TNA(イタリア・アンチドーピング裁決機関)によって無罪が言い渡されたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア)。しかしレース復帰への道はまだ険しい。カーリーヘアーが特徴的なイタリア人は所属チームを探している段階。しかもUCI(国際自転車競技連合)がCAS(スポーツ仲裁裁判所)に提訴する可能性もある。

2009年ジロで総合3位に入ったフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)2009年ジロで総合3位に入ったフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Kei.Tsuji「フランコはCONI(イタリア五輪委員会)との闘いに勝った。とりあえずこれで疑いを払拭することが出来たと思う。彼は信頼を取り戻すことが出来た。でもUCIがCASに提訴すれば状況はややこしくなる」。ペッリツォッティのエージェントを務めるアレックス・カレラ氏はそう語る。

「幸いなことに、リクイガスは出場停止中もフランコに給料を払い続けてくれていた。そして2011年の契約もオファーしてくれているんだ。長年所属していたフランコの価値や、彼の置かれた状況を、リクイガスはしっかりと理解してくれている。リクイガスがフランコを継続的にサポートしているという事実が、他のチームの興味を引くはずだ」。

2009年ツールで山岳賞に輝いたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)2009年ツールで山岳賞に輝いたフランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス) photo:Makoto Ayano実際、ペッリツォッティはプロツアーチームやプロコンチネンタルチームからいくつかのオファーを受けている。しかし全てはUCIがCASに上訴するかどうかに懸かっている。

UCIがバイオロジカルパスポートの血液データに基づき、ペッリツォッティに疑いの目を向けたのは5月3日のこと。バイオロジカルパスポートに記録された合計22回のドーピング検査の数値を精査したUCIは、疑いのある3回分の数値を発見した。その後、CONIはペッリツォッティに対して2年間の出場停止処分を要求。しかし最終的な判断を担うTNAは「サイクリストの有罪を決定づけるほど確定的なレベルの数値ではない」として訴えを退けた。

同時期にドーピングの疑いが持たれたタディ・ヴァリャベッチ(スロベニア)は、ペッリツォッティと同じ状況に置かれている。ヴァリャベッチはペッリツォッティに先立ってスロベニア自転車競技連盟によって無罪が言い渡されたが、UCIがCASに提訴したため、アージェードゥーゼルはヴァリャベッチに契約更新のオファーを行なっていない。

仮にCASがUCIの訴え通りに有罪を認めれば、ヴァリャベッチは現役を引退する意向を示している。そして同時にペッリツォッティの希望も打ち砕かれる。仮にCASが訴えを退ければ、ますますバイオロジカルパスポートのシステムに対する異論が飛び交うことになる。

text:Gregor Brown
translation:Kei Tsuji