スプリンターたちのツール・ド・フランス前哨戦となったバロワーズ・ベルギーツアー。ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が区間2勝を挙げ、24歳のフィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG)が総合優勝した。



ツールに向けて準備を進めるフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

大会に駆けつけたグレッグ・ファンアーフェルマート photo:Baloise Belgium Tour
ツール・ド・フランスの前哨戦として知られるツール・ド・スイスと時を同じく、自転車大国ベルギーで行われたのがバロワーズ・ベルギーツアー(UCI2.Pro)だ。初開催は1908年とステージレースではツールに次いで世界で2番目に古い、ベルギー北部フランドル地域を舞台にした5日間レース。そこには本格山岳は一切登場しないため、例年、高地トレーニングを終えたスプリンターなどがツール前コンディションを整えるレースとなっている。

初日のスタート地点であるメレルベーケ・メッレには、ツール、そして6月29日のベルギー選手権でも対決予定のヤスペル・フィリプセン(アルペシン・ドゥクーニンク)とティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)が揃った。4箇所の未舗装路区間が設定されたコースだが、大きなトラブルもなく集団スプリントへ。UAEチームエミレーツXRGやピクニック・ポストNLが中心に集団先頭でトレインを並べ、メルリールが先に踏み込んだ。

白いヨーロッパ王者ジャージを着るメルリールのスピードには誰もついていけず、フィニッシュ手前の傾斜も問題なくクリア。そしてメルリールが母国ベルギーで初日勝者に輝いた。

第1ステージ勝者:ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

第2ステージ勝者:ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

終盤にアタックが繰り返された2日目も、結果的に集団スプリントで決着した。UAEによる抜群のリードアウトから前日2位だったフアン・モラノ(コロンビア)がスプリントを開始。メルリールが前を塞がれるなか、自ら脚を使って番手を上げたフィリプセンが、フィニッシュ手前でモラノを追い抜いた。

3日目は総合順位に大きな影響を与える9.7kmの個人タイムトライアル。平坦かつ直線路の多いシンプルな戦いは、イギリスの現ロード王者であるイーサン・ヘイター(スーダル・クイックステップ)が、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)を4秒上回り勝利。ジロ・デ・イタリアでは区間3位と届かなかったTT勝利を手に入れた。

第3ステージ勝者:イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

第4ステージ勝者:イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット) photo:Baloise Belgium Tour

デュルビュイに設定された周回コースを巡る4日目は、いずれも2km以下の急坂を20箇所クリアする丘陵ステージ。レースは終盤4名に絞られ、フィニッシュ手前の急勾配な坂に突入する。先に24歳のイェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット)が踏み込み、マルコ・フリーゴ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)やールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)を退け、勝利した。

大会最終日である第5ステージは、再び集団スプリントに持ち込まれた。幅広の直線路で3列のトレインが並び、UAEが先頭で最終ストレートに突入した。先にスプリトを開始したティムトーン・トイテンベルク(ドイツ、リドル・トレック)のスピードは伸びず、メルリールがモラノを退け、フィニッシュに先着した。

第5ステージ勝者:ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

総合表彰台:2位イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ)、1位フィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG)、3位イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット) photo:CorVos

メルリールがツールへ弾みをつける区間2勝目を掴んだ一方で、モラノは今大会3度目の2位。しかしポイント賞ジャージを手に入れている。

そして総合優勝に輝いたのはTTで4位に入り、また第4ステージも4位だったフィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG)。2021年のU23ロード世界王者であり、昨年リドル・トレックから加入した24歳が、キャリアハイとなる結果を掴んだ。
バロワーズ・ベルギーツアー2025
第1ステージ(6月18日)
1位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 4:23:43
2位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツXRG)
3位 イーサン・ヴァーノン(イギリス、イスラエル・プレミアテック)
第2ステージ(6月19日)
1位 ヤスペル・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) 4:07:27
2位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツXRG)
3位 イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット)
第3ステージ(6月20日)
1位 イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ) 10:29
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:04
3位 フロリアン・フェルミールス(ベルギー、UAEチームエミレーツXRG) +0:16
第4ステージ(6月21日)
1位 イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット) 4:00:34
2位 マルコ・フリーゴ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) +0:05
3位 オールイス・アウラール(ベネズエラ、モビスター)
第5ステージ(6月22日)
1位 ティム・メルリール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 3:56:38
2位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツXRG)
3位 キム・ハイドゥク(ドイツ、イネオス・グレナディアーズ)
個人総合成績
1位 ソーレン・ヴァーレンショルト(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) 13:24
2位 マティアス・ヴァチェク(チェコ、リドル・トレック) +0:04
3位 アレクサンデル・アランブル(スペイン、モビスター) +0:07
その他の特別賞
1位 フィリッポ・バロンチーニ(イタリア、UAEチームエミレーツXRG) 16:39:07
2位 イーサン・ヘイター(イギリス、スーダル・クイックステップ) +0:04
3位 イェノ・ベルクムース(ベルギー、ロット) +0:07
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos