ツアー・オブ・ジャパンで総合優勝を叶えたチーム右京を、裏から支える?チームバイクをピックアップ。レース機材と同じファクターのOSTRO VAMをフラットハンドル&フラットペダル仕様にカスタムした、もうひとつのチームバイクだ。



ツール・ド・熊野でしれっと投入されたJCLチーム右京のスタッフバイク photo:So Isobe

ツアー・オブ・ジャパンでアレッサンドロ・ファンチェル(イタリア)を総合優勝に導いたJCLチーム右京が、その裏でこっそりと投入したニューバイクがこちら。"たむちゃん"こと田村遼メカニック...もといマネージャーの工夫と血と汗と涙が込められた(?)渾身のスタッフバイクだ。

このOSTROのフレームは、かつて在籍したベンジャミン・ダイボールのレースバイクで、昨年までは小石祐馬のスペアとして活躍したもの。駐車場からチームピットや補給所に移動する際に便利なよう、もともとあった移動用バイク(O2ベース)に続く2台目として、「スタイリッシュに仕上げる」というテーマのもと組み上げられた。

「シマノのDI2互換表と睨めっこしました」という田村メカ渾身の作。ハンドル周りはとてもスッキリとしたルックス photo:So Isobe

DI2ケーブルはハンドルに穴を開けて(注:自己責任)内蔵させている photo:So Isobe
ブレーキホースはステム下側を経由して、トップキャップからフレーム内部へ photo:So Isobe



コンポーネントはもちろんチームサプライヤーであるシマノ。フラットハンドルに取り付けたサテライトシフトスイッチだけで変速させる仕組みだが、最も注目すべき技術的ポイントは、12速のドライブトレインを、STIやMTB用の変速スイッチなし、ジャンクションAとワイヤレスユニットの両方の機能を持つインフォメーションディスプレイ(XTR)もなしでDI2システムを完成させていること。

田村メカが互換性リストを精査し、各パーツの挙動を検証する中で導き出した答えが、シマノが用意する互換アダプタ「EW-AD305」を介して11速用スイッチで12速コンポを動かすというもの。現場にある既存パーツを活かしながら、機能的にもルックス的にも理想的なセットアップが完成したという。

駆動系はフロントシングル。使いやすさ重視だ photo:So Isobe

ホイールはDURA-ACE C60。タイヤは「用意したグラベルタイヤが入らなかったので」選手と同じCORSA PRO 28C photo:So Isobe
ペダルもシマノ。カラーコーディネイトもバッチリ photo:So Isobe


新旧スタッフバイク。左がOSTRO VAM(先代)ベース、右が従来から運用されていたO2ベース photo:So Isobe

O2モデルはシンクロシフトでフロントダブルを運用する仕組み photo:So Isobe
取材当日(TOJ最終日)のレースコース表。選手バイクと同じく「戦う仕様」だ photo:So Isobe



ホイールは「エアロでカッコいい」からDURA-ACE C60、フロントチェーンリングは「シンプルな方が良いから」GRXクランクでシングル化。フラットペダルだってシマノ製(PD-EF202)でカラーコーディネイトもバッチリ。ただし最大32C対応のフレームに合わせてグラベルタイヤをセットしようとしたところ、ノブ部分がフレームと干渉したので断念したという。

「選手たちですら、軽っ!と言うレベルまで仕上がりました(笑)。重さは7kg以下じゃないですかね。他チームのスタッフにも、“こういうの作ろうよ”って言ってるんですよ」と田村マネージャー。プロの遊び心とノウハウ、美意識が詰まった興味深い一台でした。

(他チームでカッコいい移動用バイクが完成したら、ぜひシクロワイアード取材班にご一報を)

text:So Isobe

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