並みいるビッグスプリンターを振り払い、ゴールに飛び込む青いポイント賞ジャージ。韋駄天ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)がステージ2勝目をマークした。イエロージャージを懸けた闘いはいよいよクライマックスを迎える。

第8ステージ・コースプロフィール第8ステージ・コースプロフィール image:www.tourdesuisse.ch2011年6月18日、テューバッハからシャフハウゼンまでの167kmで行なわれたツール・ド・スイス第8ステージ。最終日前日のこのステージはスプリンター向きで、コースの大半は平坦路だ。

ドイツ国境に近いスイス北部を走るドイツ国境に近いスイス北部を走る photo:Cor Vosしかし終盤にかけて2つのカテゴリー山岳を越える。ゴール22km手前で3級山岳ハラウアーベルグ、ゴール13km手前で4級山岳シブリンガーヘーエをクリア。この標高差100m前後の小さな丘が、スプリンターを篩にかける。

そんなスプリンター向きのステージで、スプリンターのフランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)が逃げに乗った。同じく逃げたのはルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)、ヤロスラフ・マリチャ(ポーランド、サクソバンク・サンガード)、ヤン・バルタ(チェコ、チームネットアップ)。タイム差は70km地点で8分まで拡大する。

ライン川に沿ったコースを進むライン川に沿ったコースを進む photo:Cor Vos定石通りランプレ・ISDがコントロールしたメイン集団は、後半にかけてHTC・ハイロードやチームスカイが牽引。ゴールまで30kmを切ると逃げグループでは不協和音が流れ始め、メイン集団とのタイム差は縮小する。

そして迎えた3級山岳ハラウアーベルグ。逃げグループはパオリーニとマリチャの先行が決まり、メイン集団はモビスターとレオパード・トレックのペースアップによって分裂する。メイン集団はこの登りで30名ほどに絞り込まれた。

モレマ脱落に伴いメイン集団のペースを上げるリーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)らモレマ脱落に伴いメイン集団のペースを上げるリーナス・ゲルデマン(ドイツ、レオパード・トレック)ら photo:Cor Vos多くのスプリンターたちとともに、総合2位のバウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)が後方集団に取り残されてしまう。

フランク・シュレク(ルクセンブルク)の総合ジャンプアップを目指し、モレマの脱落を知ったレオパード・トレックが全力で集団牽引。アンディ・シュレク(ルクセンブルク)、リーナス・ゲルデマン(ドイツ)、マキシム・モンフォール(ベルギー)、そしてイェンス・フォイクト(ドイツ)が身を粉にする鬼気迫る集団牽引を見せたため、モレマは単独追走を諦め、後方集団への合流を選ばざるを得なかった。

ゴスやスウィフトを振り切ってゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)ゴスやスウィフトを振り切ってゴールするペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール) photo:Cor Vosメイン集団はレオパード・トレックが引き続けた状態でシャフハウゼンの街へ。ラスト2kmでワウテル・ポエルス(オランダ、 ヴァカンソレイユ・DCM)がアタックを仕掛けると、ようやくスプリンターチームが集団先頭へ。ダニエル・オス(イタリア、リクイガス・キャノンデール)がハイスピードで集団を牽引し、ラスト1kmアーチを潜った。

ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)とベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)を先頭に、ラスト300mで始まったスプリントバトル。飛び出すタイミングを遅らせたサガンが一気に先頭に立ち、ゴスとアルカンシェルのトル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)が追い上げる展開。

イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)イエロージャージを守ったダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD) photo:Cor Vosしかしゴスやフースホフトは伸びない。サガンは伸びやかなスプリントでゴールラインに突進し、他を寄せ付けずに両手を広げる。ポイント賞ジャージの前にひれ伏したスプリンターたちは肩を落としてゴールした。

「こんなに嬉しい勝利はないよ!だってここまでチャンスを全てものにできている!」サガンは板についてきたイタリア語で喜びを表現する。

「今日のステージは終盤にアップダウンがあったからトリッキーだった。登りでのアタックで集団が割れることを予想していて、本当にその通りになったんだ。そこで多くのスプリンターが脱落した。最後はダニエル・オスの力強いリードアウトに導かれて先頭へ。早めに仕掛けたライバルたちを左から追い上げたんだ」。

今シーズン7勝目を飾ったサガン。「トップコンディションを維持しているんだ。この好調さを維持して、勝つことを継続させたい」。ツール・ド・スイスでは第3ステージに続く2勝目。ポイント賞ランキングで首位を快走している。

イエロージャージはクネゴがキープ。モレマを含むメイン集団が48秒遅れでゴールしたため、思いがけずクネゴは総合リードを広げることに成功している。クネゴはステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)から1分36秒、フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)から1分41秒、そしてリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)から1分59秒のリードを得て最終個人タイムトライアルに挑むことに。

クルイスウィックはジロ・デ・イタリアの最終個人TTで20位に入る実力の持ち主。Fシュレクは決してTTを得意としないが、昨年大会の最終個人TTで好走して逆転総合優勝に輝いている。ライプハイマーはグランツールの個人TTでも上位に入るTT系オールラウンダーだ。個人TTの距離は32.1km。オールラウンダーとして復権しつつあるクネゴの真価が問われる。

選手コメントはリクイガス・キャノンデール公式サイト、ならびにランプレ・ISD公式サイトより。

ツール・ド・スイス2011第8ステージ結果
1位 ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)    3h52'00"
2位 マシュー・ゴス(オーストラリア、HTC・ハイロード)
3位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)
4位 コルド・フェルナンデス(スペイン、エウスカルテル)
5位 トル・フースホフト(ノルウェー、ガーミン・サーヴェロ)
6位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
7位 ゲラルド・チオレック(ドイツ、クイックステップ)
8位 イアン・スタナード(イギリス、チームスカイ)
9位 サイモン・クラーク(オーストラリア、アスタナ)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード

個人総合成績
1位 ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・ISD)         31h01'49"
2位 ステフェン・クルイスウィック(オランダ、ラボバンク)       +1'36"
3位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)    +1'41"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)     +1'59"
5位 バウク・モレマ(オランダ、ラボバンク)              +2'11"
6位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、レオパード・トレック)     +2'38"
7位 ローレンス・テンダム(オランダ、ラボバンク)           +3'10"
8位 ジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)         +3'11"
9位 マティアス・フランク(スイス、BMCレーシングチーム)       +3'20"
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、HTC・ハイロード)   +3'22"

ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、リクイガス・キャノンデール)

山岳賞
アンディ・シュレク(ルクセンブルク、レオパード・トレック)

中間スプリント賞
ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)

チーム総合成績
レオパード・トレック

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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