アマチュアレースが熱かった2026年を締めくくる大一番、今年も最後のビッグレースはツール・ド・おきなわだ。「ホビーレーサーの甲子園」の異名を取る市民レースで栄冠を掴むのはいったい誰だろう?市民200kmの優勝候補たちに今の調子と意気込み、展望を聞いた。

2年越しで市民200に挑戦するサイクリストを強烈な朝陽が迎える photo:Makoto AYANO
ツール・ド・おきなわ市民レース。常夏の沖縄に用意された最高の舞台で、日頃の鍛錬の成果を見せるとき。
今年の大会期間は雨の心配が無く、レース当日の天気予報は晴れ時々曇。気温は27℃まで上がる夏日の予報になっている。大会キャッチフレーズの「熱帯の花となれ、風となれ」の言葉の通り、レースは真夏日のもと、沖縄特有の暑さのなかの過酷なサバイバルになること必須だ。
今年のここまでのレースをもとに市民200kmレースの有力候補を挙げていこう。

2025年の市民200km 先頭グループは最後の羽地への登りまでに9人の集団に絞られた photo:Makoto AYANO
まずは、今年においては市民レース最高峰のイベントとなったのが8月に北海道ニセコで開催されたUCIグランフォンド世界選手権だ。この大会は「UCIポイントを持たないアマチュア選手による年代別の世界選手権ロードレース」であり、ツール・ド・おきなわ市民レース200kmクラスとは参加者が大いに被る。

ニセコUCIグランフォンド世界選手権で3位となった岡泰誠(左/イナーメ信濃山形) photo:Makoto AYANO
男子は日本から世界チャンピオンを生み出せなかったが、そのなかで日本人最上位だったのがグランフォンド140km 19〜34歳カテゴリーで3位となった岡泰誠(イナーメ信濃山形)だ。19〜34歳カテゴリーは最速のエイジグループであり、その価値は非常に大きい。
Astemo宇都宮ブリッツェンの岡篤志の兄であり、現在はバイクフィッターとコーチ業を営む岡は、ここ数年こそレースで目立った成績が無かったが、2018年ニセコクラシック総合優勝の経験をもつベテラン。現在フィジカルは非常に強く好調で、自転車コーチであるだけに自身の力を発揮する術を誰よりも知っている。

男子140km 19-34歳 表彰式 photo:Syunsuke FUKUMITSU
岡は言う。「今年はJBCFのシーズン終了が早かったので例年に比べておきなわの準備が良くできたと思います。2018年の優勝者である紺野元汰が当時こなしたトレーニングメニューを、そのまま自分でもこなすということをやってきました。彼には才能で遠く及びませんが、元チームメイトである彼からもアドバイスをもらって練習を積み上げてきました。トレーニングも時間や質ではなく、実際のレースの距離を再現するように乗り込み、厳しいトレーニングができました」と話す。今までのおきなわ市民200kmでは良いリザルトは無いが、今年の台風の目になるだろう。

市民レース200kmを制した大前翔(Roppongi Express) photo:Makoto AYANO
先に岡を紹介したが、昨年覇者の大前翔(Roppongi Express)こそ今年も優勝候補の筆頭だろう。ただし昨年のレースは最後の登りで井上亮(Magellan Systems Japan)のアタックに遅れを取り、それを挽回してからの小集団スプリントを制しての辛勝だった。

最後の羽地の登りでペースを上げる井上亮(Magellan Systems Japan)に遅れを取った大前翔(Roppongi Express) photo:Makoto AYANO
大前「去年は初出場で運良く優勝することができましたが、井上さんに登りでちぎられて、下りでなんとか追いついてからスプリントに持ち込んで勝てただけなので、ディフェンディングチャンピオンとしての気負いはありません。井上先生が一番強いことは明らかなので、挑戦者のつもりで臨みます。じつは2週前まで股擦れに苦しみましたが、今は調子はいいです。登りのタイムも出ています。今、自分で開発したハイカーボ(炭水化物)ドリンクのみで補給を行っています。商品化も間もなくなので、その有効性を証明するためにも勝ちたいですね(笑)」。
多少登りで遅れてもスプリントになれば必ず勝てるのが大前の強み。他の選手たちはいかに大前をフィニッシュまで連れて行かないかを考えて動く必要がある。

