10月30日、スイス・エーグルの200mトラックで新たなアワーレコードが生まれた。IAMサイクリングに所属するマティアス・ブランドル(オーストリア)が、先月フォイクトが樹立した新記録を塗り替えた。



ベロドロームを試走するマティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)ベロドロームを試走するマティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング) image:www.iamcycling.ch


ブランドルが使用したスコット・プラズマ5(当日は前後ともにディスクホイール)ブランドルが使用したスコット・プラズマ5(当日は前後ともにディスクホイール) image:www.iamcycling.ch24歳のブランドルが1時間で駆け抜けた距離は51.852km。これは9月18日にイェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)が樹立した51.110kmの記録を742mも塗り替える新記録だ。

アワーレコードに挑むマティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング)アワーレコードに挑むマティアス・ブランドル(オーストリア、IAMサイクリング) image:www.iamcycling.ch前後ディスクホイールを装着した改良版スコット・プラズマ5(ギアは55x13)に乗ったブランドルはUCI(国際自転車競技連合)のワールドサイクリングセンターにある200mトラックを259周強。前半からフォイクトのタイムを塗り替えるハイペースを刻み、後半苦しみながらも最終的にフォイクトの記録を742m伸ばした。

「子どもの頃から理想の選手だったイェンス・フォイクトの挑戦を見て、自分も最大限努力して、このプロジェクトに100%打ち込むことに決めたんだ。例え結果を伴わなくても、どんな状況でもアタックを繰り返す彼のスタイルが自分の理想だった。彼の夢がいつしか自分の夢にもなった。彼のアワーレコード更新で使命感を得たんだ」とブランドルは振り返る。

「最初の数分間はペースを作ることに必死だった。でも徐々に状況は複雑になったんだ。30分から50分にかけてが最も厳しい時間帯で、『どうしてこんな挑戦をしようと思ったんだ?』と自問したよ。集まった多くの観衆に後押しされているという精神的な支えのおかげで最後の10分間を乗り切ることが出来た」。

ブランドルはジェオックスやネットアップを経て2013年からIAMサイクリングに所属する24歳。TTスペシャリストとしてこれまでオーストリアのTTチャンピオンに3度輝いており、今年ツアー・オブ・ブリテンではステージ2勝を飾った。なお、ブランドルのエージェントを務めるのは1994年に55.291kmのアワーレコード(ベストヒューマンエフォート)を記録したトニー・ロミンゲルだ。

記録を破られたフォイクトは自身のTwitterで「マティアスには脱帽だ。素晴らしいパフォーマンスだった。彼の新しいアワーレコードを祝福したい。若い選手たちの挑戦を嬉しく思う」とコメントしている。UCIのルール変更後、立て続けに更新されたアワーレコード。今後もTTスペシャリストたちが挙ってアワーレコードに挑戦するだろう。

選手コメントはIAMサイクリングならびにUCI公式サイトより。






text:Kei Tsuji