コンチネンタルからフラッグシップタイヤのGrandPrixシリーズに新作の"GrandPrix5000S TR"が登場した。世界選手権個人タイムトライアルとパリ~ルーベで勝利を上げた期待のチューブレスレディタイヤをテストする。



コンチネンタル GrandPrix5000S TRコンチネンタル GrandPrix5000S TR photo:So Isobe
コンチネンタルといえば四輪や二輪で高い信頼性と優れた走行性能を備えるタイヤを手掛けるドイツの総合タイヤブランド。世界中に製品が展開され、その高い信頼性には定評を得ている存在だ。

自転車においてはロードバイクやMTB、クロスバイク向けの自転車用タイヤを豊富な種類をラインアップしており、あらゆるサイクリストにコンチネンタルのタイヤを提供している。その中から今回テストを行う"GrandPrix5000S TR"はロードレース向けのハイエンドタイヤだ。

GP5000シリーズは2018年の登場当初はクリンチャーとチューブレスという展開だったが、3年目となる今、チューブレスレディのGrandPrix5000S TRもラインアップに加わる。

トレッドのサイドにはレーザーグリップを搭載トレッドのサイドにはレーザーグリップを搭載 photo:Gakuto Fujiwara
タイヤ構造を一から見直し、ケーシング設計を新たなものとした。前作の3層180TPIから、2層220TPIとすることで、ケーシングをより薄くしなやかに、そして軽量性を向上させた。同時にサイドウォール部分はもう1層加えた3層330TPIとすることで、サイドカットへの耐性を確保した。

その結果GrandPrix5000S TRは、"GP5000 TL"と比較し転がり抵抗が20%向上、サイドウォール強度が28%向上しているという。さらに700x25Cで45gの軽量化を果たし実測重量243gを実現した。

ビードフックは厚みがあり、しっかりとした構造。面が平らのためリムとの密着度が高そうだビードフックは厚みがあり、しっかりとした構造。面が平らのためリムとの密着度が高そうだ photo:Gakuto Fujiwara
タイヤコンパウンドはコンチネンタル独自の「ブラックチリコンパウンド」を採用し、グリップと転がりという相反する性能を高い次元で両立させたレーシングモデルとなっている。トレッドのサイドにはレーザーグリップが搭載され、コーナーリング時に更なるグリップ力を発揮。

フックレスリムにも対応し、より多くのホイールに対応できるようになったのも特徴だ。空気圧に関してはフックレスリムのホイールだと最大5気圧、スタンダードなチューブレスホイールは最大7.5気圧まで上げることができる。

実測値243g(カタログ値:250g)実測値243g(カタログ値:250g) photo:Gakuto Fujiwara
カラーはサイドがブラウンになっているブラック/ブラウンとブラック/ブラックサイドの2色展開。サイズ展開は650x30B、32B、700x25C、28C、30C、32Cとなっており、ブラックのみ700Cのサイズ展開のみとなる。取扱いはミズタニ自転車。



編集部インプレッション

コンチネンタル GrandPrix5000S TRをテストしていくコンチネンタル GrandPrix5000S TRをテストしていく photo:So Isobe
UCIワールドチームからの信頼が高いコンチネンタルからロードバイク用のフックレス対応チューブレスレディのレーシングタイヤ"GrandPrix5000S TR"が登場した。インプレッションを担当するのはロードレースやシクロクロスレース、トレーニング、自転車通勤でチューブレスタイヤを愛用しているCW編集部員の高木。

世界選手権の個人タイムトライアルでフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)が2連覇していることや石畳を駆けるパリ~ルーベでソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) が勝っているタイヤということもあり、どんな性能を秘めたレーシングタイヤなのかが気になっていた。

―GrandPrix5000S TRをテストしてもらいましたが、タイヤ全体の印象を教えて下さい

高木:乗ってみての第一印象はどのスピード域でもグリップを体感でき、安定性と安心感があるレーシングチューブレスレディタイヤでした。

レーザーグリップがコーナーリング性能向上に貢献しているレーザーグリップがコーナーリング性能向上に貢献している photo:So Isobe
―グリップ力がこのタイヤを印象づけているということですが、グリップについてはどの様に感じますか

高木:このタイヤに採用されているブラックチリコンパウンド自体が路面を捉えているような印象があります。ケーシングも含めてタイヤ全体の柔軟性でグリップを発揮させているというより、GrandPrix5000S TRはケーシングはしっかりしていて、コンパウンドが仕事をしているようです。

ただコンパウンドがグリップ力を発揮していると言うと、路面に対して粘着しているかのように思えますが、ブラックチリコンパウンドはそうではありません。転がりの軽さはありつつも、ゴム自体が路面の細かな凹凸に対して柔軟に変形していて、それとゴムの力がグリップ力となっているイメージがあります。

なので直線ではタイヤのグリップ力がスピード維持にネガティブな働きをすることはなく、むしろ軽やかに転がるという印象すら持ちました。コーナーでバイクを倒し、レーザーグリップの部分が路面と接すると、タイヤが更に路面に食らいつきます。ほぼスリックのような見た目ですが、レーザーグリップは思っている以上に効くような感触は得られています。

