ライバルを完全に突き放すことは出来なかったものの、最大勾配26%の「ユイの壁」で先頭に立つには十分な加速。相次ぐ落車にライバルたちが苦しめられる中、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が軽やかな登坂力で大会連覇を果たしました。



1回目の「ユイの壁」に突入するプロトン1回目の「ユイの壁」に突入するプロトン photo:Kei Tsuji
アルデンヌ3連戦出場中の別府史之(トレックファクトリーレーシング)アルデンヌ3連戦出場中の別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji壇上でMCのインタビューを受ける新城幸也(ユーロップカー)壇上でMCのインタビューを受ける新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji


どこかピリピリとした雰囲気のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)どこかピリピリとした雰囲気のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji4月22日、快晴のワロン地域で開催された第79回フレーシュ・ワロンヌ(UCIワールドツアー)。朝方は気温が4度まで下がったものの、昼間は最高気温18度ほどの春らしい陽気に包まれた。

レース序盤、アタックを繰り返しながら集団は進むレース序盤、アタックを繰り返しながら集団は進む photo:Kei Tsuji10km地点で形成されたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)やブリース・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)ら7名の逃げが8分先行し、モビスターやカチューシャが追いかける。しかし平穏は長続きせず、細かく進路を変える荒れ気味のコースが落車を誘発した。

ダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)が集団から飛び出すダニエーレ・ラット(イタリア、ユナイテッドヘルスケア)が集団から飛び出す photo:Kei Tsuji1回目の「ユイの壁」手前で落車したダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)は大怪我を免れたものの、残り48km地点で落車したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)のリタイアが地元の観客を落胆させる。さらにイェーレ・ファネンデルト(ベルギー、ロット・ベリソル)やワウテル・ポエルス(オランダ、チームスカイ)も相次いで落車し、勝負が本格化する前に姿を消した。

2回目の「ユイの壁」で先手を打ったのはモビスターだった。ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)が集団から抜け出すと、ここにルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)が合流する。それまで逃げていた選手たちを抜いて、ヴィスコンティとサンチェスの2名がレースをリードし始める。

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)の追走は届かず、エティックス・クイックステップ勢が牽引するメイン集団に対して20秒のリードを得た先頭2名。残り10kmを切ったところで落車したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が集団から脱落。単調になりがちだったレース展開に変化をつけようと主催者ASOが追加した新登場コート・ド・シュラーブ(残り5.5km地点)に、先頭のヴィスコンティとサンチェスが差し掛かった。



急勾配の「ユイの壁」を進むプロトン急勾配の「ユイの壁」を進むプロトン photo:Kei Tsuji
2回目の「ユイの壁」でメイン集団から飛び出すジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)2回目の「ユイの壁」でメイン集団から飛び出すジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター) photo:Kei Tsujiアムステルゴールドを制したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が登りを進むアムステルゴールドを制したミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)が登りを進む photo:Kei Tsuji
集団内で「ユイの壁」を登る新城幸也(ユーロップカー)集団内で「ユイの壁」を登る新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji2回目の「ユイの壁」を登る別府史之(トレックファクトリーレーシング)2回目の「ユイの壁」を登る別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を先頭に「ユイの壁」を進むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)を先頭に「ユイの壁」を進む photo:Kei Tsuji


先頭で集団のペースを上げるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)先頭で集団のペースを上げるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsujiヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らのアタックによって先頭2名が捕まると、今度はティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が勢いよくアタック。ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)の追走を振り切ったウェレンスが、ユイの街に向かう下り&平坦路を快走する。

急勾配区間で先頭に立ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)急勾配区間で先頭に立ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei TsujiTTポジションで独走を続け、モビスターやアスタナ、ランプレ・メリダ率いるメイン集団を10秒引き離した状態で「ユイの壁」に挑んだウェレンス。直線距離で30kmほどしか離れていない故郷から駆けつけたファンによる路面のTIMペイントが背中を押すが、徐々に増す勾配に対応出来ずに失速する。

