2級山岳アベトーネで加熱したマリアローザ争い。23歳になったばかりのヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)が独走勝利を飾る中、ライバルたちとバトルを繰り広げたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がマリアローザを獲得しました。



トスカーナ州北部の山岳地帯を進むトスカーナ州北部の山岳地帯を進む photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第5ステージジロ・デ・イタリア2015第5ステージ image:RCS Sport第98回ジロ・デ・イタリアに登場する山頂フィニッシュは合計7つ。その1つ目が大会5日目に登場した。第5ステージは標高1386mの2級山岳アベトーネでフィニッシュを迎える。登坂距離17.3km/平均勾配5.4%の登りがマリアローザハンターたちの足を試した。

逃げグループを牽引するシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)逃げグループを牽引するシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング) photo:Tim de Waele晴れ渡るラ・スペツィアをパレード走行後にアクチャルスタートが切られるとすぐにアタックが始まり、エスケープクインテットが16km地点で形成される。すでに総合でタイムを失っている5人組は快調にメイン集団とのタイム差を広げ始めた。

マリアローザを着るサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マリアローザを着るサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleアクセル・ドモン(フランス、AG2Rラモンディアール)、シルヴァン・ディリエル(スイス、BMCレーシング)、シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)、ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)、セルゲイ・トヴェトコフ(ルーマニア、アンドローニジョカトリ)という、UCIワールドツアーチーム主体の力ある5人組が逃げる。

しばらく追走したアレッサンドロ・マラグーティ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)は結局先頭に追いつけず集団に吸収。トヴェトコフが下りで落車したものの怪我を負うことなく逃げに復帰する。レース中盤に差し掛かると、逃げとメイン集団のタイム差は最大10分40秒をマークした。

サイモン・クラーク(オーストラリア)のマリアローザキープもしくはエスデバン・シャベス(コロンビア)へのマリアローザ引き継ぎを狙うオリカ・グリーンエッジがメイン集団を牽引したがタイム差は縮まらない。

アベトーネの正式な登坂距離17.3kmだが、その倍の終盤35kmはほぼ登りっぱなしと言っていいレイアウト。残り33km地点でアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がメカトラによってバイク交換するシーンも見られたが、緩い登りを進むにつれてようやくタイム差は縮まり始める。逃げる5名は5分30秒のリードをもって2級山岳アベトーネの登坂をスタートさせた。



小さな田舎町を通過していく逃げグループ小さな田舎町を通過していく逃げグループ photo:Tim de Waele
独走でフィニッシュを目指すヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)独走でフィニッシュを目指すヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsuji


2番手でフィニッシュを目指すシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)2番手でフィニッシュを目指すシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング) photo:Kei Tsuji2級山岳アベトーネの頂上まで13kmを残してシャヴァネルがアタックすると逃げグループの協調体制は崩壊。事実上逃げ切りを確定させた5人によるステージ優勝争いが始まる。

アタックするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)アタックするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Tim de Waele勝負が決まったのは残り11km地点。勾配10%ほどのスイッチバックが続く区間でアタックしたポランクに誰も反応することが出来ない。1週間前に23歳の誕生日を迎えたポランクがリードを維持したまま2級山岳アベトーネを登りきり、大舞台でプロ初勝利を掴んだ。

メイングループを牽引するミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)メイングループを牽引するミケル・ランダ(スペイン、アスタナ) photo:Tim de Waele2014年8月1日にランプレ・メリダでプロ入りしたポランクはもちろんグランツール初勝利。「本当にスペシャルだ。プロ初勝利をジロで飾ることが出来るなんて。自分への1週間遅れの誕生日プレゼントになったよ。こんな良いチャンスを与えてくれたランプレ・メリダに感謝だ」。前日に優勝したダヴィデ・フォルモロ22歳に続いて、また1人要注目の若手が現れた。

懸命に追走するリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)はステージ17位懸命に追走するリゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)はステージ17位 photo:Kei Tsujiポランク独走勝利の後方ではいよいよマリアローザ争いが本格化。ディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)のアタックをイヴァン・バッソ(イタリア、ティンコフ・サクソ)が封じ込め、続くステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)のアタックもミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)によって引き戻される。

登りで落車したディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ)登りで落車したディエゴ・ローザ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsujiティンコフ・サクソとアスタナがメンバーを揃える一方で、チームスカイはアシストがレオポルド・ケーニッヒ(チェコ)のみという状況。集団後方ではマリアローザを着るクラークが白旗を揚げた。

ビッグスリーの中で最初に動いたのはアルベルト・コンタドールだった。残り5kmを切ったところでコンタドールが強烈なアタックを繰り出すとファビオ・アル(イタリア、アスタナ)とリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)がすかさず反応。リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)やライダー・ヘシェダル(カナダ、キャノンデール・ガーミン)は脱落してしまう。

コンタドール、アル、ポートには協力してウランらを引き離す意志は無し。アルとポートがそれぞれアタックして抜け出しを図ったが決まらない。すると後方からランダが追いつき、アルのために献身的にペースメイクした。

三強は互いを引き離せないままスプリントを開始し、2番手で登坂を続けていたシャヴァネルを捉える勢いでフィニッシュ。結果、シャヴァネルがステージ2位を守り、アルがステージ3位に入ってボーナスタイム4秒獲得。4分09秒遅れたクラークに代わってコンタドールが総合首位に立った。

「絶好調とは言えない状況だったし、最初はアタックする予定じゃなかった。でもグループの中で走るのは居心地が悪くて、アタックしたんだ」。総合争いの口火を切ったコンタドールはそう打ち明ける。

「ウランを始めとするライバルたちを引き離せたし、結果は良好。大会5日目にしては良い状況だ。マリアローザはプレゼントのようなもので、最初から狙っていたわけじゃない。もちろん栄誉なことだけど、重要なのはミラノでマリアローザを着ることであり、明日誰かに奪われても構わないよ」。コンタドールはアルに対して2秒、ポートに対して20秒のリードでマリアローザを着る。

現地の様子や日本人選手のコメントなどは現地レポートでお伝えします。



独走でフィニッシュするヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)独走でフィニッシュするヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele
マリアローザを手にしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マリアローザを手にしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele


ジロ・デ・イタリア2015第5ステージ結果
1位 ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)             4h09’18”
2位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)           +1’31”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
6位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                   +1’44”
7位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)                  +1’53”
8位 ユーリ・トロフィモフ(ロシア、カチューシャ)
9位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、BMCレーシング)
75位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)             +10’33”
172位 石橋学(日本、NIPPOヴィーニファンティーニ)              +19’34”

個人総合成績
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)        16h05’54”
2位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                     +02”
3位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)               +20”
4位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)             +22”
5位 ダリオ・カタルド(イタリア、アスタナ)                    +28”
6位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)          +37”
7位 ジョヴァンニ・ヴィスコンティ(イタリア、モビスター)             +56”
8位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)                   +1’01”
9位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール・ガーミン)        +1’15”
10位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、モビスター)            +1’18”

マリアロッサ ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

マリアアッズーラ 山岳賞
ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)

チーム総合成績
アスタナ

text&photo:Kei Tsuji in Abetone, Italy