シーズンの中で最も盛り上がるのがツール・ド・フランスが開催される7月にかけて。ロードレースがハイシーズンを迎える6月から7月までを振り返ります。



6月

チームメイトとともにダウンヒルをこなすアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)チームメイトとともにダウンヒルをこなすアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ) photo:Tim de Waeleツール・ド・フランスの前哨戦として知られるクリテリウム・ドゥ・ドーフィネツール・ド・スイスがそれぞれフランスとスイスで開催。マイヨジョーヌを狙うオールラウンダーたちが最後のチューニングを行なった。

超級山岳マドレーヌ峠のダウンヒルをこなすクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)超級山岳マドレーヌ峠のダウンヒルをこなすクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele別府史之(トレック・セガフレード)が出場したドーフィネは、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)による山岳プロローグ勝利でスタート。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がスプリンターを振り切る劇的な逃げ切りを飾る中、大会最初の山頂フィニッシュでついに本命が動いた。

超級山岳フリュエラ峠を駆け上がるミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)超級山岳フリュエラ峠を駆け上がるミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Tim de Waeleライバルたちを置き去りにしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が首位に立つと、ティボー・ピノ(フランス、FDJ)が優勝したクイーンステージでも総合リードをキープ。3度目の総合優勝を飾り、ツールに向けて弾みをつけた。

総合優勝に輝いたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)総合優勝に輝いたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:La Route du Sud地元スイスのファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)による個人タイムトライアル勝利で始まったツール・ド・スイスには、新城幸也(ランプレ・メリダ)も出場。ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)がスプリント2連勝の活躍を見せる。山岳での戦いが始まると、ピエール・ラトゥール(フランス、AG2Rラモンディアール)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)がイエロージャージを着回す僅差の総合争いが展開。

ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が勝利した超級山岳ステージでも決定的なタイム差は生まれず、個人タイムトライアルでライバルを突き放した22歳のミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)が総合優勝を飾っている。

もう一つの前哨戦ルート・ドゥ・スッドでは、個人タイムトライアルと山岳ステージでリードを広げたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が総合優勝。

6月下旬には日本を含めた世界各国でナショナル選手権が開催され、トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)が6度目ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレック・セガフレード)が10度目のタイムトライアルナショナルチャンピオンに。ツール開幕1週間前のロードレースではジャコモ・ニッツォロ(トレック・セガフレード)やフィリップ・ジルベール(BMCレーシング)、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)らがそれぞれナショナルタイトルを獲得している。



チームスカイを先頭にメイン集団が超級山岳マドレーヌ峠を走るチームスカイを先頭にメイン集団が超級山岳マドレーヌ峠を走る photo:Tim de Waele


7月

モンサンミッシェルの上空にトリコローリが描かれるモンサンミッシェルの上空にトリコローリが描かれる photo:Kei Tsuji第103回ツール・ド・フランスはフランス北西部のマンシュでグランデパールを迎えた。「西洋の驚異」モンサンミッシェル前をスタートした第1ステージを制したのはマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)。自身初のマイヨジョーヌを手にしたカヴェンディッシュは、その後の平坦ステージでも勝利を量産。終わってみればステージ4勝の活躍で、通算勝利数を30勝の大台に乗せた。エディ・メルクスがもつ通算34勝の記録更新が現実味を帯びてきた。

両手を挙げてフィニッシュするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)両手を挙げてフィニッシュするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji大会2日目の登りスプリントで優勝したペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)はアルカンシェルの上にマイヨジョーヌを着ることに成功。やがて大会最初の山頂フィニッシュが設定された第5ステージで逃げ切り勝利を飾ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)にマイヨジョーヌは移る。2月の大腿骨骨折から復活を遂げた新城幸也(ランプレ・メリダ)は第6ステージで160km以上にわたって逃げ、自身2度目の敢闘賞に輝いている。

