ビッグベアレイクへとゴールする難関山岳第6ステージは、アージェードゥーゼルのシルヴァン・ジョルジュ(フランス)が驚異的な逃げ切り勝利を挙げた。土井雪広もゴール27km前まで7人で逃げる走りを披露した。

ビッグベアレイクで驚異的な逃げ切りを演じたシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)ビッグベアレイクで驚異的な逃げ切りを演じたシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) (c)www.amgentourofcalifornia.com

ファンにサインをせがまれるデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)ファンにサインをせがまれるデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) (c)www.amgentourofcalifornia.com難関山岳が待つステージを走りだした選手たち難関山岳が待つステージを走りだした選手たち (c)www.amgentourofcalifornia.comツアー・オブ・カリフォルニア第6ステージはパームデール〜ビッグベアレイクの186.3kmで争われた。第6・7ステージは2000mの難関山岳が続くレースのハイライト。なかでもビッグベアレイクへとゴールするステージは毎年ツアー・カリに用意される名物ステージだ。
レースはまず約22km地点にあるエンマ山へと登る。次に約69km地点で標高2000m超のエンジェルス・クレストへ。長いダウンヒルを経て再び上り基調の厳しいアップダウンをこなし、2200m超の峠を経て、2134mのビッグベアレイクへとゴールする。

クイーンステージといえるほど難易度は高いが、最後の峠からビッグベアレイクまでは下りと緩いアップダウンを含む平坦路区間が約30kmあるため、例年このステージで逃げ切りは決まることがなく、小〜中集団でゴールスプリントに持ち込まれてきた。レース展開によるが、伝統的にはセレクションを経て20人〜60人の集団に絞りこまれてフィニッシュを迎えるケースが続いてきた。

標高2000mの山岳をこなす集団標高2000mの山岳をこなす集団 (c)www.amgentourofcalifornia.comコースプロフィールから当然、リクイガス・キャノンデールはペーター・サガン(スロバキア)のステージ5勝目を狙ってくる。そしてリーダージャージを保持するデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ)擁するガーミン・バラクーダはそのチーム力をもって無難に走ればまずジャージを失うことはないだろう。

土井雪広を含む7人が逃げる

最初の4級山岳エンマ峠でアタックをかけたのは土井雪広(アルゴス・シマノ)含む7人。セバスチャン・サラスとアンドリュー・バハダリ(オプタム・ケリーベネフィット)、デーヴィッド・ボイリー(スパイダーテック)、シルヴァン・ジョルジュ(アージェードゥーゼル)、グレゴリー・ラスト(レディオシャック)、ジェレミー・ヴェンネル(ビッセル)ら。
エンマ峠で2分15秒だったタイム差は、ダウンヒルを経て広がり続ける。

7人の逃げに乗った土井雪広(アルゴス・シマノ)7人の逃げに乗った土井雪広(アルゴス・シマノ) (c)CorVosそして7人はうまく協調したため、1級山岳エンジェルス・クレストの上りの麓でタイム差は約7分へと広がった。
厳しく長い上りでもこの7人はうまくペースを保ち、頂上手前でタイム差は最大の8分へ。この上りの途中で4人の選手がリタイア。その中にはスプリンターのマルセル・キッテル(アルゴス・シマノ)が含まれていた。

山岳で単独になったシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)山岳で単独になったシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) (c)www.amgentourofcalifornia.com頂上の先頭通過はチームメイトのバハダリのアシストを受けてアタックしたセバスチャン・サーラス(オプタム・ケリーベネフィット)。山岳賞争いが面白くなってきた。
逃げる7人と集団のタイム差はゴールまで100kmを残し約5分に。そしてビッグベアレイクのある高地目指し、最後の長い長い上りへと突入していく。

ゴールまで60km、3分50秒のタイム差をもって登りはじめた逃げグループだが、上りの中腹のカテゴリー3級の厳しい坂の手前でセバスチャン・サーラス(オプタム・ケリーベネフィット)とシルヴァン・ジョルジュ(アージェードゥーゼル)の2人がペースを上げ、抜け出す。土井は遅れながらも3番手で食い下がるが、差は徐々に広がってゆく。

チームメイトに守られて山岳をこなすデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)チームメイトに守られて山岳をこなすデーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) (c)www.amgentourofcalifornia.com山岳ポイントを通過した後、サーラスが突然遅れて先頭はジョルジュ単独に。先が長いため単独で行きたくないジョルジュは後ろを振り返ってサーラスを待つが、サーラスは山岳ポイントを獲得するのに脚を使い果たした様子で、追いつくことはなかった。しかしサーラスは山岳賞ジャージ獲得を決めた。

