新城幸也と別府史之が出場した「アルデンヌ・クラシック」前哨戦の第55回ブラバンツ・ペイル(UCI1.HC)。独走に持ち込んだベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)が勝利し、新城が12位に入りました。



オーベレルエイセの教会前を通過オーベレルエイセの教会前を通過 photo:Tim de Waele


ブラバンツ・ペイルはベルギーのフランドル地方を駆けるセミクラシックレース。フランス語では「ラ・フレーシュ・ブラバンソンヌ(ブラバントの矢)」と呼ばれる。同一主催者のフランドルクラシックシリーズ(オンループ、ドワーズドア、ヘント、ロンド、シュヘルデ、ブラバンツ)の最終戦にあたるが、起伏に富んだコースはどちらかと言えばアルデンヌ・クラシック寄り。そのため、週末から始まるアルデンヌ3連戦の前哨戦として毎年軽量なクラシックレーサーが集まる。

ブラバンツ・ペイル2015ブラバンツ・ペイル2015 image:Brabantse Pijlレースの舞台となるのは、ベルギーの首都ブリュッセル南東に広がる丘陵地帯。ロンドに代表されるフランドルクラシックよりも東に位置し、地形的に丘陵は緩やかとなり、激坂と呼ぶような急勾配の登りは登場しない。

メイン集団を牽引するエティックス・クイックステップメイン集団を牽引するエティックス・クイックステップ photo:Tim de Waeleルーヴェンからオーベレルエイセに至る205kmコースには、合計26カ所の短い登りが設定されている。フィニッシュ手前には5つの坂「ハーガールト(10%)」「ヘルトストラート(4%)」「ホルストハイデ(5%)」「エイケルダーラーン(7%)」「シャヴェイ(6%)」が詰め込まれた23.4km周回コースが用意されており、選手たちはここを3周半する。1日の獲得標高差は約2200mだ。

チームメイトのアシストを受ける新城幸也(ユーロップカー)チームメイトのアシストを受ける新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele最大4分先行したトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、アントニー・デュラプラス(フランス、ブルターニュ・セシェ)、アレックス・キルシュ(ルクセンブルク、クルトエネルギー)の3名を追ったのは、優勝候補を抱えるBMCレーシングとオリカ・グリーンエッジの2チーム。

「シャヴェイ」を起点とした周回コースに入るとタイム差は縮まり、フィニッシュまで38kmを残して早くも逃げは吸収される。すると、「フィリップ(ジルベール)に、ペースを上げてレース展開をハードにすべきか、カウンターアタックすべきかを尋ねたところ、答えはアタックだった」と振り返るヘルマンスがデーヴィッド・タナー(オーストラリア、IAMサイクリング)とともに飛び出した。

20秒ほどのリードを築いたヘルマンスとタナーを追って、新城幸也(ユーロップカー)やファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)を含む追走グループが形成されたものの、先頭に合流することなくメイン集団に戻る。エティックス・クイックステップ率いるメイン集団に対し、ヘルマンスとタナーは30秒リードで残り5km地点の「エイケルダーラーン」に差し掛かった。

新城も集団先頭に位置しながら登りをクリアすると先頭2名のリードは10秒に。残り4kmを切ると、ヘルマンスがタナーを振り切って独走を開始。メイン集団からはフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)とジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)の2人が飛び出したが決定的なリードは奪えない。



「アルデンヌ・クラシック」を前に好調ぶりを見せた新城幸也(ユーロップカー)「アルデンヌ・クラシック」を前に好調ぶりを見せた新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele「アルデンヌ・クラシック」 3連戦出場予定の別府史之(トレックファクトリーレーシング)「アルデンヌ・クラシック」 3連戦出場予定の別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele独走に持ち込んだベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)独走に持ち込んだベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele


メイン集団はヘルマンスを視界に捉えながら追走したものの、10秒の差が縮まらないまま最後の「シャヴェイ」に突入。独走のまま登りを突き進んだヘルマンスがメイン集団を2秒引き離したままフィニッシュ。マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が2位、ジルベールが3位に入った。

独走でフィニッシュしたベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)独走でフィニッシュしたベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele「追走集団に捕まるんじゃないかとヒヤヒヤしたよ。フィリップ(ジルベール)のようなスプリント力がない限り、このタイプのレースで勝つための選択肢は少ない。前半はひたすら力を温存して、後半に持てる力を全て出したんだ」。2014年のBMCレーシング加入後初となる勝利を掴んだヘルマンスは語る。

ヘルマンスは2010年から2013年までレディオシャックに所属。これまでも起伏に富んだクラシックで上位に絡んでいたが、大きな勝利は手にしていなかった。アルデンヌ・クラシックではジルベールとともにBMCレーシングを率いる存在だ。

一時は追走グループに入り、その後も集団先頭でレースを展開した新城は登りスプリントで12位。2014年にトップ10フィニッシュしたアムステルゴールド・レースはチーム不参加のため欠場するが、フランスチームのエース格としてフレーシュ・ワロンヌとリエージュ〜バストーニュ〜リエージュへの出場が期待される。

選手コメントはチーム公式サイトより。



表彰台でシャンパンを開ける2位マシューズ、1位ヘルマンス、3位ジルベール表彰台でシャンパンを開ける2位マシューズ、1位ヘルマンス、3位ジルベール photo:Tim de Waele


ブラバンツ・ペイル2015
1位 ベン・ヘルマンス(ベルギー、BMCレーシング)              4h45’14”
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)        +02”
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
4位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)
5位 ダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディポルコウィチェ)
6位 ネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)
7位 ファビオ・フェリーネ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
8位 マウリッツ・ラメルティンク(オランダ、ルームポット)
9位 マチェイ・パテルスキー(ポーランド、CCCスプランディポルコウィチェ)
10位 ドリス・デヴェナインス(ベルギー、IAMサイクリング)
12位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
73位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)             +5’53”

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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