集団先頭で普久川ダムへの登りをクリアする高岡亮寛 photo:Makoto AYANO
自身が大前をエースに推しつつも、自らもあなどれない強さなのが「ミスターおきなわ」こと高岡亮寛(Roppongi Express)だ。2007年の初勝利から数えて、過去に市民200kmレースに勝利すること7回。昨年も最終盤の登りで遅れたものの下りで追いつき、フィニッシュまでラスト500mで先頭に躍り出るサプライズアタックを仕掛けて大前をアシスト。チームとしての勝利に貢献した。

高岡亮寛(Roppongi Express)が積極的にペースを作り集団を絞り込む photo:Makoto AYANO
49歳を迎えた今年も体力の衰えを感じさせないリザルトを残している高岡。10月のオーストラリア開催のUCIグラベル世界選手権でも45〜49歳カテゴリーで優勝し、世界チャンピオンに輝くなど、その実力に磨きをかけている。スプリント勝負では分がないが、逃げて独走に持ち込むこともでき、直感で動いて自在にレースを展開する巧さがある。

UCIグラベル世界選手権男子45-49歳で優勝した高岡亮廣(Roppongi Express)
「毎年のことなんですが、10月はすごく調子が良いんです。10月のグラベル世界選での優勝が証明したように、自分でも驚くほど走れている。ここ数年で今がいちばん調子がいいんじゃないか?と思うほど調子がいいです」と自信をのぞかせる。
「とはいえ加齢と共に毎年数%づつ落ちているはずの体力を、どう埋め合わせることができるのかですね」とも。
大前と高岡。今もっとも強い2人と、登りに強い木村裕己が揃うのがRoppongi Expressだ。
「チームとしては大前翔との2枚看板で闘えるのが強みであり、楽しみ。お互いの役割分担はとくに決めず、阿吽の呼吸で動けるんです。チームとしてどちらかが勝つというのが最終目標です」。

アタックした井上亮をすかさずチェックする大前翔と高岡亮寛(Roppongi Express) photo:Makoto AYANO
「大前君のほうが僕より確実に強い」と話す高岡だが、こうも言う。「大前翔、井上亮、岡泰誠が中心になってレースを動かすでしょう。展開次第で自分にも数%勝つチャンスはあると思っています。僕は2007年の初優勝以来、連勝した年もありますが、4年おきに勝つパターンがあるんです。前回勝ったのが2022年なので、今年は4年め。ジンクスを信じたいですね(笑)」。

「一番強かった」と称されたディフェンディングチャンピオンの井上亮(Magellan Systems Japan)。同じくS-Works Tarmac SL8に乗る photo:Makoto AYANO
優勝候補たちに話を訊くと、井上亮(Magellan Systems Japan)が最強だとの評が高い。2023年のチャンピオンである井上は、今年もこれまで他のレースに一切出場せず、ツール・ド・おきなわにだけ出場する。しかし毎年おきなわにターゲットを絞り、調子をピークまで上げてくるのは過去数年の例を見ても明らかだ。

羽地の登りで唯一追従した畝原尚太郎を振り切ろうとする井上亮(Magellan Systems Japan) photo:Makoto AYANO
昨年、番越トンネル付近の登りで猛烈なアタックをした井上の、その後輪に付けたのは畝原尚太郎(チームGINRIN熊本) だけ。しかしピークを越えてからのダウンヒル区間で後続に追いつかれ、井上の連覇は叶わなかった。レース最終盤の展開としては、井上がそのまま逃げ切ることができるかどうかだ。
高岡は「レースにまったく出なくてもおきなわに調子を確実に合わせてくる最強で不気味な存在」と井上のことを形容する。「マグロ」の異名をとるその走りは積極果敢で、無駄脚と言われようが執拗にアタックを繰り返し、集団を崩壊させていく井上のスタイルは変わることがない。
ただし今年はチームワークに秀でたRoppongi Expressが2枚以上のカードを持っていることに対し、井上も無策では臨まないだろう。いや、策をもった井上がその爆発力を効果的に使う走りをするなら、展開は変わったものになるかもしれない。

市民200km表彰 優勝大前翔(Roppongi Express)、2位石井雄悟(MASXSAURUS)、3位畝原尚太郎(チームGINRIN熊本) photo:Makoto AYANO
そしてもうひとり、今年はレースにほとんど出ていない優勝候補がいる。昨年2位の石井雄悟(ART SPORTS BIKES)だ。石井は昨年1月にキャノンボール(東京ー大阪約550kmを24時間以内に走る長距離ライド)にトライして両脚の四頭筋を痛め、1年を棒に振った。今やようやく自転車に乗れるまでになったというが、片脚はまだ完全な状態ではないという。「ようやくレースで戦える状態にはなったと思います」と話すが、それでも昨年は大前にスプリントで破れての2位。レース前日に名護の会場入りしてインタビューに応えてくれた様子からは無敵を誇った2年前のような闘志を感じた。

