ロシアの新時代を担うオールラウンダーのイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)が持ち前の登坂力と独走力を発揮して逃げ切り勝利。自ら動くシーンも見せたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がマリアローザを守っています。



エミリア=ロマーニャ州の山岳地帯をいくエミリア=ロマーニャ州の山岳地帯をいく photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第11ステージジロ・デ・イタリア2015第11ステージ image:RCS Sportエミリア=ロマーニャ州のフォルリから山岳地帯に入り、2つの3級山岳を含むアップダウンを経てイモラに至る153kmで行われたジロ・デ・イタリア第11ステージ。1981年から2006年までF1サンマリノGPが開催されていたイモラサーキット(正式名称アウトドローモ・インテルナツィオナーレ・エンツォ・エ・ディーノ・フェラーリ)と4級山岳トレモンティを繋いだ15.4kmの周回コースが終盤に設定されている。

9名の逃げグループに入ったイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)9名の逃げグループに入ったイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Tim de Waele雲行きの怪しいフォルリの街を抜けるとすぐにハイスピードアタック合戦が始まり、別府史之(トレックファクトリーレーシング)もここに加わったが決まらない。集団のまま差し掛かった8km地点のスプリントポイントは、ポイント賞4位のジャコモ・ニッツォロ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)が先頭通過する。

ティンコフ・サクソが序盤からメイン集団をコントロールしたティンコフ・サクソが序盤からメイン集団をコントロールした photo:Tim de Waele最初の3級山岳トレッビオ峠で逃げの切っ掛けを作ったのはディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)で、ここに続々と選手が追いついては離れるを繰り返しながら最終的に10名の先行が決まる。10%を超えるアップダウンをこなしながら、先頭10名はジワリをリードを広げた。

逃げたのは総合争いからすでに脱落した「元」総合狙いの選手たち。ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)やフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)、カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)、ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)らが逃げる。

ティンコフ・サクソが序盤からコントロールを行ったものの、タイム差が4分まで広がったところでBMCレーシングにバトンタッチ。フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のステージ優勝に向けてコントロールを開始した。

急勾配の登りとテクニカルな下り、降り始めた雨、落車によって集団は3分割され、マリアローザを含む第1集団が逃げグループから1分遅れで終盤の周回コースに突入する。逃げ吸収は時間の問題と思われたが、ステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)が集団から飛び出すとBMCレーシングは集団牽引を終了。代わってオリカ・グリーンエッジが集団先頭に立ったものの、逃げグループとのタイム差は広がり始めた。



もう左肩に不安を感じさせないアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)もう左肩に不安を感じさせないアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele
メイン集団から飛び出したステファン・キュング(スイス、BMCレーシング)メイン集団から飛び出したステファン・キュング(スイス、BMCレーシング) photo:Tim de Waele独走に持ち込んだイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)独走に持ち込んだイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Tim de Waele
イモラサーキットに入る逃げグループイモラサーキットに入る逃げグループ photo:Tim de Waele


雨のイモラサーキットを逃げるイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)雨のイモラサーキットを逃げるイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Tim de Waeleアタックしたキュングは引き戻されたが、先頭で生き残っていた7名はリードを保ったまま周回をこなした。フィニッシュまで1.5周を残して動いたのは、直前のツール・ド・ロマンディで総合優勝を飾ったザッカリンだった。

独走でフィニッシュするイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)独走でフィニッシュするイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Tim de Waele登りでタイムを稼いだザッカリンは、40秒リードの独走で最終周回に突入。先頭で最後の4級山岳トレモンティを駆け上がり、雨に濡れたスリッピーなダウンヒルを攻め、ヘシェダルを含む追走グループを振り切ってイモラサーキットに入る。最終的に1分近いリードを広げて独走勝利を飾った。

マリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マリアローザを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Kei Tsuji現在25歳のザッカリンは、2009年にアナボリックステロイドの陽性により2年間の出場停止処分を受けており、処分明けの2012年にイテラカチューシャでデビュー。2015年からカチューシャで走っている。2014年にはツール・ド・アゼルバイジャンで総合優勝し、2015年4月のツール・ド・ロマンディで総合優勝を飾ったばかりだった。

「当初は総合狙いでジロに出場したものの、初日に調子の悪さを感じて目標をステージ優勝にスイッチした。ロマンディ総合優勝とこのステージ優勝は比較できないよ。両方素晴らしい。ここ数年輝きを失っているロシアを率いる存在として、今後もステージレースで成績を残したい」と、ロシアンチームのエース格として存在感を見せるザッカリンは語っている。

フィニッシュまで6.5kmを残した4級山岳トレモンティでマリアローザのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がアタックするシーンも見られたが、ライバルたちが即座に反応してサプライズは起こらず。最終周回に入る直前に落車したリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)を含め、総合上位選手は1分02秒遅れの集団でフィニッシュしている。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



シャンパンを開けるイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)シャンパンを開けるイルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ) photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2015第11ステージ結果
1位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)             3h55’08”
2位 カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)    +53”
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
4位 ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)
5位 ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)
6位 ステフェン・クルイスウィク(オランダ、ロットNLユンボ)
7位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)
8位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)     +58”
9位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
10位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)                +1’02”
82位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)            +19’05”

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)        46h54’19”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +03”
3位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                     +46”
4位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)                   +1’16”
5位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)            +1’46”
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)      +2’10”
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)            +2’12”
8位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)              +2’20”
9位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)              +2’24”
10位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、チームスカイ)              +2’30”

マリアロッサ ポイント賞
ニコラ・ボエム(イタリア、バルディアーニCSF)

マリアアッズーラ 山岳賞
ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text&photo:Kei Tsuji in Imola, Italy