スキル・シマノの土井雪広が日本人として初めてブエルタ・ア・エスパーニャ出場への切符を手にした。4月の落車で膝蓋骨を骨折し、4ヶ月に及ぶ辛いリハビリとトレーニングでコンディションを戻した土井。シマノメモリーコープ時代から数えてヨーロッパ7年目の今年、念願のグランツール出場を決めた。

土井雪広(スキル・シマノ、日本)土井雪広(スキル・シマノ、日本) photo:Sonoko Tanaka「インドゥラインやリース、パンターニが活躍するツール・ド・フランスのほうが目立っていたけど、幼い頃からブエルタ・ア・エスパーニャの存在は知っていたし、これまでブエルタで活躍したいと言ってきた。その舞台に自分が立つという実感は、まだ無い」と土井は笑う。

しかし土井のブエルタへの道は平坦なものではなかった。今シーズン、春先から好調ぶりを見せていたが、4月13日のブラバンツ・ペイルで落車して膝蓋骨を骨折。大怪我によって、目標とするアルデンヌ・クラシックとツアー・オブ・ターキーを棒に振ってしまう。

6月に帰国し、全日本選手権を走った土井雪広(スキル・シマノ)6月に帰国し、全日本選手権を走った土井雪広(スキル・シマノ) photo:Kei Tsuji絶好調のさなかにレースを離脱した土井は、オランダでの生活を中断し、リハビリトレーニングを続けていた。

土井は、先週スペインで開催された復帰第2戦ブエルタ・ア・ブルゴス(UCI2.HC)で復活を遂げる。第4ステージの登りゴールで、名だたるオールラウンダーに混ざって9位に。土井は「復帰2戦目の成績というのが信じられないぐらい。HC(超級)レースで結果を残せるとは思わなかった」と振り返る。

土井雪広(日本、スキル・シマノ)土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:Yuko Sato「絶好調の春先に落車でどん底に落ちて、本当にゼロからのスタートだった。それだけに、この気持ちは一言では表せない。ブエルタを目指す以前に、レースで結果を残すことが目標だった。やはりブエルタのメンバーに選ばれるためには結果を残さないといけない。ブルゴスでのステージ9位という成績は、ぎりぎりのタイミングだったと思う。でもチームスタッフはしっかりとトレーニング結果を評価してくれている。怪我から復活までのプロセスも評価されたと思う」。

「確実にパワーは上がってきているけど、まだ春先にレベルには達していない」。骨折した膝はすでに問題ないレベルまで回復しているという。

ブエルタ・ア・ブルゴスに出場した土井雪広(日本、スキル・シマノ)ブエルタ・ア・ブルゴスに出場した土井雪広(日本、スキル・シマノ) photo:www.vueltaburgos.com8月20日に開幕するブエルタは、土井にとって初めてのグランツールとなる。「3週間のレースは初めての経験なので想像がつかない。2週目までは想像できるけど、3週目なんて未知の世界。3週間を走りきることができれば、選手として間違いなく成長することができる」。

スキル・シマノのメンバーは、ツール・ド・ポローニュで怒濤のステージ4勝を飾ったマルセル・キッテル(ドイツ)を中心に据えた布陣。総合上位を狙うオールラウンダーはおらず「キッテルで勝ちに行くメンバー」だ。

「平坦ステージではキッテルを勝たせるために働く。逆に、3級の登りゴールなどのステージでは、ゴツい彼らが自分のためにポジションを作ってくれるので心強い。超級山岳のステージは無理だとしても、登りゴールのステージでは、状況によってサイモン(ゲスク)とエースを使い分けながら優勝を狙いたい。監督は『勝ちに行く』と断言している。ちなみにキッテルとはシーズン序盤のレースでよく同部屋になった。荒々しいスプリントとは裏腹にすごく性格がいい選手」。

ブルゴスからオランダの自宅に戻った土井は、12日にイギリスに飛ぶ。14日に行われるロンドン・サリー・サイクルクラシック(UCI1.2)と呼ばれるロンドンオリンピックのプレレースに出場するためだ。そして15日にオランダに戻り、17日にはスペインに向かう。

最後に土井にブエルタに向けての抱負を語ってもらう。「やはり目標はステージ優勝。ステージのトップ10を狙っていても、ステージ優勝は狙えない。自分が出場することで逆にメンバーから外れた選手たちのことを考えると、下手な走りは許されないし、選ばれた人間としてのプレッシャーを感じながら走りたい。そしてやはり日本人初出場という刺激はある。辛い思いを経験している東北の出身者として、少しでも元気づけられるような走りができれば」。

「できる限り、可能な限り、最大限の走りをしたい。とにかくブエルタを走るのが今から楽しみ」。

ブエルタ第66回大会は、8月20日、地中海に面したスペイン南東部バレンシア州ベニドルムで開幕する。

ブエルタ2011スキル・シマノメンバー
土井雪広(日本)
マルセル・キッテル(ドイツ)
ヨハネス・フレーリンガー(ドイツ)
クーン・デコルト(オランダ)
ロイ・カーヴァス(オランダ)
アルバート・ティマー(オランダ)
トム・フィーラース(オランダ)
サイモン・ゲスク(ドイツ)
アレクサンドル・ジェニエ(フランス)

text:Kei Tsuji