ジャパンカップからツール・ド・フランスさいたまクリテリウムに沸いた10月後半。チームスカイは二組に分かれて日本を駆け抜け、ファンとの交流を楽しんだ。2週間連続したチームスカイの日本滞在を振り返ります。



ジャガーのFタイプクーペとチームスカイの選手たちジャガーのFタイプクーペとチームスカイの選手たち photo:Kei Tsuji
エスプレッソを入れ続けるベルンハルト・アイゼル(※常駐ではありません)エスプレッソを入れ続けるベルンハルト・アイゼル(※常駐ではありません) photo:Kei Tsujiチームスカイinスカイツリーチームスカイinスカイツリー photo:Kei Tsuji


東京スカイツリーから景色を眺めるセルファイス・クナーフェン監督東京スカイツリーから景色を眺めるセルファイス・クナーフェン監督 photo:Kei Tsujiジャパンカップを週末に控えた10月15日(木)朝、前日に到着したばかりで時差ぼけに苦しむ選手たちが目をこすりながらヒルトン東京のロビーに降りてきた。

ソラカラちゃんとチームスカイソラカラちゃんとチームスカイ photo:Kei Tsuji今年はジャパンカップ直後にロンドンでチームミーティングが開かれるため、レース開催前に観光やスポンサーイベントなどのスケジュールが詰め込まれた。

ポール・スミススペースで行われたジャガー・ランドローバー・ジャパン主催のパーティーポール・スミススペースで行われたジャガー・ランドローバー・ジャパン主催のパーティー photo:Kei Tsujiジャパンカップのメンバーは3年連続出場となる“バーニー”ことベルンハルト・アイゼルと、ベン・スウィフト、セバスティアン・エナオゴメス、タオ・ゲオゲガンハートの4人。指揮をとるのはパリ〜ルーベで優勝経験のあるセルファイス・クナーフェン監督だ。なお、チーム内で人気のジャパンカップ参戦はいつも争奪戦になるそう。初年度のアルヴェセン監督と2年目のラッシュ監督に続いてクナーフェン監督が念願の来日を果たした。

ジャガーについて語るセルファイス・クナーフェン監督ジャガーについて語るセルファイス・クナーフェン監督 photo:Kei Tsujiジャガー・ランドローバー・ジャパンから貸与されたレンジローバーやディスカバリーなど3台に分乗して最初に向かった先は渋谷の住宅展示場「TBSハウジング渋谷 東京ホームズコレクション」。ラファの移動式店舗「モバイルサイクルクラブ」のプレス向け発表会に顔を出し、アイゼルが新米バリスタとしてエスプレッソを提供したことは事前にお伝えした通り。

ジャパンカップのコース試走に出かけるベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)らジャパンカップのコース試走に出かけるベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)ら photo:Kei Tsuji「最近は美味しいコーヒーを飲める街が増えている。バーニーのコーヒーはなかなか美味しい(笑)」とスウィフト。多くの自転車選手にとって欠かせない存在となっているコーヒーに舌鼓を打った。

発表会後は東京観光へ。時差ぼけで体調がすぐれない選手たちは参加しなかったが、クナーフェン監督やチームスタッフたちは元気に東京スカイツリーに向かい、当日チケットの購入を根気強く40分待ち、エレベーターの速さとスムーズさに目を丸くし、眼下に果てしなく広がる東京の街を眺める。「見るもの見るものすべてが新鮮で興味深い。選手時代から続く旅を楽しめないとこの仕事は難しい」とクナーフェン監督。エレベーターで地上に戻ると、コールドストーンクリーマリーのアイスパフォーマンスにおじさんたち(失礼)のテンションは上がった。

夕方からはジャガー・ランドローバー・ジャパン主催のパーティーに出席。会場のポール・スミススペースの前にはチームスカイのラッピングが施された「Fタイプクーペ」が登場し、パーティーに関係のない通行人も足を止めて写真を撮っていた。

普段からジャガー「XF」のチームカーを運転するクナーフェン監督は「パワーがあって運転しやすく、プロトンの中で最高のチームカー」だと太鼓判を押す。「オランダの自宅から遠征する際にもストレスが少ない。チーム側から様々なフィードバックを行っており、ジャガーの車両開発に貢献できていることを光栄に思うよ」。

時差ぼけや疲れを感じさせずにファンとの交流を楽しんだ選手たちは、翌日の宇都宮入りに備えて早めにホテルへ。今シーズン限りでチームスカイを離れ、ディメンションデータ(現MTNキュベカ)に移籍するアイゼルは「日本のファンはいつでも暖かく迎えてくれる。例えばオーストラリアのレースに行っても知らん顔される。お世辞ではなく、日本人はシャイだとか言われるけど全然そんなことない」とファンに感謝する。「我が家のような意識のチームを離れるのは残念だけど、来年またカヴェンディッシュと一緒に走るのは楽しみだ」。

