マヴィックが展開するグラベル用ホイール ALLROAD(オールロード)シリーズに登場したカーボンモデルをインプレッション。エアロな42mmハイト、内幅25mmリムのスペックで22万円というリーズナブルな価格のホイールの使い勝手と実力を、舗装・未舗装路で徹底的に試した。



マヴィック ALLROAD SL CARBON に32CのパナレーサーAGILEST DUROタイヤを装着 photo:Makoto AYANO

これまでのALLROADシリーズはベースグレードからS、SLまでがアルミリムで展開されてきたが、このALLROAD SL CARBONはシリーズ最高峰に位置するハイスペックなカーボンホイールとなる。

UDカーボンリムに再帰反射プリントによるALLROADロゴ photo:Makoto AYANO

ALLROAD SL CARBONの特徴は、まず内幅25mmのワイドフックレスリム。グラベルシーンで主流となっている40〜50Cのタイヤや、ロードエンデュランスの32Cタイヤなどワイド化が進むタイヤの性能を引き出せる設計だ。それによって実現する高いトラクション性や振動吸収性が、長距離エンデュランスやグラベルライドでアドバンテージとなる。

UDカーボンリムにロゴが再帰反射プリントされる
25mm内幅のフックレスリム。リムテープを使用する



マヴィックの純ロード用ホイールでは採用されないフックレスをこのオールロードシリーズでは採用している。これはワイドタイヤを低圧で運用することからリムへの負担が少ないためだ。フックレス設計もまたタイヤの性能を発揮させられ、かつリムを軽量に仕上げられるというメリットがある。

42mmハイトのリムにはロードモデルのCOSMICのようなエアロ形状が与えられ、高速化が進むグラベルレースに適応する。ASTMカテゴリー2に準拠しつつ、通常の重量制限が120kgのところ、実に135kgまで対応できる堅牢性を備える。激しい衝撃に耐え、荷物フル積載パッキングの重量にも耐えるホイールを実現している。

オーバーサイズのID360ハブを採用 photo:Makoto AYANO

ハブボディはオーバーサイズ設計のInfinity Platform形状。QRMオートベアリングプリロードテクノロジーやInstant Drive 360フリーホイールというマヴィックの上位モデルと共通の仕様が採用される。スポークもマヴィックオリジナルで特許取得済みのスチール製ストレートプルエアロモデルが採用される。ホイール重量は前720g、後830gで、前後セットで1,550g。価格は220,000円(税込)。

マヴィックオリジナルの特許取得済みスチール製ストレートプルエアロスポーク
マヴィック純正のTLバルブの使い勝手も良い



本記事では舗装路でのロードライド、未舗装路でのグラベルライドでの異なるシーンを想定しての複数のテストライドを実施。それぞれの使い勝手を含めたインプレッションをお届けする。テスターは近年ロング系エピックライドやグラベルレース参戦など、オールロードバイクの研究に余念のないCW編集長の綾野真がつとめる。

グラベルライドでテスト

インプレを担当した綾野真(CW編集部) photo:Gakuto Fujiwara

グラベルレースはまだ国内に少ないものの、4年連続のアンバウンドグラベル参戦と、最近は速い仲間たちとのライドのハイスピード化の楽しさもあって、やはりグラベルにもエアロホイールを導入したいと考えていたところだった。そこへきて42mmハイトのALLROAD SLの登場は魅力的だった。

ワイドタイヤ対応の内幅25mmリムはグラベルホイールの今の標準で、マヴィックおなじみのID360ハブに40Tラチェット、エアロスポーク搭載のスペックで、グラベルとロードの両方で使い回せることも考えれば、セット価格22万円は非常に魅力的なプライスだと感じる。それでオン・オフ両用途で問題なく使えるのか? が深堀りしたいポイントだ。

COSMIC SLR用ハブ(左)に比べて明らかに径の太いALLROAD SLのハブ(右) photo:Makoto AYANO

細部を良くみるとハブがオーバーサイズの太めなものになっていたり、スポークもロードモデルより強度の高そうな形状になっていたりと、よりヘビーデューティな仕様になっていることが分かる。マヴィックのホイールは一見するとモデル間でパーツが共用されてコストダウンが図られているように思ってしまうが、実際はホイールごとに構成部品が違い、細かく造り分けられているのだ。

