2016/07/08(金) - 03:18
3km地点で集団から飛び出し、残り22km地点まで逃げ続けた新城幸也(ランプレ・メリダ)が自身2度目となる敢闘賞を獲得。大集団による最終スプリントで3勝目をマークしたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)がマイヨヴェールに返り咲いた。
中央山塊を背にプロトンは再び平地を目指す。ツール・ド・フランス第6ステージはピレネー突入前最後のスプリンターのチャンス。ここまでの平坦ステージは登り基調の最終ストレートで締めくくられてきたが、この日残り4.5kmからフィニッシュラインまで完全にフラットだ。
前日に今大会2度目の落車に巻き込まれ、痛めていた左親指をさらに打ってしまった新城幸也(ランプレ・メリダ)。ガーミンのボタンを押すのも苦労するほどの打撲を負い、調子もそこまで良くないと語っていた新城だったが、3km地点でヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)とともにエスケープを開始する。「朝のミーティングで自分が動いていいと指示されたので、自分から行ったら、残念ながら2人になってしまった」と振り返る新城とバルタによる逃げが始まった。
前日に引き続いてフランス中南部は真夏の暑さで、暑い太陽に照らされた内陸部の気温は33度まで上昇。晴れ渡るオーヴェルニュ地域圏からミディ=ピレネー地域圏に入り、アップダウンコースを進む新城とバルタのリードは最大で5分30秒を記録する。3級、4級、3級のカテゴリー山岳はそれぞれバルタ、新城、バルタが先頭通過した。
マイヨジョーヌを手にしたBMCレーシングが集団先頭に陣取り、やがてディメンションデータやエティックス・クイックステップ、ロット・ソウダルもローテーションに合流する。バルタが1番手、新城が2番手で通過した71km地点の中間スプリントポイントでは本格的な集団スプリントが繰り広げられ、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)を振り切ったブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が3番手通過を果たしている。
レース後半に入るとディレクトエネルジーが積極的に集団のペースを作り、逃げる2人を追い詰める。しばらく2分差が続いたものの徐々にタイム差は右肩下がりとなり、残り40km地点で早くも1分を切った。
モントーバンがツールのフィニッシュを迎え入れるのは1998年以来2回目。当時は逃げ切りが決まったものの、この日はスプリンターチームがレースを支配する。
タイム差が30秒まで縮まった残り29km地点で新城が加速したが決まらず、続いて残り26km地点のバルタのアタックも決まらない。総合系チームまで集団先頭に上がってペースを上げるメイン集団は残り22km地点で新城とバルタを飲み込んだ。
「距離を残して捕まったので、そんなに辛い走りではなかったです。脚を使いきらないまま捕まってしまった。ピレネーに向けて良いウォーミングアップになった」という新城。得意の暑い気候が味方したのか、2度の落車の影響を感じさせない走りで2012年大会第4ステージに続く敢闘賞を獲得した。
逃げを吸収したメイン集団はスピードを上げてモントーバンの街へ。ロット・ソウダルやロットNLユンボ、カチューシャ、エティックス・クイックステップがそれぞれトレインを組んでフラムルージュを駆け抜ける。
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)によるリードアウトが残り200mで終了すると、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がほぼ同時にスプリントを開始。すぐさまキッテルが先頭に立ったが、その後ろから低いポジション&高ケイデンスのカヴェンディッシュが加速した。
瞬発的な加速でキッテルに並んだカヴェンディッシュがそのまま先頭に立つ。キッテルが諦めずに対抗するも、カヴェンディッシュが先頭を譲らないままハンドルを投げてフィニッシュ。スプリント中のトップスピードは72km/hだった。ステージ3位にはニュージーランド生まれイングランド育ちのダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)が入っている。
波に乗るカヴェンディッシュは「作戦通り勝負に持ち込んだ結果だ。トラックレースに復帰したことがスプリントでのスピードにつながっている。ステージ1勝すれば成功のシーズンと言えるのに、今大会すでにステージ3勝目。この上なく嬉しいし、あと1勝できればどれだけ素晴らしいことか」と語る。第1ステージと第3ステージに続く勝利でハットトリックを達成したカヴェンディッシュはポイント賞ランキング首位に返り咲いたものの「マイヨヴェール争いでペーター・サガンに敵う選手はいない。彼は違うレベルにいる」とコメントしている。ステージ通算勝利数は29に伸びた。
総合上位陣は4秒遅れの同タイムでフィニッシュし、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がマイヨジョーヌをキープ。第6ステージを終えた時点で出走者全員(198名)がレースに残っているのはツール史上初めて。
ツール・ド・フランス2016第6ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
3位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
7位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
10位 シェーン・アークボルド(ニュージーランド、ボーラ・アルゴン18)
132位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +04”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 30h18’38”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +5’11”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +5’13”
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5’14”
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +5’17”
6位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 204pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 182pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 175pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 13pts
2位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 11pts
3位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 5pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)30h23’49”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 91h08’23”
2位 チームスカイ +3’36”
3位 モビスター +4’12”
ステージ敢闘賞
新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Montauban, France
中央山塊を背にプロトンは再び平地を目指す。ツール・ド・フランス第6ステージはピレネー突入前最後のスプリンターのチャンス。ここまでの平坦ステージは登り基調の最終ストレートで締めくくられてきたが、この日残り4.5kmからフィニッシュラインまで完全にフラットだ。
前日に今大会2度目の落車に巻き込まれ、痛めていた左親指をさらに打ってしまった新城幸也(ランプレ・メリダ)。ガーミンのボタンを押すのも苦労するほどの打撲を負い、調子もそこまで良くないと語っていた新城だったが、3km地点でヤン・バルタ(チェコ、ボーラ・アルゴン18)とともにエスケープを開始する。「朝のミーティングで自分が動いていいと指示されたので、自分から行ったら、残念ながら2人になってしまった」と振り返る新城とバルタによる逃げが始まった。