レースでの活躍はレポート等をご覧になっていただくとして、レース後、自主的にラファブースに立ち寄ってファンと交流する姿はプロフェッショナル。慌ただしくスケジュールをこなした選手たちはレース翌日の10月19日(月)朝5時に宇都宮を出発。「来年もジャパンカップに参戦するようチームにプッシュしておくよ」とクナーフェン監督は言い残し、羽田空港からロンドンに向かった。



ジャパンカップのチームプレゼンテーションに登場したチームスカイジャパンカップのチームプレゼンテーションに登場したチームスカイ photo:Kei Tsuji
クリテリウム終了後にラファブースで突然始まったサイン会クリテリウム終了後にラファブースで突然始まったサイン会 photo:Rapha Japanジャパンカップ終了後も気さくにファンと交流する選手たちジャパンカップ終了後も気さくにファンと交流する選手たち photo:Rapha Japan
宇都宮市の森林公園を走るチームスカイ宇都宮市の森林公園を走るチームスカイ photo:Kei Tsuji


矢を射るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)矢を射るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsujiジャパンカップの興奮も冷めやらぬまま翌週にはツール・ド・フランスさいたまクリテリウムが開催。メンバーはがらりと変わり、クリス・フルーム、ワウト・ポエルス、アンドリュー・フェン、イアン・ボズウェルの4人。ちなみに来日した全ての海外選手の中でフルームのバイクが最も厳重に梱包されていた。

厳重に梱包されたチームスカイのピナレロ厳重に梱包されたチームスカイのピナレロ photo:Kei Tsuji監督やスタッフは帯同しないため、ジャパンカップよりもプライベート感が強く、選手たちのリラックス度も高い。レース後の動きは選手それぞれで、12月に第一子が生まれるフルームらはレース後すぐに帰国したが、1年前にジャパンカップで来日した際にすっかり日本好きになったボズウェルは日本でつかの間の休暇を楽しんだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャで山岳アシストを務めるとともに、最難関クイーンステージで3位に入った24歳の新鋭クライマーは、2017年までの2年契約をチームスカイと済ませている。「徐々にステップアップしたい。今年はブエルタに出場して、来年はジロに出場する予定。そして再来年はツールという流れが理想的」とボズウェル。現在はフランス・ニースで1年のほとんどを過ごし、今年のツアー・オブ・カリフォルニア(総合7位)で久々に帰国した程度。フランス3年目の今は流暢にフランス語を操る。



京都東山を走るイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)京都東山を走るイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji嵐山の竹林を訪れるイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)嵐山の竹林を訪れるイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji鴨川でカフェ休憩するイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)鴨川でカフェ休憩するイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji


遠征時に慣れない食生活を敬遠する選手もいる中、ボズウェルは「現地の人が普段食べているものを食べたい」と何でもトライする。その姿勢は食事だけにとどまらず、何でも試してみたくなる好奇心の塊。世界中を旅する選手にとって必須条件とも言えるその土地への高い順応性を見せる。「お腹が痛いから帰れないとかチームに説明して帰国を伸ばそうかな、お腹は強いけど」と笑う。

胃腸の強さには自信があるようで、「例えば今年マレーシアのツール・ド・ランカウイに出場した際も、他のメンバーがお腹を壊したけど自分は全く問題なかった」という。なお、あまりにも体調不良の選手とスタッフが続出したため、チームスカイは来年以降ランカウイに出場しない見通しだ。



道頓堀とイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)道頓堀とイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei TsujiRCCメンバーと大阪をライドするイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)RCCメンバーと大阪をライドするイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji大阪のRCCメンバーと記念写真大阪のRCCメンバーと記念写真 photo:Kei Tsuji


東京と大阪&京都で2〜3日間ずつ過ごしたボズウェルは、それぞれのラファサイクルクラブに出向いてファンサービスを行った。さらにRCC(ラファ・サイクリングクラブ)メンバーと東京と大阪でライドを行い、休暇中ではあるもののファンと積極的に交流。なお、ライドはサービス精神旺盛なボズウェル自身がアタックやスプリントに反応してくれるおまけ付きだった。さすがに速かった。

名残惜しそうに日本を離れたボズウェルは一旦ニースに帰宅し、すぐにスペイン・マヨルカ島で行われるチームキャンプに合流。短い休暇を終えて2016年シーズンに向けて動き出す。なお、オフシーズンに日本でトレーニングキャンプする構想もあると言い、冬でも比較的温暖な沖縄のライド環境を熱心に聞いていたのはここだけの話。その際は暖かく迎えてあげてください。



さいたまクリテリウムに出場したイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ)さいたまクリテリウムに出場したイアン・ボズウェル(アメリカ、チームスカイ) photo:Kei Tsuji



text:Kei Tsuji