新ジャージ姿が見慣れない石井雄悟(ART SPORTS BIKE)は怪我からの復活レースだ photo:Makoto AYANO
石井「昨年おきなわに初めて出場して、コースを覚えました(そして2位)。勝手がわかったので、今年はうまく走れると思います。先日は井上亮さんと一緒に練習したんですが、この人はバケモノかと思いました。一緒に走っていない他の人のレベルは知りません。目標はトップ10ぐらいとしておきます」。
この連日は夏のような暑さの沖縄。雨の心配は一切無い。ただし土曜日がそうであったように日曜日も風速7mほどの強風が吹くという予報があり、そうなればレース展開にも影響がありそうだ。
text:Makoto AYANO

ツール・ド・おきなわ市民レース。常夏の沖縄に用意された最高の舞台で、日頃の鍛錬の成果を見せるとき。
今年の大会期間は雨の心配が無く、レース当日の天気予報は晴れ時々曇。気温は27℃まで上がる夏日の予報になっている。大会キャッチフレーズの「熱帯の花となれ、風となれ」の言葉の通り、レースは真夏日のもと、沖縄特有の暑さのなかの過酷なサバイバルになること必須だ。
今年のここまでのレースをもとに市民200kmレースの有力候補を挙げていこう。

まずは、今年においては市民レース最高峰のイベントとなったのが8月に北海道ニセコで開催されたUCIグランフォンド世界選手権だ。この大会は「UCIポイントを持たないアマチュア選手による年代別の世界選手権ロードレース」であり、ツール・ド・おきなわ市民レース200kmクラスとは参加者が大いに被る。

男子は日本から世界チャンピオンを生み出せなかったが、そのなかで日本人最上位だったのがグランフォンド140km 19〜34歳カテゴリーで3位となった岡泰誠(イナーメ信濃山形)だ。19〜34歳カテゴリーは最速のエイジグループであり、その価値は非常に大きい。
Astemo宇都宮ブリッツェンの岡篤志の兄であり、現在はバイクフィッターとコーチ業を営む岡は、ここ数年こそレースで目立った成績が無かったが、2018年ニセコクラシック総合優勝の経験をもつベテラン。現在フィジカルは非常に強く好調で、自転車コーチであるだけに自身の力を発揮する術を誰よりも知っている。

岡は言う。「今年はJBCFのシーズン終了が早かったので例年に比べておきなわの準備が良くできたと思います。2018年の優勝者である紺野元汰が当時こなしたトレーニングメニューを、そのまま自分でもこなすということをやってきました。彼には才能で遠く及びませんが、元チームメイトである彼からもアドバイスをもらって練習を積み上げてきました。トレーニングも時間や質ではなく、実際のレースの距離を再現するように乗り込み、厳しいトレーニングができました」と話す。今までのおきなわ市民200kmでは良いリザルトは無いが、今年の台風の目になるだろう。

先に岡を紹介したが、昨年覇者の大前翔(Roppongi Express)こそ今年も優勝候補の筆頭だろう。ただし昨年のレースは最後の登りで井上亮(Magellan Systems Japan)のアタックに遅れを取り、それを挽回してからの小集団スプリントを制しての辛勝だった。

大前「去年は初出場で運良く優勝することができましたが、井上さんに登りでちぎられて、下りでなんとか追いついてからスプリントに持ち込んで勝てただけなので、ディフェンディングチャンピオンとしての気負いはありません。井上先生が一番強いことは明らかなので、挑戦者のつもりで臨みます。じつは2週前まで股擦れに苦しみましたが、今は調子はいいです。登りのタイムも出ています。今、自分で開発したハイカーボ(炭水化物)ドリンクのみで補給を行っています。商品化も間もなくなので、その有効性を証明するためにも勝ちたいですね(笑)」。
多少登りで遅れてもスプリントになれば必ず勝てるのが大前の強み。他の選手たちはいかに大前をフィニッシュまで連れて行かないかを考えて動く必要がある。