前日に引き続いてフランス中南部は真夏の暑さで、暑い太陽に照らされた内陸部の気温は33度まで上昇。晴れ渡るオーヴェルニュ地域圏からミディ=ピレネー地域圏に入り、アップダウンコースを進む新城とバルタのリードは最大で5分30秒を記録する。3級、4級、3級のカテゴリー山岳はそれぞれバルタ、新城、バルタが先頭通過した。
マイヨジョーヌを手にしたBMCレーシングが集団先頭に陣取り、やがてディメンションデータやエティックス・クイックステップ、ロット・ソウダルもローテーションに合流する。バルタが1番手、新城が2番手で通過した71km地点の中間スプリントポイントでは本格的な集団スプリントが繰り広げられ、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・バイクエクスチェンジ)を振り切ったブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)が3番手通過を果たしている。
レース後半に入るとディレクトエネルジーが積極的に集団のペースを作り、逃げる2人を追い詰める。しばらく2分差が続いたものの徐々にタイム差は右肩下がりとなり、残り40km地点で早くも1分を切った。
モントーバンがツールのフィニッシュを迎え入れるのは1998年以来2回目。当時は逃げ切りが決まったものの、この日はスプリンターチームがレースを支配する。
タイム差が30秒まで縮まった残り29km地点で新城が加速したが決まらず、続いて残り26km地点のバルタのアタックも決まらない。総合系チームまで集団先頭に上がってペースを上げるメイン集団は残り22km地点で新城とバルタを飲み込んだ。
「距離を残して捕まったので、そんなに辛い走りではなかったです。脚を使いきらないまま捕まってしまった。ピレネーに向けて良いウォーミングアップになった」という新城。得意の暑い気候が味方したのか、2度の落車の影響を感じさせない走りで2012年大会第4ステージに続く敢闘賞を獲得した。
逃げを吸収したメイン集団はスピードを上げてモントーバンの街へ。ロット・ソウダルやロットNLユンボ、カチューシャ、エティックス・クイックステップがそれぞれトレインを組んでフラムルージュを駆け抜ける。
マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、エティックス・クイックステップ)によるリードアウトが残り200mで終了すると、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)とマルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)がほぼ同時にスプリントを開始。すぐさまキッテルが先頭に立ったが、その後ろから低いポジション&高ケイデンスのカヴェンディッシュが加速した。
瞬発的な加速でキッテルに並んだカヴェンディッシュがそのまま先頭に立つ。キッテルが諦めずに対抗するも、カヴェンディッシュが先頭を譲らないままハンドルを投げてフィニッシュ。スプリント中のトップスピードは72km/hだった。ステージ3位にはニュージーランド生まれイングランド育ちのダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)が入っている。
波に乗るカヴェンディッシュは「作戦通り勝負に持ち込んだ結果だ。トラックレースに復帰したことがスプリントでのスピードにつながっている。ステージ1勝すれば成功のシーズンと言えるのに、今大会すでにステージ3勝目。この上なく嬉しいし、あと1勝できればどれだけ素晴らしいことか」と語る。第1ステージと第3ステージに続く勝利でハットトリックを達成したカヴェンディッシュはポイント賞ランキング首位に返り咲いたものの「マイヨヴェール争いでペーター・サガンに敵う選手はいない。彼は違うレベルにいる」とコメントしている。ステージ通算勝利数は29に伸びた。
総合上位陣は4秒遅れの同タイムでフィニッシュし、グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がマイヨジョーヌをキープ。第6ステージを終えた時点で出走者全員(198名)がレースに残っているのはツール史上初めて。
ツール・ド・フランス2016第6ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ)
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
3位 ダニエル・マクレー(イギリス、フォルトゥネオ・ヴァイタルコンセプト)
4位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
5位 クリストフ・ラポルト(フランス、コフィディス)
6位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ)
7位 ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、ロットNLユンボ)
8位 エドワード・テウンス(ベルギー、トレック・セガフレード)
9位 ブライアン・コカール(フランス、ディレクトエネルジー)
10位 シェーン・アークボルド(ニュージーランド、ボーラ・アルゴン18)
132位 新城幸也(日本、ランプレ・メリダ) +04”
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 30h18’38”
2位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ) +5’11”
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) +5’13”
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) +5’14”
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) +5’17”
6位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
8位 ピエール・ロラン(フランス、キャノンデール・ドラパック)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ダニエル・マーティン(アイルランド、エティックス・クイックステップ)
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、ディメンションデータ) 204pts
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、エティックス・クイックステップ) 182pts
3位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ) 175pts
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) 13pts
2位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) 11pts
3位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレック・セガフレード) 5pts
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、エティックス・クイックステップ)30h23’49”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン) +06”
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)
チーム総合成績
1位 BMCレーシング 91h08’23”
2位 チームスカイ +3’36”
3位 モビスター +4’12”
ステージ敢闘賞
新城幸也(日本、ランプレ・メリダ)
リタイア
なし
text&photo:Kei Tsuji in Montauban, France
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