惜しまれつつも現役を引退したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)。42歳を迎えた2022年もシーズン2勝に加え、ストラーデビアンケとラ・フレーシュ・ワロンヌを2位で表彰台に上がる衰え知らずの強さを発揮した。バルベルデのラストシーズンを振り返る。



21年の現役生活で積み上げた勝利数は133。その中には2018年のロード世界選手権や12度のブエルタ・ア・エスパーニャ、4度のツール・ド・フランス区間優勝など挙げ始めればきりがない。

グラン・カミーニョ第3ステージが現役最後の勝利となったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)グラン・カミーニョ第3ステージが現役最後の勝利となったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
現役最終年を迎えた2022年のバルベルデはシーズン序盤から好調だった。1月26日に母国スペインのワンデーレースであるトロフェオ・カルヴィアで開幕戦を迎え、3戦目のトロフェオ・ポレンサ〜アンドラッチでは24歳のブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)を相手にスプリント勝利を飾った。

そして春のクラシックを前に、スペインのステージレースであるグラン・カミーニョ(UCI.2.1)に出場したバルベルデは終盤に2級、1級、1級山岳が連続する第3ステージで勝利。これは現役最後の勝利となり、モビスター通算1,000勝目というおまけもついてきた。そして翌日の最終ステージの個人タイムトライアルでマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)を上回り、ラストイヤーにステージレースで総合優勝に輝いた。

衰え知らずの登坂力を発揮した春のクラシック

キャリア最後のストラーデビアンケを2位で終えたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)キャリア最後のストラーデビアンケを2位で終えたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
ラ・フレーシュ・ワロンヌのフィニッシュでトゥーンスと競り合うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ラ・フレーシュ・ワロンヌのフィニッシュでトゥーンスと競り合うアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVosフレーシュ・ワロンヌ2022表彰台:2位バルベルデ、1位トゥーンス、3位ウラソフフレーシュ・ワロンヌ2022表彰台:2位バルベルデ、1位トゥーンス、3位ウラソフ photo:A.S.O.

クラシックシーズンに突入しても42歳の誕生日を目前としたバルベルデの勢いは続き、ストラーデビアンケでは現役最強と名高いタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)に独走勝利こそ許したものの、落車のトラブルを跳ね除けカスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)を最後の登坂で引きちぎり、堂々の2位(37秒遅れ)に食い込んだ。

そして2006年の初制覇を皮切りに、2014年より4連覇を達成したラ・フレーシュ・ワロンヌに臨んだバルベルデ。かつての"ユイの王"による6度目の優勝はディラン・トゥーンス(ベルギー、バーレーン・ヴィクトリアス)に阻まれたものの、前回王者ジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)やアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)といったトップ選手たちすらトゥーンスの加速に遅れるなか、バルベルデは唯一食らいついた。

「過去の大会と比べても(登坂スピード)が最速だったかもしれない」とレース後に語ったバルベルデ。また「次のリエージュに向けて弾みがついた」と言うリエージュ〜バストーニュ~リエージュでも7位と好成績を収め、アルデンヌを含め長らく"独占"した現役最後のクラシックシーズンを終えた。

最後のジロ、そして母国最大のレース、ブエルタへ

リラックスしてブエルタのスタートを待つアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)リラックスしてブエルタのスタートを待つアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos
過去2度の優勝経験があるクラシカ・サンセバスティアンで引退セレモニーを受けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)過去2度の優勝経験があるクラシカ・サンセバスティアンで引退セレモニーを受けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:CorVos1年を通して多くのファンがアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)に声援を送った1年を通して多くのファンがアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)に声援を送った photo:CorVos

その後ツール・ド・フランスをスキップしてジロ・デ・イタリアを選んだバルベルデは、山岳ステージでもトップ集団に大きく遅れることなく総合11位でフィニッシュ。しかし、母国スペインで行われるブエルタ・ア・エスパーニャに向けたトレーニング中の7月2日にひき逃げ事故という不運に襲われる。幸いバルベルデに骨折など大きな怪我はなく、1日の検査入院の後に退院して無事最後のブエルタ出場が叶った。

ブエルタでは同じく現役最後のグランツールとなったヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナカザフスタン)と共に、スペイン人ファンの大声援を浴びることに。その後継者と目されるエンリク・マス(スペイン)の総合2位入賞に貢献し、自身16回目のブエルタを終えた。

最後のグランツールを走り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が胴上げをうける最後のグランツールを走り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が胴上げをうける photo:Unipublic
現役最終レースに臨むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)現役最終レースに臨むアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、アスタナ・カザフスタン) photo:CorVos
現役ラストレースとなったイル・ロンバルディアに向け、イタリアのワンデーレースで2位、4位、3位とシングルリザルトを連発したバルベルデ。ここでも同じくラストランのニバリと共に出場したイル・ロンバルディアは、先頭グループには残れなかったものの6位でフィニッシュ。

レース後、バルベルデは「未来について心躍ると同時に、この素晴らしいレベルで現役を去ることに悲しさも感じている。また、今日のレースでチームが見せた働きや、僕自身が十分に戦うことができた事実に幸福感もある。エンリク・マスと僕が最後まで戦うことができた。21年間のプロ生活だ。素晴らしい瞬間の連続だった。それをいま、噛み締め喜びたい」と語り、その長い選手キャリアに終止符を打った。

ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムで最後の雄姿を披露したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ツール・ド・フランスさいたまクリテリウムで最後の雄姿を披露したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo: Yuichiro Hosoda
text:Sotaro.Arakawa