大会連覇を果たしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)大会連覇を果たしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji残り600mでウェレンスが吸収されるといよいよ「ユイの壁」の真骨頂である急勾配区間がスタート。先頭に立ってペースを上げたのはバルベルデだった。

落車したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がフィニッシュに向かう落車したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)がフィニッシュに向かう photo:Kei Tsujiバルベルデによるペースアップによって集団は見る見るうちに人数を減らす。残り200mに差し掛かったところでバルベルデがもう一段ペースを上げるとミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)らが後退。急勾配区間で集団は崩壊した。

フレーシュ・ワロンヌ表彰台 2位アラフィリップ、1位バルベルデ、3位アルバジーニフレーシュ・ワロンヌ表彰台 2位アラフィリップ、1位バルベルデ、3位アルバジーニ photo:Kei Tsujiバルベルデの加速にミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)やジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)が反応したものの、ディフェンディングチャンピオンとの距離が徐々に開く。カチューシャの優勝経験者2名、ホアキン・ロドリゲス(スペイン)とダニエル・モレーノ(スペイン)も出遅れた。

「チームの働きはパーフェクトだったし、登りも自分にとってパーフェクトだった。残り200mが正しいタイミングだと判断してアタック。その時点で勝ったと思った。仮に追いつかれても、もう一度加速出来る力を残していたから」。後方を確認し、余裕を持ってフィニッシュしたバルベルデはそう語る。

フレーシュ連覇を達成したバルベルデは「常にペースが速く、落車も相次いだ。とてもハードな1日だった。こんなにナーバスなレースは初めてだ。ずっと集団内がピリピリしていた。だからこそ最後にこうして勝つことが出来て嬉しいよ」とレースを振り返った。

3度目のフレーシュ制覇はアルジェンティン、メルクス、キント、レベッリンに続く史上5人目。2012年から4年連続でスペイン人選手がユイを制したことになる(2012年ロドリゲス、2013年モレーノ、2014年バルベルデ、2015年バルベルデ)。

金曜日に35歳の誕生日を迎えるバルベルデは、日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュで2006年と2008年に続く3度目の勝利を目指す。「アムステルゴールドで2位で、フレーシュで1位。もちろんリエージュが楽しみだ。モチベーションは高いけど気持ちは落ち着いているよ」。

スタート地点で会場MCの質問に「今日はロランのアシスト」と語っていた新城幸也(ユーロップカー)は14位に入ったピエール・ロラン(フランス)に続くチーム内2番手となる2分16秒遅れの67位でフィニッシュ。「中盤から終盤にかけてチームメートのポジション取りをして、チームリーダーのバウケ・モレマを2度目のユイの坂の前に前へ連れていって仕事を終えた」と語る別府史之(トレックファクトリーレーシング)は126位でレースを終えている。ともに日曜日のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュにも出場予定だ。



フィニッシュに向かう新城幸也(ユーロップカー)フィニッシュに向かう新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji13分20秒遅れでフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング)13分20秒遅れでフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji
39位でレースを終えた萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)39位でレースを終えた萩原麻由子(ウィグル・ホンダ) photo:Kei Tsuji


フレーシュ・ワロンヌ2015
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            5h08’22”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
6位 アレクシ・ヴィエルモ(フランス、AG2Rラモンディアール)          +04”
7位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
8位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
9位 トムイェルテ・スラグテル(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
67位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                    +2’16”
126位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)           +13’20”

フレーシュ・ワロンヌ・フェミニン2015
1位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ラボ・リブ)          3h18’46”
2位 アンネミエク・ファンフレウテン(オランダ、ビグラプロサイクリング)     +12”
3位 メーガン・グアルニエ(アメリカ、ボエルスドルマンス)            +20”
39位 萩原麻由子(日本、ウィグル・ホンダ)                  +4’31”

text&photo:Kei Tsuji in Huy, Belgium