ムアラ・シジュンジュンからハラウまでの124.5kmで開催されたツール・ド・シンカラ第2ステージ。総合リーダーの伊藤雅和(愛三工業レーシング)はチーム一丸となり総合首位をキープ。ヒシャオ・シイシン(台湾、アクション)がステージ優勝を挙げた。

リーダージャージを着る伊藤雅和と愛三工業レーシングリーダージャージを着る伊藤雅和と愛三工業レーシング (c) Sonoko Tanakaインドネシアの「ヨセミテ」にゴールする124.5km

インドネシア特有の細く曲がりくねった田舎道が多く取り入れられた第2ステージ。フィニッシュ地点は昨年からコースに取り入れられたハラウ・バレー。切り立った崖に囲まれているため、日照時間は1日3時間ほどしかないという少し神秘的なエリアをめざして、124.5kmのレースは幕を開けた。

レースリーダーの証、イエロージャージを着るのは愛三工業レーシングの伊藤雅和。プロ2年目、初めてリーダージャージを着て挑むステージとなる。チームは、リーダージャージを守ることでUCIポイントが獲得できるこツール・ド・シンカラ第2ステージがスタートツール・ド・シンカラ第2ステージがスタート (c) Sonoko Tanakaと、またチームの経験を高めるためにも、本格的な山岳ステージである第4ステージまでは伊藤のジャージを守るために走ろう、と昨夜のミーティングで決めたという。

総合首位キープをめざす愛三工業レーシング

レースがスタートすると、序盤に20秒差の総合7位につけるシーケオング・ロー(マレーシア、OCBCシンガポール)らを含む13人の逃げが決まった。愛三工業レーシングはそこに55秒差の総合14位でスタートした中島康晴を送り込むことに成功。ここでレースをコントロールする立場にある愛三工業レーシングにとって、作戦どおりの優位なレース運びとなった。

のどかなスマトラ島の田舎道を進む選手たちのどかなスマトラ島の田舎道を進む選手たち (c) Sonoko Tanaka

中島康晴(愛三工業レーシング)を含む13選手の逃げ中島康晴(愛三工業レーシング)を含む13選手の逃げ (c) Sonoko Tanaka先頭は最大で4分50秒程度の差を広げたが、逃げ集団に選手を送り込めなかったオーストラリアナショナルチームらの追い上げにより吸収された。終盤にかけて積極的にアタック合戦が繰り広げられるが、決定的なものは生まれず。しかし、ゴールに向けて徐々に道幅が狭くなり、残り1kmを切るとテクニカルなカーブが続くコースレイアウト。単純な集団スプリントではなく、スプリントに備えての絶妙な位置取りが勝負を分けた。

去年の経験を活かして、残り1kmで前方をキープし、残り500mで仕掛けたというヒシャオ・シイシン(台湾、アクション)が、アレサンドル・エドモンドソン(オーストラリア、オーストラリアナショナル)とのスプリントヒシャオ・シイシン(台湾、アクション)がゴールスプリントを制したヒシャオ・シイシン(台湾、アクション)がゴールスプリントを制した (c) Sonoko Tanakaを制し、嬉しいステージ優勝を挙げた。日本勢では日本ナショナルチームの寺崎武郎が同タイムの13位でフィニッシュ。総合リーダーの伊藤も同タイムでフィニッシュし、無事にジャージをキープした。

第3ステージも伊藤の総合首位をめざす

レース後にレースの指揮をとる綾部勇成キャプテンはこう話す。
「チームにとって、これまでリーダージャージを守るために走るという経験は少ないのですが、今日はチーム全員が共通認識をもって、頭を使いながら走ることができたと思います。監督やチームのエースである西谷、盛選手リーダージャージをキープした伊藤雅和(愛三工業レーシング)が表彰されるリーダージャージをキープした伊藤雅和(愛三工業レーシング)が表彰される (c) Sonoko Tanakaがいない中で、このようなレースを展開できていることは自分たちにとってプラスになっています」

