2015年シーズンを振り返るプレイバック第2弾。ベルギーを熱くするクラシックシーズンから、イタリアを駆けるジロ・デ・イタリアに注目が集まる5月までを振り返ります。



4月

観客に覆われたアランベールの森を抜ける観客に覆われたアランベールの森を抜ける photo:Tim de Waele
パテルベルグを駆け上がるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)パテルベルグを駆け上がるアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Makoto Ayano世界TTチャンピオンのブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)が最終個人タイムトライアルを制したデパンヌ・コクサイデ3日間レース。総合優勝のタイトルはステージ3勝のアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)の手に渡る。好調ぶりを示したクリストフが、直後のロンド・ファン・フラーンデレンで猛威を振るうことになる。

7名によるスプリントで勝利したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)7名によるスプリントで勝利したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele別府史之(トレックファクトリーレーシング)が5度目の出場を果たした「クラシックの王様」ロンドでクリストフとニキ・テルプストラ(オランダ、エティックス・クイックステップ)がエスケープ。残り27kmから逃げの展開に持ち込み、後続を引き離してスプリント一騎打ちに持ち込んだクリストフがノルウェー人選手初のロンド制覇を果たした。クリストフは直後のシュヘルデプライスでも勝利している。

18名の集団スプリントで勝利したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)18名の集団スプリントで勝利したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waele「北のクラシック」最終戦パリ〜ルーベは例年よりも大人数の集団による戦いに。チームスカイでの最終レースを迎えたウィギンズらのアタックは決まらず、難易度5つ星のカルフール・ド・ラルブルを越えても集団のまま。すると残り11kmでカウンターアタックを仕掛けたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)を中心に7名が先行し、勝負はヴェロドロームでのスプリントに。圧倒的なスピードでデゲンコルブがミラノ〜サンレモに続く今シーズン2つ目の「モニュメント」タイトルを手にした。

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)らの追撃を振り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が優勝ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)らの追撃を振り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が優勝 photo:Cor.Vos「北のクラシック」が終わると「アルデンヌ・クラシック」が始動。前哨戦ブラバンツ・ペイルではベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)が勝利し、新城幸也(ユーロップカー)が12位に。そしてアムステルゴールド・レースでは18名による集団スプリントで世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が勝利した。

総合を争った中島康晴(愛三工業レーシング)と内間康平(ブリヂストンアンカー)が握手総合を争った中島康晴(愛三工業レーシング)と内間康平(ブリヂストンアンカー)が握手 photo:Sonoko Tanaka アルデンヌ3連戦出場の別府史之(トレックファクトリーレーシング)と新城が揃ったフレーシュ・ワロンヌのタイトルは、最大勾配26%の「ユイの壁」でスパートを成功させたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)の手に(2年連続3度目)。バルベルデは続くリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも好調ぶりを見せつけ、ライバルたちのアタックを封じ込めるとともに集団スプリントで3度目の優勝を果たしている。リエージュで落車した新城は上腕骨と肋骨を骨折する重傷。このリエージュの落車負傷によって新城はシーズンのスケジュール変更を強いられた。

スペインのブエルタ・アル・パイスバスコではナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が激突。セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)が有利にレースを進めたものの、山岳ステージで2勝を飾るとともに最終個人タイムトライアルで好走したロドリゲスが逆転総合優勝を飾った。ジロ・デ・イタリアの前哨戦ジロ・デル・トレンティーノでは、リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)が山頂フィニッシュ制覇&総合優勝し、ジロ本戦に向けて好調ぶりをアピール。

トルコのツアー・オブ・ターキーではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)がスプリント3勝をマーク。クイーンステージを制した43歳ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)が総合首位に立ったものの、最終日に落車リタイア。最終的にクリスチャン・デュラセック(クロアチア、ランプレ・メリダ)が総合優勝に輝いた。

内間康平のステージ優勝でスタートしたツアー・オブ・タイランドでは日本人選手が活躍。中島康晴(愛三工業レーシング)が2年連続総合優勝を果たしている。



5月

霧に包まれ始めたフィネストレ峠を登るグルペット霧に包まれ始めたフィネストレ峠を登るグルペット photo:Kei Tsuji
別府史之(トレックファクトリーレーシング)と石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)別府史之(トレックファクトリーレーシング)と石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Kei Tsujiステージ2勝のミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)ら、地元スイス人選手の活躍が目立ったツール・ド・ロマンディ。山頂フィニッシュを制したティボー・ピノ(フランス、FDJ)や、ツールを見据えるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)を振り切った25歳のイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)がUCIワールドツアーレースで初総合優勝を飾った。ザッカリンは直後のジロでステージ優勝を飾っている。

表彰式を終えたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が病院に向かう表彰式を終えたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が病院に向かう photo:Tim de Waeleオリカ・グリーンエッジによる2年連続チームTTで開幕したジロ・デ・イタリア。序盤はマリアローザを着るマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)らのステージ優勝に沸き、マリアローザは第5ステージの山頂フィニッシュで早くもアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)の手に。

パンクしたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)をサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がサポートパンクしたリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)をサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がサポート photo:Tim de Waeleしかし翌日の第6ステージで落車に巻き込まれ、左肩を脱臼してしまう。誰もがコンタドールのリタイアもしくは失速を予想したが、コンタドールは諦めずに戦い続けた。

先頭で1級山岳チェルヴィニアを駆け上がるファビオ・アル(イタリア、アスタナ)先頭で1級山岳チェルヴィニアを駆け上がるファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji4度目のジロ出場を迎えた別府は、目標とするエスケープやステージ優勝には届かなかったものの、連日アシストとしての動きをこなして難なく完走。初出場の石橋学(NIPPOヴィーニファンティーニ)も仕事をこなしたが、第9ステージで途中リタイアを喫している。

総合優勝したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)をチームメイトが囲む総合優勝したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)をチームメイトが囲む photo:Tim de Waele総合争いは左肩負傷のコンタドールvsアスタナ勢という展開に。優勝候補の一角であるリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)が第10ステージでパンクした際に他チームから機材提供を受けたとして2分のペナルティーを受け、さらに落車の影響でタイムを失ったことでその情勢に拍車がかかる。アスタナのファビオ・アル(イタリア)とミケル・ランダ(スペイン)が総攻撃を仕掛けた。

コンタドールは第13ステージで落車に巻き込まれ、40秒のタイムを失ったためマリアローザをアルに明け渡したが、翌日の59.4km個人タイムトライアル(優勝はキリエンカ)でライバルたちから数分のリードを稼ぎ出して首位返り咲き。ドロミテやアルプスの本格山岳が始まる頃には左肩は完全に癒えていた。

アスタナのランダはマドンナ・ディ・カンピーリオアプリカで2連勝を飾ったものの、コンタドールの王座を揺るがすには至らない。すると最終山岳決戦であるチェルヴィニアセストリエーレで今度はアルが2連勝。そんなアスタナ勢の波状攻撃に耐えたコンタドールが、記録上2度目のジロ制覇を成し遂げた(2011年の総合優勝は剥奪)。

ジロと並行してアメリカで開催されたツアー・オブ・カリフォルニアではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)やペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)がスプリントバトル。カヴェンディッシュが4勝をマークし、巧みなボーナスタイム獲得によってサガンが僅差の総合争いを制している。

ツール・ド・フランスに向かって加熱する6月から7月にかけてはプレイバックvol.3でお伝えします。



text:Kei Tsuji