3つの超級山岳を越えるクリテリウム・デュ・ドーフィネ第7ステージで、タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)が圧巻の11.9km独走。最終山岳の麓でのアタックを決め、2日連続勝利で総合リードを広げた。



クイーンステージに臨むクスとヴィンゲゴー photo:A.S.O.

クリテリウム・デュ・ドーフィネ2025第7ステージ コースプロフィール image:A.S.O.
ツール・ド・フランスと同じA.S.O.(アモリー・スポルト・オルガニザシオン)が主催し、その前哨戦であるクリテリウム・デュ・ドーフィネもあと2日。この日は131.6kmに3つの超級山岳が詰め込まれた、獲得標高差5,000mに迫る過酷な山岳ステージが舞台となった。

クイーンステージはスタート直後から超級山岳マドレーヌ峠(距離24.6km/平均6.2%)を越え、下りを経て息を付く間もなく今度はクロワ・ド・フェール峠(距離22.4km/平均6.9%)を登坂。そして平坦路と中間スプリントを経て、最後に待ち受けるのはヴァルマニエ1800(距離16.5km/平均6.7%)だ。

この日の優勝候補の最有力は、もちろん前日に6.5kmの独走勝利を飾ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)。ライバルのヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)に1分1秒差をつけた快走が繰り返されるのかが注目されたレースは、強力なクライマーによって構成された16名がエスケープ。今季好調のXDSアスタナから逃げに乗ったセルヒオ・イギータ(コロンビア)が、1つ目の超級山岳マドレーヌ峠の頂上を先頭で通過した。

強豪クライマーを含む9名が逃げた photo:A.S.O.

2つ目のクロワ・ド・フェール峠に入ると、逃げはラストレースを走るロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL)ら9名まで絞られる。それを追うメイン集団はUAEチームエミレーツXRGから、逃げにセップ・クス(アメリカ)を送ったヴィスマ・リースアバイクに牽引がチェンジ。ヴィスマのアシストがハイテンポを刻んだため、逃げ集団が頂上を越える頃にその差は10秒まで縮まっていた。

27.8kmに及ぶ長い下りでは、逃げグループからバルデがアタック。そのまま単独先頭に立つと、プロトンに対し30秒前後のリードで逃げ続ける。25名に人数の減ったメイン集団では、ヴィンゲゴーが逃げから合流したクスを含め3名のアシスト(ジョーゲンソンとトゥレット)がいる一方、ポガチャルは下りで追いついたパヴェル・シヴァコフ(フランス、UAEチームエミレーツXRG)ただ1人。またエヴェネプールは単独での戦いを強いられるなか、ジョーゲンソンがアタックした。

下りでのアタックにエヴェネプールが反応し、クスの仕掛けはシヴァコフが引き戻す。そのシヴァコフは集団の牽引を始め、リーダージャージを着るポガチャル自らがチームカーから受け取ったボトルを手渡すシーンも。そして下りを時速93km/hの猛スピードで駆け抜けたバルデが、この日最後の超級山岳であるヴァルマニエ1800(距離16.5km/平均6.7%)に36秒のリードで突入した。

クロワ・ド・フェール峠の下りで飛び出したロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL) photo:A.S.O.

超級山岳ヴァルマニエ1800の麓で仕掛けたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

ステージ優勝で有終の美を飾ろうとしたバルデだが、デカトロンAG2Rラモンディアールが18歳の総合エースであるポール・セクサス(フランス)のために牽引するプロトンに吸収される。その直後にクスがアタックし、それを再びシヴァコフが引き戻すと、直後にポガチャルがアタック。唯一ヴィンゲゴーが反応したものの、数秒後に引き離された。

残り11.9km地点で単独先頭に立ったポガチャルは、一切ペースを落とすことなく快調に脚を回す。前日3位のフロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)は単独2番手のヴィンゲゴーに追いつくものの、すぐに引き離される。そしてハイペースで駆け上がるヴィンゲゴーを抑え、頂上に到達したポガチャルが2日連続勝利を決めた。

2日連続勝利を決めたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

今大会3つ目の勝利を飾り、総合リードを拡大したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) photo:A.S.O.

「全ての山岳で主導権を握りたかったのだが、ヴィスマがアタックを仕掛けた。それでもパヴェル(シヴァコフ)をはじめ、チームの走りには満足している。守りの走りから最後にアタックを仕掛け、頂上まで良いペースを保つことができた。このような形で総合リーダージャージを守ることができ、嬉しいよ」と、総合リードを1分1秒まで拡大したポガチャルは喜んだ。

2位ヴィンゲゴーは14秒遅れでフィニッシュ。3位には1分21秒遅れでリポヴィッツが入ったため、前日と同じトップ3になった。4位はトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)、エヴェネプールは2分39秒遅れの5位だった。

敢闘賞に輝いたロマン・バルデ(フランス、ピクニック・ポストNL) photo:A.S.O.
クリテリウム・デュ・ドーフィネ2025第7ステージ結果
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 4:10:00
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +0:14
3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +1:21
4位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +2:26
5位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +2:39
6位 ベン・トゥレット(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) +3:48
7位 エンリク・マス(スペイン、モビスター)
8位 エマヌエル・ブッフマン(ドイツ、コフィディス) +3:51
9位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
10位 ギヨーム・マルタン(フランス、グルパマFDJ)
個人総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) 25:44:58
2位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) +1:01
3位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) +2:21
4位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +4:11
5位 トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) +5:55
6位 ポール・セクサス(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアール) +6:50
7位 マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) +7:18
8位 ベン・トゥレット(イギリス、ヴィスマ・リースアバイク) +7:24
9位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ) +7:41
10位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +7:43
その他の特別賞
ポイント賞 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
山岳賞 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)
ヤングライダー賞 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)
チーム総合成績 ヴィスマ・リースアバイク
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.

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