「明日は2級山岳が2つ組み込まれるステージになりますが、明日は脚を使ってでも、チーム一丸となってジャージを守りたい。守れる自信もあります。ただ2つ目の山頂を越えると下りきってゴールになるので、山頂までは伊藤選手のジャージのために走り、そこからはステージ優勝をめざして走れるのがチームの理想です」

総合リーダーの伊藤雅和は「今日は昨日のミーティングどおりにレースが進んだので、リラックスして走ることができました。今日のレースはさほど厳しいものではなレースを終えた日本ナショナルチームのピットレースを終えた日本ナショナルチームのピット (c) Sonoko Tanakaく、脚を使わずにゴールできました。明日のステージでは上りで絶対に遅れないように走りたいと思います」とコメントする。

そんな彼らの背中を見て走るのが若手選手で構成された日本ナショナルチーム。第2ステージは寺崎武郎がステージ13位でフィニッシュ、同タイムでゴールした山本元喜が総合8位に浮上している。その一方で、3選手が後方集団に残されてしまった。

高橋松吉監督はこう話す「組織力のあるチームを良く見て、彼らの動きに乗るように、と話していたが、今日は13人の逃げに乗ることができなかった。本格的なUCIレースに初参戦という選手も多い中で、今回の課題の1つは自信をつけること。また明日から気合いを入れて、走っていきたいと思います」。

明日、第3ステージはパヤクングからイスタノバサまで、2級山岳を2つ含む102kmで開催される。明後日からの厳しい山岳ステージを前に、ステージ優勝を狙いたいチームが動いてくるだろう。リーダージャージを守りたい愛三工業レーシングにとっても大切なステージとなる。

ツール・ド・シンカラ第2ステージ結果
1位 ヒシャオ・シイシン(台湾、アクション)3h08'43"
2位 アレサンドル・エドモンドソン(オーストラリア、オーストラリアナショナル)
3位 アレサンドル・スミス(オーストラリア、プランB)
4位 サウヒ・マットセナン(マレーシア、トレンガヌ)
5位 ヌヌン・ブルハヌディン(インドネシア、プトラペルジャンガン)
6位 オスカル・プジョル(スペイン、アザド大学)
13位 寺崎武郎(日本ナショナル)
15位 木守望(愛三工業)
30位 伊藤雅和(愛三工業)
31位 中島康晴(愛三工業)
32位 山本元喜(日本ナショナル)
36位 秋丸湧哉(日本ナショナル)
70位 鈴木謙一(愛三工業)+1'44"
94位 平井栄一(日本ナショナル)+11'18"
96位 六峰亘(日本ナショナル)
103位 綾部勇成(愛三工業)+12'19"
120位 清水太己(日本ナショナル)+25'32"

個人総合順位
1位 伊藤雅和(愛三工業) 4h59'50"
2位 ジェイ・クラウフォード(オーストラリア、ジェネシス) +6"
3位 フェン・チュンカイ(台湾、アクション) +14"
4位 シーケオング・ロー(マレーシア、OCBCシンガポール)+19"
5位 アレサンドル・マロヌ(オーストラリア、プランB)+20"
6位 ダディ・スラディ(インドネシア、プトラペルジャンガン)
8位 山本元喜(日本ナショナル) +22"
12位 中島康晴(愛三工業)+52"
18位 秋丸湧哉(日本ナショナル)+1'31"
24位 寺崎武郎(日本ナショナル)+1'35"
47位 木守望(愛三工業)+2'18"
67位 鈴木謙一(愛三工業)+3'52"
80位 平井栄一(日本ナショナル)+13'26"
83位 六峰亘(日本ナショナル)+13'31"
104位 綾部勇成(愛三工業)+17'42"
118位 清水太己(日本ナショナル)+28'19"

ポイント賞
伊藤雅和(愛三工業)

山岳賞
ジュリアン・リポンヌ(フランス、レーヌ・ブランシュ)

チーム総合首位
オーストラリアナショナル


text&photo:Sonoko.Tanaka