クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)の攻撃に唯一反応したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が、1級山岳ラ・ファラポーナの頂上まで1kmを切ったところでアタック。マイヨロホを着る「エル・ピストレロ」が首位を固める5ヶ月ぶりの勝利を飾った。



アストゥリアス州の山岳地帯を進むプロトンアストゥリアス州の山岳地帯を進むプロトン photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第16ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第16ステージ image:Unipublic2回目の休息日を前にした第16ステージは、今年のクイーンステージ、つまり最難関山岳ステージ。全長160.5kmのコースに1級山岳が4つと2級山岳が1つ詰め込まれている。立て続けに1級山岳コリャドナ(全長7.4km/平均6.7%/最大11.7%)、1級山岳コベルトリア(全長10km/平均8.8%/最大16%)、1級山岳サンロレンソ(全長10.1km/平均8.5%/最大13%)が登場する。

レース序盤から逃げグループを形成したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)らレース序盤から逃げグループを形成したローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)ら photo:Unipublic最後は1級山岳ラ・ファラポーナ(全長16.5km/平均6.2%/最大12.5%)を駆け上がってフィニッシュを迎える。一日の獲得標高差は今大会最大となる4500m。

失格処分を受けたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)がイワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ・ティンコフ・サクソ)に話しかける失格処分を受けたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)がイワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ・ティンコフ・サクソ)に話しかける photo:Tim de Waele開始直後、ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)のアタックを切っ掛けに逃げグループが形成される。ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)やダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ロメン・シカール(フランス、ユーロップカー)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)、ローレンス・テンダム(オランダ、ベルキン)、ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)が逃げにジョインし、合計12名で先行を開始した。

最初の1級山岳コリャドナでティンコフ・サクソがペースを上げ、コンタドール、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)という三強が先行するシーンも。ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がここに乗り遅れたため、カチューシャが猛烈な勢いで集団を率いて吸収。三強が引き戻されると、先頭12名とのタイム差が徐々に広がり始めた。

逃げグループは最大8分のリードを得て最大勾配16%の1級山岳コベルトリアをクリア。山岳ポイントを連取したLLサンチェスが山岳賞ランキングトップに立っている。

一方、カチューシャがコントロールするメイン集団の後方では、気管支炎によって調子を落としている総合6位リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)が脱落してしまう。チームメイトのサポートを受けてウランは集団に復帰したものの、続く1級山岳サンロレンソで再び脱落。結局ウランはこの日だけで15分以上遅れ、総合16位まで順位を下げた。



序盤から逃げていたピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)が集団を牽引序盤から逃げていたピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)が集団を牽引 photo:Unipublic失格を言い渡されたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)失格を言い渡されたジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Tim de Waele


残り4kmで攻撃を仕掛けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)残り4kmで攻撃を仕掛けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele世界選手権に向けた脚試しのようなファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)のアタックは先頭に届かず、チームスカイが牽引するメイン集団によって吸収される。逃げグループ内ではイワン・ロフニー(ロシア、ティンコフ・サクソ)とジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)が走りながら殴り合いの喧嘩をするシーンも。

フルームらを追走するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)フルームらを追走するホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleフィニッシュまで33kmを残した1級山岳サンロレンソで先頭はデマルキとブランビッラ、ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)の3名に絞られ、そのまま2分30秒リードで最後の1級山岳ラ・ファラポーナ登坂を開始する。

1級山岳ラ・ファラポーナを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)1級山岳ラ・ファラポーナを駆け上がるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleコミッセールの前で拳を交わしたブランビッラに失格が言い渡されると、先頭はデマルキとポエルスの2人に。チームスカイ率いるメイン集団が1分後方にまで迫る頃、頂上まで11kmを残してデマルキが独走を開始した。

マイヨロホを着るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が独走でフィニッシュマイヨロホを着るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が独走でフィニッシュ photo:Tim de Waeleダリオ・カタルド(イタリア)やフィリップ・ダイグナン(アイルランド)、ミケル・ニエベ(スペイン)らの強力なペースアップによってメイン集団が10名にまで絞られると、残り5kmを切ったところで総合3位フルームがアタック。この動きにすぐさまマイヨロホのコンタドールが反応した。

残り3kmでフルームとコンタドールがデマルキを抜いて先頭に立つ。バルベルデ、ロドリゲス、ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)の3名が懸命の追走を仕掛けたが、フルームの強力なペースによってタイム差は10秒、20秒、30秒と広がって行く。

シッティングでハイペースを刻むフルームの後ろから残り700mでコンタドールがアタック。「見ているだけでは分からなかったかもしれないけど、フルームは何度もペースを変化させて振るい落とそうとしてきた。でも脚の調子は良かったし、彼との一騎打ちには慣れている」と語るコンタドールが一発でフルームを置き去りにし、15秒差でフィニッシュに飛び込んだ。

4月のブエルタ・アル・パイスバスコ総合優勝以来となる、実に5ヶ月ぶりの勝利を掴んだコンタドール。直近のライバルであるバルベルデを55秒引き離して総合リードを1分36秒まで拡大させたが「ライバルたちを引き離す重要なステップにはなったけど、まだブエルタの総合争いが決まったわけじゃない。まだ5日間で様々なことが起こる可能性がある。総合リードは広がったけど、ライバルたちを完全に引き離したとは思っていない」と、警戒心は解かない。

アストゥリアスの山岳3連戦を終えて、選手たちは大会最後の休息日を迎える。総合争いが再び加熱するのは第18ステージの2級山岳フィニッシュと第20ステージの超級山岳フィニッシュ、そして最終第21ステージの9.7km個人タイムトライアルだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



総合リードを広げたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)総合リードを広げたアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleヘリコプターで下山するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ヘリコプターで下山するアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第16ステージ結果
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
7位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
8位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
10位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
11位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
12位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
13位 ワウテル・ポエルス(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)
14位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
15位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)

20位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
21位 ロメン・シカール(フランス、ユーロップカー)
22位 マキシム・モンフォール(ベルギー、ロット・ベリソル)
23位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)
27位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)
29位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
38位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
50位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4h53'35"
+15"
+50"
+55"
+59"
+1'06"
+1'12"
+1'22"
+1'43"
+1'48"
+1'51"
+2'00"
+2'11"

+2'32"

+3'27"
+3'51"
+4'45"
+4'51"
+6'37"
+8'36"
+14'57"
+15'46"


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
5位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
8位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
63h25'00"
+1'36"
+1'39"
+2'29"
+3'38"
+6'17"
+6'43"
+6'55"
+8'37"
+9'10"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
124pts
114pts
108pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
53pts
30pts
23pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6pts
7pts
17pts


チーム総合成績
1位 カチューシャ
2位 モビスター
3位 ティンコフ・サクソ
190h11'42"
+14'34"
+31'08"


ステージ敢闘賞
ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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