合計4回に分けてお送りした海外ロードレースを振り返るシリーズの最終回は、8月から10月までをプレイバック。ブエルタ・ア・エスパーニャやロード世界選手権に沸いたシーズン後半の模様をお届けします。



8月

メイン集団の先頭を固めるジェリーベリーとBMCレーシングメイン集団の先頭を固めるジェリーベリーとBMCレーシング photo:Tim de Waele

2級山岳ボルダコ・トントーラで飛び出したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)2級山岳ボルダコ・トントーラで飛び出したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waeleツール・ド・フランスの余韻が冷めやらぬ中、8月1日にスペインのバスク地方でクラシカ・サンセバスティアンが開催。勝負どころで飛び出したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)がモトと接触して落車するというトラブルが起きる中、22歳のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)が単独逃げ切り勝利を飾っている。

アムステルゴールドレースにも登場するグルペルベルグを通過アムステルゴールドレースにも登場するグルペルベルグを通過 photo:Tim de Waeleマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)の今シーズン初勝利でスタートしたポーランドのツール・ド・ポローニュは連日総合リーダーが入れ替わる混戦に。第5ステージで優勝したバルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)と、最難関第6ステージ優勝のセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)がそれぞれ首位に立ったが、最終個人タイムトライアルで好タイムを出したヨン・イサギーレ(スペイン、モビスター)が最終的に総合優勝を飾っている。

リーダージャージを着て走るローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを着て走るローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleベルギーとオランダを舞台にしたエネコ・ツアーはヴィヴィアーニ、グライペル、ボーネンといったスプリンターが前半ステージで活躍。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュさながらのアップダウンコースで独走勝利したティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ソウダル)が大会連覇を成し遂げた。

アメリカのUSAプロチャレンジはBMCレーシングの独壇場に。大怪我から復活したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)が初日の集団スプリントで優勝すると、その後も総合争いで一歩リード。第4ステージで独走勝利するとともに翌日の個人タイムトライアルも制したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が総合優勝に輝いている。

ドイツ最大のワンデークラシックであるヴァッテンフォール・サイクラシックスではアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)が自身初の優勝。別府史之(トレックファクトリーレーシング)が序盤から逃げに加わったGPウエストフランス・プルエーはアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)のスプリント勝利で締めくくられている。



9月

巨大な牛の看板がプロトンを出迎える巨大な牛の看板がプロトンを出迎える photo:Tim de Waele

ステージ優勝を飾ったBMCレーシングステージ優勝を飾ったBMCレーシング photo:Tim de Waele開幕チームタイムトライアルがコース上の砂によって総合ニュートラル扱いになるという、”らしい”スタートを切ったブエルタ・ア・エスパーニャ。集団復帰の際にチームカーに掴まったとしてヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が第2ステージで失格処分を受けるという波乱の幕開けとなる。

フルームをスプリントで引き離すトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)フルームをスプリントで引き離すトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waeleペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が世界選手権に向けて勢いづくスプリント勝利を飾り、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が登りスプリントで勝利、そして21歳のカレイブ・イワン(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がグランツール初勝利を飾る中、25歳のエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)が山岳ステージで2勝を飾ってマイヨロホを着用する。

第12ステージを走る新城幸也(ユーロップカー)第12ステージを走る新城幸也(ユーロップカー) photo:Tim de Waele急勾配の山頂フィニッシュが設定された第9ステージで並み居るクライマーたちを退けたトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)の勝利が前半戦最大のトピック&サプライズ。TTスペシャリストのドゥムランは粘りの走りで最終的な総合争いに絡むことになる。

ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がフィニッシュに向けて独走するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がフィニッシュに向けて独走する photo:CorVosアンドラを走るクイーンステージの第11ステージでアスタナの山岳力が爆発し、ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)がステージ優勝するとともにファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が首位に躍進。一方でクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)は落車し、フィニッシュまでたどり着いたものの足の舟状骨の骨折によって翌日DNS。ブエルタ初出場の新城幸也(ユーロップカー)は第13ステージで逃げに乗り、自身のステージ勝利ではなくチームメイトの総合順位アップに大きく貢献した。

ルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)と共にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がフィニッシュルイスレオン・サンチェス(スペイン、アスタナ)と共にファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がフィニッシュ photo:CorVosブエルタ最大の山場である難関山岳3連戦でマイヨロホ争いは加熱する。濃霧のアルト・カンポにフィニッシュする第14ステージでアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、BMCレーシング)が勝利し、前半不調だったナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が息を吹き返して攻撃開始。続く第15ステージで勝利したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が総合首位アルに1秒差にまで迫ると、フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)が久々の勝利を飾った超級山岳アルト・エルミタ・デ・アルバの激坂フィニッシュで再びアタック。ロドリゲスが1秒差でアルからマイヨロホを奪い取った。

集団スプリントで競り合う梶原悠未(筑波大学附属坂戸高校)集団スプリントで競り合う梶原悠未(筑波大学附属坂戸高校) photo:Kei Tsuji第16ステージを終えた時点でドゥムランは首位ロドリゲスから1分51秒遅れ。粘りの走りでタイムロスを押さえ込んでいたドゥムランは、38.7kmの個人タイムトライアルで一気に逆転してみせる。ライバルたちからタイムを奪ったドゥムランは、その後の石畳の登りでさらにリードを広げ、総合2位アルから6秒リードで最終決戦へ。

独走でフィニッシュに飛び込むペーター・サガン(スロバキア)独走でフィニッシュに飛び込むペーター・サガン(スロバキア) photo:Kei Tsujiしかし1級山岳を4つ越える第20ステージでアスタナが総攻撃するとついにドゥムランが失速する。アタックを成功させたアルがマイヨロホを獲得し、自身初のグランツール総合優勝を果たした。

イギリス最大のステージレースであるツアー・オブ・ブリテンでは、クイーンステージ2位のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)が総合優勝。エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)がステージ3勝の活躍を見せ、スタジエール(研修生)として走る21歳のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)もスプリント1勝で存在感を示した。

アメリカ・リッチモンドで開催されたロード世界選手権は、BMCレーシングによるチームタイムトライアル連覇でスタート。ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)がエリート男子タイムトライアルの世界チャンピオンに輝く。

ジュニア女子個人タイムトライアルで11位だった梶原悠未(筑波大学附属坂戸高校)はジュニア女子ロードレースで集団スプリントの先頭でフィニッシュ。日本人史上最高位の4位という成績を残している。

エリート男子ロードレースは、最終周回の登りでアタックを成功させたペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)の独走劇に。サガンが初の世界タイトルを手にしたその後ろで、新城幸也(ユーロップカー)が17位でフィニッシュした。



10月

プロトンが砂漠の丘を越えていくプロトンが砂漠の丘を越えていく photo:Tim de Waele
独走でフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)独走でフィニッシュするヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleトレ・ヴァッリ・ヴァレジーネで好調ぶりを見せたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は、「落ち葉のクラシック」と呼ばれるイタリア最終戦イル・ロンバルディアで再びアタック。ダウンヒル能力を遺憾なく発揮した「メッシーナの鮫」ことニーバリがシーズン最後のUCIワールドツアーレースで勝利した。

中東第4のレースとして初開催されたアブダビツアーは、連日50度に迫る暑さによって過酷な戦いに。第2ステージで落車リタイアしたトム・ボーネン(ベルギー、エティックス・クイックステップ)は脳震盪と側頭骨骨折。現在ボーネンは来シーズンに向けてトレーニングを開始しているが、聴覚の一部は今後も戻らないという診断を受けている。

難関山岳ステージで優勝し、初代アブダビツアー王者を飾ったのはブエルタでも活躍したチャベス。世界チャンピオンのサガンはアルカンシェルを着てのステージ優勝を逃した。




text:Kei Tsuji

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