9月18日のTT世界選手権を現役ラストレースと宣言していたトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)が、即時引退を発表。「世界選に向けた練習が思うように進まなかったため」とその理由を語っている。



突然の即時引退を発表したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)突然の即時引退を発表したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:Jumbo-Visma
「プロ自転車選手から即時引退することを決断した。約2ヶ月前に今年限りでの引退を発表した。それは自転車への愛に反して、昨年の春から自分の思うように競技生活を送れなくなったことに気がついたため。自分の人生が次のフェーズに向かっている気持ちがしたんだ」と、トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)は自身のSNSで引退する理由を説明した。

「僕にはオーストラリアの世界選手権で現役を終えるという目標があった。東京五輪を目指したように世界選手権に臨みたかった。自由を感じながら、チームのサポートを受けながら、そして内的なモチベーションを主燃料に世界選手権に挑みたかった。それが僕に自転車競技の楽しさが戻ってきた理由だった。

しかし、もう競技を続けることはできないと悟ったんだ。タンクの中身は空っぽで、脚は重く、トレーニングも思うように積めていない。世界選手権を良い感触で走るためには良いパフォーマンスが必要だからね。昨年9月の激しい落車以来、何かがポッキリと折れてしまったようだ。そのため以前の状態に戻るための行程を一度中断しなければならず、またも失望と向き合わなければならなくなった。それは(一度に対処するには)あまりにも多いもの(タスク)だった」。

トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)トム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ) (c)CorVos
2021年1月に突如「活動休止」を発表したデュムラン。しかし同年の6月にレース復帰すると、オランダTTナショナル選手権を制し、東京五輪の個人TTでは銀メダルを獲得して復活を印象づけた。そしてデュムランは今年、2017年に総合優勝を果たしたジロ・デ・イタリアに3年振りに出場。途中棄権したものの、第7ステージでは逃げに乗りチームメイトの勝利に貢献する走りを見せた。

しかし直後の6月に今年限りでの引退を発表すると、オーストラリア・ウロンゴンで行われる世界選手権個人タイムトライアル(9月18日)を現役最後のレースと宣言していた。

2022年ジロ・デ・イタリア第7ステージで勝利に貢献したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)に感謝を伝えるクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)2022年ジロ・デ・イタリア第7ステージで勝利に貢献したトム・デュムラン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)に感謝を伝えるクーン・ボウマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:RCS Sport
「自転車競技とのお別れが思うような形にはいかなかったものの、自分の選手キャリアを誇りに思う。懸命にトレーニングを積み、(プロ選手として過ごした)何年間で沢山の情熱と喜びを感じることができた。それらは決して忘れない思い出だ。

いまは他のことを楽しみ、自分が愛している人たちと時間を過ごす時。チームと僕の素晴らしい選手生活を支えてくれた全ての人に感謝した。また特に僕を支えてくれた妻に感謝を伝えたい」。


デュムランの現役最後のレースは、途中棄権した7月30日のドノスティア・サンセバスチャン・クラシコアということに。また、所属するユンボ・ヴィスマはデュムランの意向を尊重し、チームの公式サイトにデュムランの11年に渡るプロキャリアを振り返る、専用ページを公開している。

text:Sotaro.Arakawa