ロヴァール RAPIDE CLXシリーズが第三世代へ　リアより高いフロントリムとカーボンスポークを採用

ロヴァールの主力ホイール、RAPIDE CLXがフルモデルチェンジ。ライダーを先頭でフィニッシュラインに届けるべく、リアよりフロントホイールのハイトを高くする新たなアプローチと、独自のカーボンスポークの採用により、最高レベルのエアロ性能と軽量性を兼ね備えたホイールへと進化した。

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スぺシャライズドが展開するホイールブランドのロヴァール。そのラインアップの中で、多くの勝利をトップレベルのレースにおいて収めてきた中核モデルが、RAPIDE CLXシリーズだ。

2020年のデビュー以来、華々しい戦績を残してその性能を証明してきた初代。待望のチューブレス化を果たした二代目。そして今年、革新的なアプローチによって更にその性能を引き上げた第三世代が発表された。

ロヴァールがこの新型に与えた使命はシンプル。「勝利」を至上命題として、ロヴァールの有するテクノロジーの粋を集めた最先端のロードレースホイールとして送り出される。

新型となるにあたり、CLXグレードは2モデル展開に。RAPIDE CLXⅡの正統後継となるオールラウンドホイールのRAPIDE CLXⅢに加え、よりハイスピードなシチュエーションで圧倒的なアドバンテージをもたらすスプリントモデルとしてRAPIDE CLX SPRINTが展開される。

フロントをリアより高く。常識を打ち破るニューリムプロファイル

さて、既に隙の無い完成度を誇っていた前作からどうアップデートを果たしたのか。その大きな部分を占めるのが、独創的なアプローチによって設計された新たなリムプロファイルだ。

前作のRAPIDE CLXⅡをはじめ、多くのエアロホイールはフロントよりもリアホイールのリムハイトが高く設計されている。例えば前作ではフロントが51mm、リアが60mmというスペックであった。

しかし今回の新型の開発にあたり、その「常識」にロヴァールは疑問符をつけた。RAPIDE CLXとALPINISTの前後輪、それぞれをバイクに取り付けペダリングマネキンを乗車させた状態で、同社の風洞実験施設であるWin Tunnelにて計測。

前後ともRAPIDE CLXを装着した際のパフォーマンスに対し、前輪をRAPIDE CLX、後輪をALPINISTとした組合せは9割以上のパフォーマンスを発揮した。逆に、前輪をALPINIST、後輪をRAPIDE CLXとした場合では6割程度までエアロダイナミクスが悪化したという。

この実験から、ロヴァールの開発陣はフロントホイールのリムハイトをリアよりも高くすることでエアロ性能を確保しつつ、より軽量で鋭い加速を実現できると考えた。

その結果、新世代のRAPIDE CLX Ⅲは前輪を51mm、後輪を48mmに。そしてハイスピードモデルのRAPIDE CLX SPRINTは前輪を63mm、後輪を58mmに設定。

このコンセプトをベースに、新たなリムプロファイルの策定に着手。リムとタイヤを一つのシステムとしてとらえ、最高のパフォーマンスを発揮するタイヤ幅とリム内幅を探った結果、滑らかな路面でも荒れた路面においても、28mm幅のタイヤと21mm内幅のリムの組み合わせが平均して優れた結果を残したという。

更に、CTスキャンを用いて実際にリムにタイヤを装着した状態のリアルな断面画像を作成し、CFD解析にかけることでこれまでに無い精度で分析を可能とした。その結果、タイヤよりも1mm広いリム外幅に設定することで、理想的な空力特性を実現できることが判明した。

過去に類を見ない精密な計測と実験データから導き出された新たなプロファイルによって、RAPIDE CLX SPRINTはロヴァール史上最速のエアロパフォーマンスを獲得。一方、RAPIDE CLX Ⅲは前作と同等の空力特性を確保しつつ、重量を215g削減しよりオールラウンドなホイールへと進化した。

この性能が、実際にどのような結果を生み出すのか。スペシャライズドはスプリントのシミュレーションによって、その答えを示した。

1,400Wを出力する体重70kgのワールドツアーレベルのスプリンターが、残り250mで時速55kmからスプリントを開始するシミュレーションにおいて、RAPIDE CLX SPRINTは前作に対し18cmも先行。より短距離となる150mのスプリントでも8cm先着するという結果を残した。

そして、同じシミュレーションにおいてはRAPIDE CLXⅢも前作に対し250mで5cm、150mで3cmのアドバンテージを生み出す。空力が同等でも、より軽量なため加速にかかるエネルギーが少ないことがこの結果をもたらすのだという。

フロントリムがリアよりも高いことで、懸念される横風からの影響についてもロヴァールは考慮している。もともとRAPIDE CLXシリーズは横風に対するハンドリング性能を重要視して開発されてきたが、その美点は最新世代にも受け継がれている。

CLXⅢは横風からの入力自体が穏やかな特性とされ、風が吹いた際にも安定したハンドリングを実現。一方、よりリムハイトが深いCLX SPRINTは、横風からの影響を大きく受けることとなる。それでも急激にステアリングトルクが変動しないような特性、つまり挙動が予測しやすいように設計されている。

