現在のプロトンの中にアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)を止めることが出来る選手はいない?伝統のシュヘルデプライス(UCI1.HC)で再びノルウェージャンスプリンターが勝利。週末のパリ〜ルーベに向けてさらに勢いをつけた。



黒枝士輝(NIPPOヴィーニファンティーニ)が紹介される黒枝士輝(NIPPOヴィーニファンティーニ)が紹介される photo:Makoto AYANO
パリ・ルーベの最終調整として出場したブラドレー・ウィギンズ(チームスカイ)パリ・ルーベの最終調整として出場したブラドレー・ウィギンズ(チームスカイ) photo:Makoto AYANOアレクサンダー・クリストフのバイクは五輪銅メダルのコッパーゴールドに塗られるアレクサンダー・クリストフのバイクは五輪銅メダルのコッパーゴールドに塗られる photo:Makoto AYANO


アントワープの街へと向かうプロトンアントワープの街へと向かうプロトン photo:Makoto AYANOシュヘルデプライスはロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベに挟まれた水曜日に開催されるセミクラシック。今年で開催103回目を迎える伝統のクラシックレースであり、初開催は1907年。ロンド(1913年初開催)よりも歴史が古く、フランドル地方の中で最古のロードレースとされる。

黒枝士輝(NIPPOヴィーニファンティーニ)黒枝士輝(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Makoto AYANOベルギーの中でも開催地域はロンドよりも北。オランダ国境に近い平野部で、同地域を流れるシュヘルデ川がレース名の由来だ。アントウェルペンからシュコーテンに至る200kmには石畳区間が設定されているものの、ほぼ平坦のため例年スプリンターたちが勝負を繰り広げる。

今季初ロードレース出場となったCXライダーのラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は114位完走今季初ロードレース出場となったCXライダーのラルス・ファンデルハール(オランダ、ジャイアント・アルペシン)は114位完走 photo:Tim de Waele過去の優勝者を見るとスプリンターがずらり。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)がこれまで3度の優勝し、2012年からはマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)が3連覇を果たしている。

先頭を引いて逃げを追うカチューシャ先頭を引いて逃げを追うカチューシャ photo:Makoto AYANOしかし体調不良によってカヴェンディッシュとキッテルは欠場し、ロンドで調子の良さを見せていたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)も出場せず。優勝候補に挙げられたのは、やはり、ロンドを制したばかりのクリストフだった。

クリストフ擁するカチューシャとともにレースをコントロールしたのは、ペーター・サガン(スロバキア)ではなくミカエル・モルコフ(デンマーク)とニコライ・トルソーフ(ロシア)でスプリントを狙うティンコフ・サクソ。序盤に形成された7名逃げのリードを射程圏内に押さえ込みながらメイン集団は進行する。

タイム差は残り40kmで早くも1分を割り込み、エティックス・クイックステップやチームスカイ、トレックファクトリーレーシングが集団先頭で位置取りを開始したことでさらにタイム差の縮小は加速する。スポンサーのバルーンアーチがコース上に横たわるトラブルが発生したものの、逃げグループとメイン集団は安全にクリアした。

逃げグループからアタックしたローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)とフーブ・デュイン(オランダ、ルームポット)も残り4kmで捕まり、大集団によるスプリント勝負に。

スプリントに向けてざわつくプロトンの中では、残り1kmアーチを切ったところで大落車が発生する。数十名が巻き込まれたこの落車によって先頭は15名ほどに絞られ、FDJ主導でスプリントが始まった。



最終周回に向かってカチューシャが集団をコントロールする最終周回に向かってカチューシャが集団をコントロールする photo:Makoto AYANO
メイン集団を牽引するエティックス・クイックステップメイン集団を牽引するエティックス・クイックステップ photo:Tim de Waele山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Makoto AYANO


逃げグループの中からアタックしたローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ)逃げグループの中からアタックしたローレンス・デフレース(ベルギー、アスタナ) photo:Tim de Waele好位置でスプリントに持ち込んだのはクリストフ、マルク・サロー(フランス、FDJ)、ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)、マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)ら。ど真ん中を突き進むクリストフの加速力はずば抜けていた。

人数の減ったゴールスプリントだがアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)が伸びる人数の減ったゴールスプリントだがアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー)が伸びる photo:Makoto AYANO「チームの活躍ぶりが信じられない。強力なメンバーが揃った逃げが最後まで抵抗したものの、チームが一丸となって集団を率いて吸収。残り2kmから全力で集団前方まで引き上げてくれて、残り500mの時点で最高のポジションにつけたんだ」と語る絶好調クリストフは他を寄せ付けない今シーズン11勝目。クリストフはこの10日間だけで6勝を挙げている(デパンヌのステージ3勝&総合優勝、ロンド・ファン・フラーンデレン優勝、シュヘルデプライス優勝)。

落車をすり抜けて難なく勝ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)落車をすり抜けて難なく勝ったアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Makoto AYANOここまで好調ぶりを見せつけられると、やはり週末のパリ〜ルーベでの活躍にも期待が集まる。クリストフは過去5回出場し、2012年に57位で初完走。2013年の9位が最高位(2010年、2011年、2014年はDNF)。

「この勝利の波を継続できたらいいけど、パリ〜ルーベは別物なんだ。過去には苦しんだ思い出しかない。過去の成績を見る限り自分は優勝候補ではないけどトライするよ。平坦な石畳コースは得意ではないけど、調子が良いのは間違いないので、終盤まで勝負に残ることができれば自分は危険な存在になる。世界有数の美しいレースであり、パンクやメカトラなどを避ける運も味方につけなければならない。いつかは勝ちたいと思っている。シーズン前半最後の出場レースなので全力を尽くすよ」と、「北のクラシック」最終戦に向けての意気込みを語った。

ニコラス・マリーニ(イタリア)を7位に送り込んだNIPPOヴィーニファンティーニの黒枝士揮と山本元喜は、集団から途中何度も遅れそうになるが耐えしのいで完走。それぞれ2分35秒、5分36秒遅れでフィニッシュしている。

選手コメントはチーム公式サイトより。



山本元喜と黒枝士輝が無事レースを終えた山本元喜と黒枝士輝が無事レースを終えた photo:Makoto AYANO「体調の最高な週を迎えた」記者会見に臨むアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)「体調の最高な週を迎えた」記者会見に臨むアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ) photo:Makoto AYANO



シュヘルデプライス2015結果
1位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)         4h30’10”
2位 エドワード・テウンス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
3位 ヤウヘニ・フタロヴィッチ(ベラルーシ、ブルターニュ・セシェ)
4位 マルク・サロー(フランス、FDJ)
5位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
6位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
7位 ニコラス・マリーニ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)
8位 ミカエル・ファンスタイエン(ベルギー、コフィディス)
9位 タイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)
10位 クリストフ・プフィングステン(ドイツ、ボーラ・アルゴン18)
108位 黒枝士揮(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)             +2’35”
170位 山本元喜(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)             +5’36”

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele, Makoto Ayano