敢闘賞トロフィーを見せる新城幸也(ランプレ・メリダ)敢闘賞トロフィーを見せる新城幸也(ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsujiピレネー山脈に差し掛かるとマイヨジョーヌは本命による争いに。ピレネー初日の第7ステージではスティーブ・クミングス(イギリス、ディメンションデータ)が独走勝利を達成。そしてフラムルージュ(残り1kmアーチ)が崩壊して選手に直撃するという前代未聞の事態も発生し、悲劇に見舞われたアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)には救済措置が取られた。

崩壊したフラムルージュと接触して落車したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ)崩壊したフラムルージュと接触して落車したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・バイクエクスチェンジ) photo:Kei Tsuji第8ステージのフィニッシュ手前、ペイルスルド峠の下りでクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が動いた。ライバルたちの不意を突く奇襲アタックを成功させたフルームはピレネー2日目に総合首位に躍進。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ)が相次ぐ落車で後半戦を待たずしてレースを去る中、結果的にフルームはこのペイルスルド峠の下りで得たリードをパリ・シャンゼリゼまで守ることになる。

ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が逃げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が逃げる photo:Kei Tsuji猛暑から雹混じりの雷雨に見舞われたアンドラ超級山頂フィニッシュでは、TTスペシャリストのトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が逃げ切り勝利。第13ステージ個人タイムトライアルでステージ2勝目を飾ったドゥムランは将来的にグランツールレーサーへの転身が期待される。

壊れたバイクをもって走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)壊れたバイクをもって走るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:TDWsport/Kei Tsuji強風が吹きつけた第11ステージでは、平坦コースにもかかわらずマイヨジョーヌのフルームとマイヨヴェールのサガンがアタックし、スプリンターを振り切って逃げ切る特殊な展開に。フランス南部のプロヴァンスを吹き抜ける強風は翌日もおさまらず、「魔の山」モンヴァントゥーの山頂フィニッシュはコースが短縮。観客の密度が増したことも影響し、マイヨジョーヌを含む精鋭グループが前方で急停止したモーターバイクに衝突する事故が発生する。バイクが壊れたフルームはニュートラルバイクとスペアバイクが到着するまでの間、迷うことなくモンヴァントゥーのフィニッシュに向かって駆け出した。マイヨジョーヌがランニングするという光景は見るものに強烈なインパクトを残した。

独走でフィニッシュするロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)独走でフィニッシュするロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:TDWsport/Kei Tsuji救済措置によってマイヨジョーヌを守ったフルームは、ジュラ山脈を走る第15ステージでも、スイスの超級山岳にフィニッシュする第17ステージでもリードを失わず、むしろリードを広げて最終決戦へ。第18ステージの山岳タイムトライアルでフルームはTTバイクでライバルたちを圧倒した。

総合トップスリー、2位ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、1位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、3位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)総合トップスリー、2位ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)、1位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)、3位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:TDWsport/Kei Tsujiしかしマイヨジョーヌの走りが最後まで順風満帆だったとは言えず、雨のアルプス山脈を走る第19ステージでフルームは落車してタイムを失ってしまう。フルームがチームメイトのバイクを借りてフィニッシュに向かう中、独走勝利を飾ったロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)が総合2位に浮上する。フランスを沸かせて一躍時の人となったバルデは、キンタナを押さえて総合2位でシャンゼリゼへと向かった。

フルームは雨の危険な最終山岳ステージをこなし、3度目の総合優勝を達成。テロ事件の影響で例年以上にセキュリティが強化されたパリのシャンゼリゼ通りで自身3枚目のマイヨジョーヌを受け取った。

同時期開催のツール・ド・ポローニュは連日の雨によって厳しい戦いに。フェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)がスプリント2勝の活躍。クイーンステージで独走勝利して首位に立ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が、最終個人タイムトライアルでモビスターの追撃を封じて総合優勝に輝いている。

クラシカ・サンセバスティアンでは、失意のツール・ド・フランスを終えたばかりのバウク・モレマ(オランダ、トレック・セガフレード)が勝利。最終山岳通過後に全開アタックを仕掛けたモレマが独走でサンセバスティアンの街にフィニッシュした。



ライバルたちの動きを封じ込めながら超級山岳アンドラ・アルカリスを登るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ライバルたちの動きを封じ込めながら超級山岳アンドラ・アルカリスを登るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji



text:Kei Tsuji