軽量化によって、転がり抵抗が更に軽くなっている軽量化によって、転がり抵抗が更に軽くなっている photo:So Isobe
―そのグリップ力、トラクション性はどのような場面で試しましたか

高木:ひび割れている路面や、アスファルトが劣化して石が露出している凸凹の路面などですね。晴れと雨のどちらでも試してみました。個人的に印象に残ったのは、斜度37%の激坂を走ったときです。

止まりそうなほど低速で、転げ落ちないような体勢で走るのですが、フロントは舵取りができるという安心感を得られるぐらいのグリップ力が伝わってきて、リアはコンパウンドが踏ん張ってくれたので、トラクションが抜けること無く走りきれました。改めてグリップ力の優秀さを感じました。

タイヤの性能で加えることがあるとすると、タイヤ自体の軽量性ですね。コーナリング後の立ち上がりでのダッシュや37%の激坂では、ダイレクトに反応して軽く転がってくれるのでスムーズに走れました。レースでタイヤに求めるものが全て備わっているタイヤだと思います。

サイドウォール強度が上がり、安定感が向上サイドウォール強度が上がり、安定感が向上 photo:So Isobe
―25Cのタイヤをテストしていますが、空気圧はどのくらいに設定すればよいでしょうか。

高木:現在の体重が61kgで、普段使用しているIRCのFOMURA PROのチューブレスレディタイヤでは6bar前後で乗っていますが、GrandPrix5000S TRは転がりの軽さと乗り心地の良さ、軽快感というところを求めて4~7.5barを試していく中で、5bar~5.5barがスイートスポットだという結論にたどり着きました。

ひと口にチューブレスレディと言ってもブランドによって適した空気圧は違うのですが、低めの空気圧でも走れるのがGrandPrixなんだなと感じました。

―ある程度低めの設定かと思います。乗り心地についてはどうでしたか。

高木:まずパリ~ルーベでコルブレッリが優勝したタイヤというのが悪路での走破性を証明していますよね。自分ではアスファルトのひび割れなどの路面の凹凸に合わせてコンパウンドが衝撃をいなしてくれているように感じられました。ケーシングがしっかりしていますが、タイヤが路面のギャップで跳ねてしまうことも無いのも特徴かなと思います。砂利道などに行かないと、不快に感じないんじゃないかなと思います。

他のブランドのタイヤと比べると硬い印象だが、ビードの上がりは抜群に良い他のブランドのタイヤと比べると硬い印象だが、ビードの上がりは抜群に良い photo:Gakuto Fujiwara
―コンチネンタルを語る上で外せないのは作業性ですが、実際に作業してみてどのような印象を受けましたか?

高木:今回はスコープのホイールに装着してみました。これまで様々なタイヤを装着してきましたが、GrandPrix5000S TRは硬めの部類に入るタイヤでした。ただタイヤ装着が上手な方であれば、最初から最後まで手で装着できると思いますが、私は最後のひと押しのところだけチューブレス用タイヤレバーを使用しました。

硬めとはいえレバーを使用してしまえば簡単に装着できましたし、作業性は問題ありません。ややタイトめに作られているおかげか、ビードが新設計になっているおかげか、ビード上げも簡単でした。

振動吸収性が優れているため、荒れた路面でも快適に走れた振動吸収性が優れているため、荒れた路面でも快適に走れた photo:So Isobe
―作業後のタイヤの気密性は保たれましたか。

高木:チューブレスレディということで、シーラントを30mlほど入れました。使用したホイールのチューブレステープは1シーズン通して使っていますし、タイヤの交換頻度も低くなかったということを踏まえてですが、タイヤを装着したばかりの時は空気の抜けが早めでした。

もちろんシーラントが馴染んできて、空気の抜けは少なくなりました。ただ、どのタイヤにも言えることですが、ライド前の空気圧チェックは毎日に行う事をお勧めします。

ざらついた路面でもタイヤが振動をいなしてくれるざらついた路面でもタイヤが振動をいなしてくれる photo:So Isobe
―どういう人にオススメしたいですか?

やはりレーサーにオススメしたいです。転がりが軽く、荒れた路面の走破性も高く、耐パンク性も優れているので、レースで必要な要素を備えています。また、エンデュランスロードを乗っている方でも、振動吸収性が良いので、疲労軽減の効果も期待できます。レースのみならず、ロングライドやカフェサイクリングをしている方まで、安心安全に走れると思うので、多くのサイクリストにコンチネンタルのハイエンドタイヤを体感してもらいたいです。



コンチネンタル Grand Prix 5000S TR
サイズ(重量):650x30B(280g)、32B(300g)、700x25C(250g)、28C(280g)、30C(300g)、32C(320g)
カラー:ブラック※700x25C、28C、30C、32Cのみ
    ブラック/ブラウン
価格:11,500円(税込)

impression:Michinari TAKAGI
photo:So Isobe、Gakuto Fujiwara

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