マヴィック ALLROAD SL CARBON+パナレーサーGRAVELKING X1 40C photo:Makoto AYANO

パナレーサーGRAVELKING X1 40Cのタイヤのセットアップは簡単だった。フックレスリムだからといって特別な感じはなく、タイヤサイドがすっきり立ち上がるシェイプになる。

ここからは普段使っている32mmハイトのグラベルホイールから乗り換えての感覚差を綴ろう。前後セット1,550gの重量は、特別軽くも重くもないが、ハイスペックなカーボンホイール群のなかでは「やや重め」の値と言えると思う。

エアロ性能を感じながらグラベル快走するのはディープリムホイールならでは photo:Gakuto Fujiwara

漕ぎ出しは特別軽さを感じず、32mmハイトと比べればリム高のあるディープリムならではの立ち上がりの遅さを感じるものだった。しかしいったんスピードに乗せて巡航が始まると、すぐに速度維持が気持ちのいい領域に入る。ソロライドでは感じにくいが、数人のグループライドで速めのスピードをキープする乗り方だと非常に快適に進んでくれる。

一方で細かい切り返しハンドリングや加減速を繰り返す乗り方にはやはりリムハイトの低いモデルに分があると感じる。このホイールはシクロクロスにも流用できるか?と考えながらライドしたが、軽いCXタイヤを使ってもそこは得意分野ではなさそうだ。それに内幅25mmリムだとタイヤが規定値より太くなってしまう。

25mm内幅のフックレスリムならではのタイヤの接地感がある photo:Makoto AYANO

ガレた林道や下りや木の根っこが連続するトレイルも激しく攻めてみたが、ホイールは頑丈で、壊れそうな気配はなかった。かつ適度な乗り心地の良さを感じるため、頑丈ながらも剛性感は低めに抑えたスポークテンションが採用されているようだ。

スピードを保つ高い巡航性能を感じながら走る photo:Gakuto Fujiwara

サスペンションの無いバイクでオフロードを攻めるグラベルライドはホイールにとって最も過酷な乗り方だと思っている。ALLROAD SLの重量制限135kgはMTBホイールのCROSSMAXと同じ数値であり、それだけ強度的な裏付けがあるということ。今まで1,300g台の軽量グラベルホイールを使用してきてフレが出てしまった経験があると、ALLROAD SLのタフさが頼もしく感じる。つい軽さのスペックで選びがちなホイールだが、やはり乗り方に見合った強度は必要で、重量増が強度アップにつながると考えるべきだろう。

高速巡航に入るほどにエアロホイールの良さが活きてくる photo:Gakuto Fujiwara

42mmのリムハイトはエアロに優れるという点もあるが、同時にスポークが短くなり、高い強度で堅牢に組めるハイトであるとも言える。オリジナルのエアロスポークもエアロ効果だけでなく、強度を発揮する形状のスチール製で、ニップルも外出しでメンテナンス性に優れる構造と形状になっている。ホイール全体に感じるタフネスは、そうした構成パーツによっても向上していると言えそうだ。

オンロードでテスト

エアロ形状の42mmハイトに内幅25mmフックレスというリムプロファイルはロード用ホイールとしても魅力的なスペックということで、ロードタイヤを組み付けてのオンロードライドでも試してみた。

ロードタイヤを履かせればオールロードバイクにマッチする

32Cタイヤを装着したALLROAD SL CARBONをウィリエール FlanteSLRにセットした状態 photo:Makoto AYANO

マヴィック・ジャパンから貸与されたホイールにはパナレーサーAGILEST DURO TLR 32Cがセットされていた。そしてちょうどタイヤテストを行っていた30Cと32CのハッチンソンBLACKBIRD ALLSEASONにも交換してみる。どの組み合わせもポンプアップでビードがスムーズに上がり、問題なかった。