独走に入ったジョルジュ。チームカーが励ましながら登りを淡々とこなす。ゴールまではまだ45kmある。メイン集団とのタイム差は5分。
後続メイン集団ではサガンの勝利を狙うリクイガス・キャノンデール勢がスピードを上げ始める。

驚異的な逃げ切りを演じたシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)驚異的な逃げ切りを演じたシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) (c)www.amgentourofcalifornia.com粘った土井はゴールまで27kmの時点で集団に吸収される。しかし、先頭を行くジョルジュはペースを保ち続けた。
後方ではピーター・ウィーニング(オランダ、オリカ・グリーンエッジ)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ラボバンク)らの追走アタックがかかるが、やがてメイン集団が吸収した。

残り20kmで4分差。逃げ切る可能性が出てきた粘り続けるジョルジュ。ダウンヒルを経てビッグベアレイクの湖畔へと到達する。集団はペースを上げ続けるが、必死に走り続けるジョルジュは残り4kmでタイム差2分、そして残り2kmで1分25秒差と、逃げ切りを確定的に。

ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)はゴールスプリントで余裕の2位ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)はゴールスプリントで余裕の2位 (c)www.amgentourofcalifornia.com湖畔の平坦路をひとり飛ばし続け、ジョルジュがゴールの待つストレートに入った時、メイン集団は遠景でようやくジョルジュを捉えるにとどまった。
ビッグベアレイクのゴール地点は僅かな上り坂。ジョルジュは多くの観客たちが見守る中拳を突き上げてフィニッシュ。追い込めなかった後続メイン集団の先頭は、サガンが余裕でトップ通過した。驚異的な走りを見せたジョルジュ。そして計算違いがもとでサガンのステージ5勝目は実ることがなかった。

そして総合争いも変動。スプリントでサガンに次いで3位に入ったピーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)がボーナスタイムを獲得し、アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)との順位を逆転して総合3位に上がった。


勝利したシルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)のコメント

ビッグベアレイクでビッグな勝利を挙げた 1位 シルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)ビッグベアレイクでビッグな勝利を挙げた 1位 シルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール) (c)www.amgentourofcalifornia.comゴール前の最後がもっとも困難だった。身体全体が痛み出し、めまいがして、脚が攣りだした。でも僕は戦い続けることができた。ラスト15kmは今までの人生の中でもっともハードな瞬間だった。
セバスチャン・イノーがアージェードゥーゼルのチームリーダーで、僕は彼からよくアドバイスを貰う。彼の勝利(イノーは同日に別のプロレースで優勝した)と同じ日に勝利できるなんて、僕にとってもチームにとっても何か特別なことだね。今日僕は脚があることはわかっていたけど、ゴールまでの闘いはイチかバチかの闘いだったね」。

137kmを逃げた土井雪広(アルゴス・シマノ)のコメント(Twitterより)

今日は逃げ切ったフランス人が強すぎた(笑)。予想だにしないアタックで追走に力を注いだけど、最後の山岳を越えた後の予想だにしない厳しい登りにもう追走の力は残っていなかった。もう少しポーカーになれば良かったかな。
まぁ今日は今回のレースで一番逃げ切りが可能だと思って狙っていたステージで、考えている通り逃げに入れたのは良かった。あとは力も必要だけど、展開を味方につける運も必要だね。今日は日の丸背負って逃げられて満足だよ。応援てんきゅーてんきゅーエブリバディー。

ツアー・オブ・カリフォルニア2012第6ステージ結果
1位 シルヴァン・ジョルジュ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)5h07'06"
2位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) +28"
3位 ピーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 トマ・ダムソー(フランス、アルゴス・シマノ)
5位 トム・ドゥムーリン(オランダ、アルゴス・シマノ)
6位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
7位 ロメン・バルデ(フランス、アージェードゥーゼル・ラモンディアール)
8位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・ニッサン)
9位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
10位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)
68位 土井雪広(アルゴス・シマノ)+15'38"

個人総合成績
1位 デーヴィッド・ザブリスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ) 25h37'05"
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)+34″
3位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+39″
4位 ピーター・ベリトス(スロバキア、オメガファーマ・クイックステップ)+45″
5位 アンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+48″
6位 ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)+1'01"
7位 トム・ダニエルソン(アメリカ、ガーミン・バラクーダ)+1'07"
8位 ロリー・サザーランド(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)+1'10"
9位 キャメロン・マイヤー(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)+1'26"
ローソン・チャドウィック(アメリカ、ボントレガー・リブストロング)+1'30"

山岳賞
セバスティアン・サーラス(カナダ、オプタム)

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

新人賞
ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)



text:Makoto.AYANO
photo:Mark johnson/CorVos,amgentourofcalifornia