自身が大前をエースに推しつつも、自らもあなどれない強さなのが「ミスターおきなわ」こと高岡亮寛(Roppongi Express)だ。2007年の初勝利から数えて、過去に市民200kmレースに勝利すること7回。昨年も最終盤の登りで遅れたものの下りで追いつき、フィニッシュまでラスト500mで先頭に躍り出るサプライズアタックを仕掛けて大前をアシスト。チームとしての勝利に貢献した。

49歳を迎えた今年も体力の衰えを感じさせないリザルトを残している高岡。10月のオーストラリア開催のUCIグラベル世界選手権でも45〜49歳カテゴリーで優勝し、世界チャンピオンに輝くなど、その実力に磨きをかけている。スプリント勝負では分がないが、逃げて独走に持ち込むこともでき、直感で動いて自在にレースを展開する巧さがある。

「毎年のことなんですが、10月はすごく調子が良いんです。10月のグラベル世界選での優勝が証明したように、自分でも驚くほど走れている。ここ数年で今がいちばん調子がいいんじゃないか?と思うほど調子がいいです」と自信をのぞかせる。
「とはいえ加齢と共に毎年数%づつ落ちているはずの体力を、どう埋め合わせることができるのかですね」とも。
大前と高岡。今もっとも強い2人と、登りに強い木村裕己が揃うのがRoppongi Expressだ。
「チームとしては大前翔との2枚看板で闘えるのが強みであり、楽しみ。お互いの役割分担はとくに決めず、阿吽の呼吸で動けるんです。チームとしてどちらかが勝つというのが最終目標です」。

「大前君のほうが僕より確実に強い」と話す高岡だが、こうも言う。「大前翔、井上亮、岡泰誠が中心になってレースを動かすでしょう。展開次第で自分にも数%勝つチャンスはあると思っています。僕は2007年の初優勝以来、連勝した年もありますが、4年おきに勝つパターンがあるんです。前回勝ったのが2022年なので、今年は4年め。ジンクスを信じたいですね(笑)」。

優勝候補たちに話を訊くと、井上亮(Magellan Systems Japan)が最強だとの評が高い。2023年のチャンピオンである井上は、今年もこれまで他のレースに一切出場せず、ツール・ド・おきなわにだけ出場する。しかし毎年おきなわにターゲットを絞り、調子をピークまで上げてくるのは過去数年の例を見ても明らかだ。

昨年、番越トンネル付近の登りで猛烈なアタックをした井上の、その後輪に付けたのは畝原尚太郎(チームGINRIN熊本) だけ。しかしピークを越えてからのダウンヒル区間で後続に追いつかれ、井上の連覇は叶わなかった。レース最終盤の展開としては、井上がそのまま逃げ切ることができるかどうかだ。
高岡は「レースにまったく出なくてもおきなわに調子を確実に合わせてくる最強で不気味な存在」と井上のことを形容する。「マグロ」の異名をとるその走りは積極果敢で、無駄脚と言われようが執拗にアタックを繰り返し、集団を崩壊させていく井上のスタイルは変わることがない。
ただし今年はチームワークに秀でたRoppongi Expressが2枚以上のカードを持っていることに対し、井上も無策では臨まないだろう。いや、策をもった井上がその爆発力を効果的に使う走りをするなら、展開は変わったものになるかもしれない。

そしてもうひとり、今年はレースにほとんど出ていない優勝候補がいる。昨年2位の石井雄悟(ART SPORTS BIKES)だ。石井は昨年1月にキャノンボール(東京ー大阪約550kmを24時間以内に走る長距離ライド)にトライして両脚の四頭筋を痛め、1年を棒に振った。今やようやく自転車に乗れるまでになったというが、片脚はまだ完全な状態ではないという。「ようやくレースで戦える状態にはなったと思います」と話すが、それでも昨年は大前にスプリントで破れての2位。レース前日に名護の会場入りしてインタビューに応えてくれた様子からは無敵を誇った2年前のような闘志を感じた。

石井「昨年おきなわに初めて出場して、コースを覚えました(そして2位)。勝手がわかったので、今年はうまく走れると思います。先日は井上亮さんと一緒に練習したんですが、この人はバケモノかと思いました。一緒に走っていない他の人のレベルは知りません。目標はトップ10ぐらいとしておきます」。
この連日は夏のような暑さの沖縄。雨の心配は一切無い。ただし土曜日がそうであったように日曜日も風速7mほどの強風が吹くという予報があり、そうなればレース展開にも影響がありそうだ。
text:Makoto AYANO
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