2009年4月5日、第93回ロンド・ファン・フラーンデレンがベルギー・フランドル地方を舞台に開催され、終盤の激坂ミュールで飛び出したステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)が、2年連続となる独走勝利を飾った。別府史之(スキル・シマノ)はレース後半に途中リタイアを喫している。

序盤からハイスピードな展開、クイックステップの強さ際立つ
レース中盤にアタックを成功させたアレクサンダー・クチンスキーや ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ)ら4名レース中盤にアタックを成功させたアレクサンダー・クチンスキーや ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ)ら4名 photo:Cor Vosフランドルクラシックの頂点に君臨するロンド・ファン・フラーンデレン。開催93回目を迎える今年も、大勢の観客が沿道に押し寄せた。観客で埋め尽くされた世界遺産の街ブルージュのマルクト広場を197名の選手たちは一斉にスタートし、16の急坂が設定された260kmの長い旅路に挑んだ。

レース前半の平坦区間で繰り広げられたのはアタックの応酬で、逃げが決まらぬまま集団はハイスピードで進行。ようやく逃げが決まったのは、最初の急坂モーレンベルグ手前の125km地点。別府史之が追走したが、届かずに集団に引き戻された。

互いにペースを上げてコッペンベルグを上るフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)とトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)互いにペースを上げてコッペンベルグを上るフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)とトム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vos集団から飛び出した4名は、平坦な石畳区間でセレクションがかけられ、アレクサンダー・クチンスキー(ベラルーシ、リクイガス)ウィム・デフォート(ベルギー、ヴァカンソレイユ)の2名が2分ほどのリードを得て逃げる展開に。

石畳区間で落車に巻き込まれた別府史之は再スタートを切ったが、パンクに見舞われたチームメイトにホイールを差し出して後退。集団復帰は叶わず、165km地点でレースを終えた。

バイクを担いでコッペンベルグを上るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)バイクを担いでコッペンベルグを上るファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク) photo:Cor Vosレースが動きを見せたのは、ゴールまで77kmを残したパテルベルグ(最大20.3%)。メイン集団からシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)、レイフ・ホステ(ベルギー、サイレンス・ロット)、マヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)ら6名が飛び出し、続く最大の難所コッペンベルグ(最大22%)で先頭2名を捉えた。

激坂コッペンベルグで王者トム・ボーネン(ベルギー、クイックステップ)がアタックすると、注目のフィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)が応戦し、二大選手が肩をつき合わせなが難所をクリア。そんな中、ファビアン・カンチェラーラ(スイス、サクソバンク)はチェーン切れのためバイクを担ぎ、その後リタイアした。

観客が詰めかけたベレンドリシュをクイックステップ先頭で上る観客が詰めかけたベレンドリシュをクイックステップ先頭で上る photo:Cor Vos一旦集団に戻ったボーネンとポッツァートのバトルは、ゴール62km手前のターインベルグ(最大15.8%)で巻き起こった。両者は再びハイペースで急坂を駆け上がったが、やがてはメイン集団に戻る。

大きな転機を迎えたのが、ゴール42km手前のベレンドリシュ(最大12.3%)。先頭グループはホステ、シャヴァネル、クインツィアートら4名に絞られ、集団ではポッツァートがアタックし、ボーネンとデヴォルデルが合流。このボーネングループは、デヴォルデルの献身的な牽きにより、ゴール35km手前で先頭を捉えた。

先頭を逃げるマヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ)先頭を逃げるマヌエル・クインツィアート(イタリア、リクイガス)とシルヴァン・シャヴァネル(フランス、クイックステップ) photo:Cor Vos圧倒的な数の利を得たクイックステップは攻撃の手を緩めず、先頭グループからシャヴァネルとクインツィアートがアタック。しかしボーネンのマークに専念するポッツァートは追走グループを引かずにペースダウン。自ら動かないポッツァートをよそに、ゴール25km手前のエイケンモレン(最大12.5%)でデヴォルデルが集団から飛び立った。

ボーネンが厳しいマークに苦しむ中、デヴォルデルがエイケンモレンで飛び出すのは昨年と同じパターンだ。デヴォルデルはプレベン・ファンヘッケ(ベルギー、トップスポート・フラーンデレン)と先頭2名を捉えた。

エイケンモレンで集団から飛び出すステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)エイケンモレンで集団から飛び出すステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vosそして何重にも観客が詰めかけたミュール・カペルミュール(最大19.8%)で、デヴォルデルは再びアタック。食らいつくクインツィアートを振り切り、熱狂に包まれたミュールを今年もデヴォルデルが単独で駆け上がった。

勝ちパターンに持ち込んだデヴォルデルの独走は止まらず、後続を1分まで引き離し、大歓声に包まれたゴール地点に単独で登場。天を指差し、2年連続でトップでゴールラインを駆け抜けた。

独走でミュールを駆け上がるステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)独走でミュールを駆け上がるステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vosクインツィアートら3名を飲み込んだ30名ほどのメイン集団は、フアンアントニオ・フレチャ(スペイン、ラボバンク)らがカウンターアタックを仕掛けたが決まらず、集団のままゴールへ。「(エースの)フースホフトがGOサインを出した」というハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)はラスト1kmでロングスパートを仕掛け、ミラノ〜サンレモに続いて、ビッグクラシック2大会連続の2位に入った。

最終ストレートでのグレゴリー・ラスト(スイス、アスタナ)やトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)の側壁激突落車を避けた集団は、スプリントを制したフィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)が先頭でゴール。サイレンス・ロットは何とか表彰台を掴んだ。


デヴォルデル、ノルフに捧げるロンド2連覇
ゴール後、デヴォルデルは「奇妙なレース展開だった。ベレンドリシュで飛び出したボーネンとポッツァートに合流して、そこから僕が牽いて先頭を捉えた。しばらく脚を休めてから、ミュールで最後のカードを切ったんだ」とコメント。「ミュールを先頭で通過した時点で、勝利を確信した」という。

天を指差してゴールするステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)天を指差してゴールするステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ) photo:Cor Vos両手で天を指差したデヴォルデルの視線の先には、ツアー・オブ・カタールで就寝中に心臓発作により亡くなったフレデリック・ノルフ(ベルギー)の姿があった。「(彼の死から数えて)最初の勝利は、彼に捧げたいと思っていた」と語る。かつて一緒にトレーニングを積んだ仲間に、フランドル最大のタイトルを捧げた。

史上6人目となるロンド2連覇を達成したデヴォルデル。「ロンドは僕にとって最も重要なレース。あと数年は集中して挑みたい」と、来年はフィオレンツォ・マーニが50年代にマークした大会3連覇の最高記録に挑む。

表彰台、左から2位ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)、優勝ステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)、3位フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)表彰台、左から2位ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)、優勝ステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)、3位フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット) photo:Cor Vosデヴォルデルの勝利に大きく貢献したのが、強力なボーネンの存在だろう。20位でレースを終えたボーネンは「今日はポッツァートが僕の影のように付きまとった。僕とポッツァートは互いにマークして攻撃しあい、振り切ることが出来なかった。(コッペンベルグとターインベルグでボーネン、ベレンドリシュでポッツァートが)アタックした時は2人とも集団から抜け出したけど、彼は協力して前を追うことを拒否した。その時点で僕のドアは閉ざされた。でもステインとシルヴァンには有利な展開になったよ」と、過去に2回優勝している王者は語る。


選手コメントはフランス・レキップ紙より。


ロンド・ファン・フラーンデレン2009結果
1位 ステイン・デヴォルデル(ベルギー、クイックステップ)6h01'04"
2位 ハインリッヒ・ハウッスラー(ドイツ、サーヴェロ)+59"
3位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、サイレンス・ロット)
4位 マルティン・マースカント(オランダ、ガーミン)
5位 フィリッポ・ポッツァート(イタリア、カチューシャ)
6位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、サクソバンク)
7位 マークス・ブルグハート(ドイツ、チームコロンビア)
8位 ビョルン・ルークマンス(ベルギー、ヴァカンソレイユ)
9位 マルティン・エルミガー(スイス、アージェードゥーゼル)
10位 ベルト・デワーレ(ベルギー、ランドバウクレジット)
DNF 別府史之(日本、スキル・シマノ)

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