃなくずっと努力を重ねてきた。本当に素晴らしい瞬間だし、これは僕だけではなく、共に努力してくれたチームの皆のおかげ。勝利という結果で彼らに報いることができ、本当に嬉しい。

(初出場した)昨年は驚くほどの体験ができ、その経験がここで勝利する確信を持たせてくれた。だから練習を集中して取り組み、自分のレーススタイルに磨きをかけた。そのために多くのレースを観て学び、それらが今日、勝利という形で実を結んだ。

独走からツール初勝利を掴んだベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

アクチュアルスタートから自分の中でスイッチを入れ、逃げに乗るために力を使いすぎたとも感じた。だけどそれが僕のスタイルで、逃げ集団では協力してタイム差を稼いだ。自分が勝つためには集団から飛び出さなければならないと思い、アタックしてギャップを作った。彼らの虚を突くことができたみたいだ。そこからは頭を下げ、フィニッシュを目指し踏み続けるだけだった。

今日のレイアウトは僕の脚質に適しており、開幕から丸をつけたステージの1つ。まさかの1つ目で勝てたなんて信じられない。本当に信じられない結果だよ。ツールを観て育ち、そこで走ることが目標だった。出場自体が達成だったのに、まさか勝てるとは。このシーンを(先日公開されたNetflixの新シリーズに)上手く挿入できないだろうか(笑)?

ステージ2位 クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)

逃げ集団を飛び出し、追走するクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)とマイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) photo:CorVos

先週、ステージの詳細を確認した時、このステージにチェックマークをつけたんだ。厳しい展開になり、逃げが決まると思ってね。スタートからハードな展開になれば、強力なメンバーによる逃げグループができると思った。自分に適したステージだと分かっていたので、ジョニー(ミラン)が中間スプリントを先頭通過してからチームとして攻めに出た。

(2022年に)初めてツールに出場した際、何度か逃げに乗ったけど、正直勝負出来るレベルではなかった。当時「勝利を狙う力がある」と言っていたが、実際は逃げに乗ることで精一杯だった。でもいま、あの頃よりもずっと強くなり、またこのアメリカ王者ジャージを着て戦っている。

毎ステージが集団スプリントか総合勢による戦いになってしまうのは良くない。そうなればポガチャルが区間8勝しかねないからね。だから、こういうタフな日は僕みたいな選手に大きなチャンスがくるんだ。チームとして(3日目に続く)2度目の2位は理想的ではないが、この3週間でチームの誰かしら勝ってくれると信じている。

ステージ8位&マイヨジョーヌ マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)

マイヨジョーヌを取り戻したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.

明日1日の着用となるだろうが、それでも再びマイヨジョーヌを着用できて嬉しいよ。当初の予定は逃げ集団に入ること。とても厳しいステージで、スタートから高速でレースが展開した。逃げ集団が形成されてもなお、タイム差を得るのに力を使わなければならなかった。絶好調の日とはならず、最後は自分自身との戦いだった。

僕にとって特別な場所(2021年に初勝利したミュール・ド・ブルターニュ)に明日、マイヨジョーヌを着て臨めるのは本当に嬉しいこと。でも今日のタデイ(ポガチャル)の走りを見てもわかる通り、またヨナス(ヴィンゲゴー)を含めても、あの(ラストの)登りで彼らについていくことは、僕だけじゃなく集団全体にとって難しいことだろう。今日の疲れをしっかりと回復し、様子を見てみよう。

ステージ9位&総合2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)

マイヨジョーヌを着て大会6日目に臨んだタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:CorVos

何を狙っていたのかはわからないけど、ヴィスマが序盤から激しくいった。だからとても速かった最初の2時間を、彼らに追従して乗り越えた。その後はステージ優勝を狙いに行くか、いかないかの選択を迫られた。僕らは弾(アシスト)を使わない決断をし、マルク(ソレル)らが素晴らしい牽引を見せてくれた。

終盤にヴィスマがラスト2つの登りでペースを上げた。もしかしたら逃げていたファンデルプールが遅れたのを知り、僕にマイヨジョーヌを着させ続けたかったのかもしれない。でも最終的にマチューが1秒差で取り戻した。今日は逃げ集団が素晴らしい走りを見せたね。

ステージ10位&総合5位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

前日の個人TTでタイムを失ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

最も厳しいステージではなかったが、簡単なレースでもなかった。最悪の日だった昨日に比べ、今朝からの調子は良かった。初めてコースレイアウトを見た時、正直、1週目は楽だと思っていた。でも本当に厳しい戦いが続いており、今大会は稀に見る厳しいものになるだろうね。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.