32Cタイヤを装着して実測32.5mmとなった
30CのハッチンソンBLACKBIRD ALLSEASONを装着。タイヤサイドがすっきり立ち上がる



内幅25mmリムには30Cタイヤがミニマムな太さとなる。注意したいのはフックレスリムのため、タイヤにもフックレス対応の最新規格の製品を使用すること。これは厳守すべきポイントだ。旧規格のロードタイヤだと走行中に外れる危険があるためだ。

体重60kgのライダーなら30Cや32Cタイヤの空気圧は4気圧程度になる。それがワイドリム+ワイドタイヤの適正空気圧で、空気量の多さから転がり抵抗が低くなり、舗装路では非常に滑らかに走る。路面が荒れていても凹凸をいなすようにスムーズに走ってくれる。

32CのハッチンソンBLACKBIRD ALLSEASONを装着し、ロードバイクにセット photo:Makoto AYANO

今回は相性の良さそうな(丈夫で少し重めの)エンデュランス系タイヤをセットして走ったが、軽量なレーシングタイヤをセットすればロードレースにも対応できるくらいの走りが可能だと思わせる。もちろん他社の1,400g台の(高価な)ハイエンド系レーシングホイールと比較すれば違いはあるのだろうが、前後セットで150〜200g程度の重量増はあるものの、同様の気持ち良い走りを味わうことができるだろう。

ALLROAD SL CARBONに32Cロードタイヤを履かせて山岳ロングライドを走った photo:Masamichi Yamasaki

「重量制限135kgの頑丈さ」は、オンロードの場合はバイク重量や体重のかさむ用途にも対応できるため、体重があるユーザーや、荷物を多く積載するバイクパッキングやキャンプツーリング、タンデム等のハードユースにも対応できるだろう。

リムにはマヴィックの誇るFOREテクノロジーは採用されず、したがってリムテープが必要なホイールとなっている。これについてはネガ・ポジ両面あって、もちろんリムテープレスよりトラブル発生の割合は高まるものの、30C以上のワイドタイヤを使用する前提からは空気圧は4気圧程度となるため、スポーク穴部のリムテープの陥没やズレに由来するエア漏れのリスクはおのずと低くなっている。もちろんそれらのトラブルと無縁のリムテープレスホイールのほうが望ましいことに変わりはないが、FOREテクノロジーを採用しないことでのコストダウンによって手軽な価格となっていると捉えたい。

そしてフックレス構造も製造工程が簡易になることで生産コストが低く抑えられるため、それらの相乗効果でマヴィックの上位グレードとしては破格な22万円という価格設定になっているのだ。

マヴィック ALLROAD SL CARBON +パナレーサーAGILEST DUROタイヤを装着 photo:Makoto AYANO

ロードホイールとしてのALLROAD SLは、最速・最軽量のホイールではないものの、十分すぎる強度や堅牢性、タフネスをもった扱いやすいホイールでありつつ、内幅25mmというワイドリムによって30C以上のワイドタイヤと相性の良いエアロカーボンホイールと言えるだろう。オールロードやツーリング的な使い方はもちろん、デイリートレーニング用途に割り切ってのロードホイールとして選ぶのも良さそうだ。

繰り返すが、ロードホイールとして使用する際はフックレスリムには最新規格のフックレス対応タイヤを選ぶことを守って欲しい。マヴィックのホイールはETRTO規格に準処しているが、いまだに市場には旧規格のロードタイヤが流通していて、ユーザーが気づかずに購入することで事故のリスクが生じる状態にある。タイヤを選ぶ際はプロショップのアドバイスを受けるようにしたい。

マヴィック ALLROAD SL CARBON
素材: 100%UDカーボンファイバー
タイプ:フックレス、USTチューブレスレディ
高さ:42mm
リム内幅:25mm
スポーク:ストレートプルエアロスポーク
ハブボディ素材:アルミ
ハブ形状:infinity Platform
アクスル素材:アルミニウム
仕様:QRMオートベアリングプリロードテクノロジー、インスタントドライブ360フリーホイール
重量:1,550g(前720g、後ろ830g)
価格:220,000円(税込)

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