8月の中級ステージレースが終わると話題はグランツール最終戦ブエルタ・ア・エスパーニャに。同じくスペインで開催されたロード世界選手権や伝統のクラシックを最後にシーズンは締めくくられた。2014年8月から10月までを振り返ります。



8月

グルペルベルグを登るプロトングルペルベルグを登るプロトン photo:Tim de Waele

下りで独走に持ち込んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)下りで独走に持ち込んだアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele盛夏のスペイン・バスク地方を舞台にしたクラシカ・サンセバスティアンはコースの難易度がアップ。1週間前に閉幕したツール・ド・フランスで総合表彰台を逃したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が独走で勝利した。

独走でフィニッシュするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)独走でフィニッシュするラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele別府史之(トレックファクトリーレーシング)も出場したポーランドのツール・ド・ポローニュでは、第2ステージで独走勝利を飾ったペトル・ヴァコッチ(チェコ、オメガファーマ・クイックステップ)が総合首位を快走。しかし山頂フィニッシュが設定された第5ステージ第6ステージで連勝したラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)が逆転で総合首位に立ち、8秒差で母国ポーランド最大のレースを制した。

ピショとジャネソンを振り切るティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)ピショとジャネソンを振り切るティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル) photo:Tim de Waeleオランダとベルギーの二カ国を跨ぐエネコ・ツアーで有利にレースを進めたのは第3ステージ個人TTを制したトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・シマノ)だった。しかし「アルデンヌクラシック」さながらのアップダウンコースが設定された第6ステージで独走勝利を飾ったティム・ウェレンス(ベルギー、ロット・ベリソル)が首位奪取。ウェレンスが初の大会制覇を果たしている。

ドイツ最大のワンデーレースであるヴァッテンフォール・サイクラシックスは集団スプリントの末にアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が勝利。

新城幸也と別府史之が顔を揃えたGPウエストフランス・プルエーではシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)が初勝利を飾る。

ツアー・オブ・カリフォルニアと並ぶアメリカ最高峰のステージレースUSAプロチャレンジでは、山岳ステージと個人タイムトライアルを制したティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)が大会連覇を果たした。



9月

オブラドリオ広場にフィニッシュしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)オブラドリオ広場にフィニッシュしたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Unipublic

トップタイムで優勝したモビスタートップタイムで優勝したモビスター photo:Tim de Waeleグランツール最終戦ブエルタ・ア・エスパーニャはイベリア半島南端のアンダルシア地方で開幕。ツールで苦い思いを経験したオールラウンダーが集結し、例年以上にハイレベルな闘いが繰り広げられることになる。

残り4kmで攻撃を仕掛けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)残り4kmで攻撃を仕掛けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele有利にレースを進めたのは初日のチームTTを制したモビスターで、大会最初の山頂フィニッシュでライバルを蹴散らしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン)がマイヨロホを獲得し、雨の1級山頂フィニッシュでナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が総合首位浮上。

総合表彰台に登るブエルタ総合トップスリー総合表彰台に登るブエルタ総合トップスリー photo:Unipublicしかし第10ステージ個人TTで落車したキンタナからアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がマイヨロホを奪う。コンタドールはその後も安定した走りを見せ、クイーンステージの1級山岳ラ・ファラポーナ山頂フィニッシュに続いて超級山岳アンカレス山頂フィニッシュで勝利。クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)らの攻撃を押さえ込み、3度目の総合優勝を果たした。

登りスプリントで圧勝したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)登りスプリントで圧勝したサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:gpcqm.ca平坦ステージではジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)とナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)らがスプリントを繰り広げ、それぞれステージ4勝と2勝をマーク。ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)が山岳ステージで2勝を飾り、10連続グランツール出場中のアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が独走で初勝利を飾るなどして盛り上がった。

最終周回の「ミラドール」を先頭で駆け上がるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)最終周回の「ミラドール」を先頭で駆け上がるミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド) photo:Tim de WaeleカナダのUCIワールドツアーレースグランプリ・シクリスト・ド・ケベックグランプリ・シクリスト・ド・モンレアルの連戦ではサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がロード世界選手権に向けて好調ぶりをアピール。初戦ケベックでは新城幸也(ユーロップカー)が終盤まで逃げに乗る活躍。ゲランスは両レースで圧倒的な登りスプリント力を披露し、史上初のケベック&モンレアル連勝を果たした。

イギリス最大のステージレースであるツアー・オブ・ブリテンではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)とマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)がスプリントで激突。連日逃げ切りが決まったことで総合争いは混沌とし、最終日のロンドンタイムトライアルで優勝したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)をかわして、ディラン・ファンバールレ(オランダ、ガーミン・シャープ)が金星を飾った。

スペインのポンフェラーダで開催されたロード世界選手権は、BMCレーシングのチームタイムトライアル制覇で幕明ける。エリート女子タイムトライアルで與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)が14位、萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)が18位と好走。エリート男子タイムトライアルではウィギンズがトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)の連覇を阻止した。

最終日のエリート男子ロードレース当日は雨。日本勢が苦戦を強いられる中、残り7kmでメイン集団を飛び立ったミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド)が登りで築いた10秒のリードをフィニッシュラインまで連れていった。日本人最高位は清水都貴(ブリヂストンアンカー)の94位。



10月

ロンバルディア地方北部の山岳地帯を行くロンバルディア地方北部の山岳地帯を行く photo:Tim de Waele

後続を振り切ってフィニッシュするダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)後続を振り切ってフィニッシュするダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele10月に入るとシーズンも終盤。パリ〜トゥールではUCIプロコンチーム所属のイェーレ・ワレイス(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)が金星。イル・ロンバルディアではダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が残り500mからアタックを成功させて独走フィニッシュ。不運続きだったシーズンの最後に輝きを見せる。

冷静にスパートのタイミングを見極めたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が優勝冷静にスパートのタイミングを見極めたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が優勝 photo:www.tourofbeijing.net今年が最後の開催となったツアー・オブ・北京は、大気汚染の悪化によってコースが短縮されるというハプニングも。第2ステージの登りフィニッシュを制したフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が、クイーンステージで勝利したマーティンを3秒差で下して総合優勝。第4代北京覇者に輝いた。

2014年シーズンのトピックとして、アワーレコードの注目度が上がったことが上げられる。今シーズン限りで現役を引退するイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)がキャリアの最後にアワーレコードに挑み、51.115kmの新記録を樹立。さらにその後マティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)が挑み、フォイクトの記録を742m更新した。2015年はブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)やトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)をはじめ、多くのTTスペシャリストが挑戦を表明しており、ますますアワーレコードの注目度が上がりそうだ。

アワーレコードに挑戦したイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)アワーレコードに挑戦したイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング) photo:Ulf Schiller/Trek Factory Racing




text:Kei Tsuji