2022年は一時代を築いた名選手の多くが、寂しくも現役引退を選んだ年だった。来日したニバリ&バルベルデや、突然の引退を発表したデュムラン、ジルベール、そして中根英登などプロトンを去った選手たちを紹介します。



揃って来日したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)揃って来日したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン) phoro:Satoru Kato
12月現在ワールドチームとプロチームに所属するプロ選手のうち、50名以上が現役引退を発表している。

早くから引退を発表していたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)はその中で最もファンから祝福を受けた選手だろう。今年は42歳にもかかわらずフルシーズンを戦い、主要クラシックをはじめジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャを完走。更にツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに出場して日本のファンに最後の雄姿を披露した。ちなみに引退後もチーム合宿に参加し、選手たちと共にライドする姿が発信されている。

同じくヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア)も多くの声援を受け引退した選手の一人。その活躍は改めて記すまでもないが、ジロ&ツールを制したアスタナカザフスタンに今年復帰し、勝利こそなかったものの最盛期を彷彿とさせる鋭い走りを披露。またバルベルデと同じく来日し、18年の現役生活に別れを告げた。引退後はクベカ・ネクストハッシュの後継チームであるQ36.5プロサイクリングチームのテクニカルアドバイザー就任が伝えられている。

ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)	ヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos
フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)フィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル) photo:Makoto AYANO
前述した2人に並び一時代を築いたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)も今年引退する選手の一人。5大モニュメントの完全制覇にはミラノ〜サンレモが足りなかったものの、アルカンシエルにも袖を通したクラシックハンターは今後も自転車競技の普及に尽力していく。

一方で、不運にもラストイヤーを全うできなかった選手がいる。ツール・ド・ロマンディ総合優勝やジロ、ツールで区間優勝するなどクライマーとして活躍したイルヌル・ザカリン(ロシア)だ。”下りが苦手”な天然キャラとして日本でも愛されたザカリンだが、所属するロシア籍のガスプロム・ルスヴェロがUCI(国際自転車競技連合)による活動停止処分を受け、今年3月に事実上解散。引退後は「Inex Club」というアマチュアやプロに質の高いトレーニングを提供するプラットフォームの運営に携わっている。

第14ステージの途中でレースを去ったトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)第14ステージの途中でレースを去ったトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Jumbo-Visma
イルヌール・ザッカリン(ロシア)イルヌール・ザッカリン(ロシア) photo:Makoto.AYANOパヴェでできた優勝トロフィーを掲げるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)パヴェでできた優勝トロフィーを掲げるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos

ルーベの覇者の証、パヴェのトロフィーを掲げるニキ・テルプストラ(オメガファーマ・クイックステップ)ルーベの覇者の証、パヴェのトロフィーを掲げるニキ・テルプストラ(オメガファーマ・クイックステップ) photo:Makoto.AYANO
ロード世界選手権を見据えながら8月に突然引退を決断したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)や今年3月のレース直後に倒れ不整脈のため引退したソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)、チームスカイの黄金期を支えたリッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)らも引退。また来季も契約を結んでいたB&Bホテルズ KTMの消滅によって引退を強いられたピエール・ロラン(フランス)など、かつてレースの主役を張ってきた選手たちが続々とプロトンを去っていった。

その他にも2014年パリ〜ルーベ覇者ニキ・テルプストラ(オランダ、トタルエネルジー)やユライ・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)、ミケル・ニエベ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)、元アワーレコード保持者アレックス・ドーセット(イギリス、イスラエル・プレミアテック)も引退。そして中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)も「プロフェッショナルとして最後まで全力で自分の走りを全う出来ました」と、自転車を降りた。

text:Sotaro.Arakawa