リアリムの耐リム打ちパンク性能を更に向上　

どれだけ速さを手に入れても、走れなくては意味がない。ワイドタイヤ化に伴って低圧運用が主流となった今、リム打ちパンクのリスクも大きくなっている。

ロヴァールはそのリスクを最小限に抑えるため、独自の「FLATSPOT」ビードフックを採用。これはビードフック上面を幅広くとると同時に、曲率を大径化することで、タイヤが地面とリムに挟まれた際にかかる力をより広範囲に分散する設計。

この結果、リム打ちパンクが発生するための衝撃力が39%多く必要になり、大幅にそのリスクを低減することに成功した。

さらに、タイヤ保持力にも優れているのがロヴァールのチューブレスホイールの美点だ。UCIが定めた既存の40ジュール落下テストだけでなく、独自のテスト方式を開発し、その安全性を確保している。具体的な内容としては、タイヤを装着したホイールに40ジュールから70ジュールのエネルギーを加えた角型と丸形の打撃材をそれぞれ落下させることで耐久性を計測するというもの。

ちなみに、81kgのライダーが32km/hで高さ5cmのスチール角材に進入したときの衝撃が29ジュールであり、70ジュールともなるとハンドルから手が弾かれるレベルのインパクトだという。このテストにおいてもタイヤがリムから外れず、安全に停止できる性能をRAPIDE CLXシリーズは確保しているのだ。

先進マテリアル企業との協業で生まれたオリジナルのロヴァールカーボンスポーク

大幅な進化を遂げたのはリムだけではない。今作ではついにロヴァールロードホイールとして初となるカーボンスポークを採用した。

各社のハイエンドホイールで採用されはじめ、トレンドとなっているニップル接続型のカーボンスポーク。現状、その多くを中国ブランドが供給する中、ロヴァールは新たに同郷カリフォルニア州のバークレーに拠点を構える先進マテリアルカンパニーのアリスコンポジット社とオリジナルスポークを共同開発した。

2017年に設立されたアリスコンポジットは、航空分野やスポーツ分野で活躍する先進企業。熱可塑性樹脂を用いた繊維複合材を一貫したクオリティで大量に製造可能なアディティブモールディング技術によって、これまで金属が用いられてきた領域を代替することを強みとしている。

そのアリス社には多くの熱心なサイクリストが在籍しており、その縁でスペシャライズドの開発陣と繋がりが生まれたという。本社同士が車で1時間ほどという距離の近さを活かし、緊密な連携の結果生み出されたのがオリジナルのロヴァールコンポジットスポークだ。

新型RAPIDEの為に専用設計されたスポークは、これまで採用されてきたDTスイスのAEROLITEと同等のスポーク剛性と空力性能を発揮する一方で、1本あたり1.7g軽量かつ63%の強度向上を達成。フロント18本、リア24本、合わせて42本となりスポークのみで71.4gの軽量化に貢献している。

エアロ形状のブレード部を可能な限り長く取れるように、チタン製のスポークヘッドを装着する首部分の長さで調整するのではなく、ホイールに必要なスポーク長それぞれに金型が用意されるというのも驚きだ。

この新開発のオリジナルスポーク、そして新方式のカーボンリム積層工程、より軽量化されたハブによって、前世代よりホイール全体でも大幅なダイエットを果たした。RAPIDE CLX SPRINTは1,395g（CLXⅡからマイナス125g）、CLXⅢは1,305g（CLXⅡからマイナス215g）を実現し、ボリューミーなルックスからは想像の出来ない軽量性を手にした。

手の届きやすいCLグレードも第3世代へリニューアル

最高の性能を追求したCLX SPRINTとCLXⅢに加え、セカンドグレードとして、RAPIDE CLⅢも同時にリリースされる。こちらはCLXⅢと同様のリムプロファイル（フロント51mm、リア48mm）を採用しつつ、CLXⅡの積層を用いることでその先進性をより身近なものとした。

スポークとハブは、それぞれDTスイスのコンペティションレース/350ハブに。汎用品とすることで、より扱いやすくメンテナンス性にも優れた一本となっている。重量は1,555g。
価格はRAPIDE CLX SPRINT、RAPIDE CLXⅢがフロント193,600円、リア290,400円。RAPIDE CLⅢがフロント96,800円、リア145,200円（全て税込）。

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ロヴァール　RAPIDE CLX SPRINT
重量：フロント640g、リア755g、前後セット1,395g（バルブ、テープ込）
ハブ：ロヴァール Low Flangeロードハブ
リムハイト：フロント63mm、リア58mm
リム内幅：21mm
スポーク数：フロント18本、リア24本
スポーク：アリス社ロヴァールコンポジットエアロスポーク
タイヤサイズ：28mm幅で最適化
カラー：サテンカーボン/グロスブラック、グロスカーボン/サテンホワイト
税込価格：フロント193,600円、リア290,400円

ロヴァール　RAPIDE CLX Ⅲ
重量：フロント600g、リア705g、前後セット1,305g（バルブ、テープ込）
ハブ：ロヴァール Low Flangeロードハブ
リムハイト：フロント51mm、リア48mm
リム内幅：21mm
スポーク数：フロント18本、リア24本
スポーク：アリス社ロヴァールコンポジットエアロスポーク
タイヤサイズ：28mm幅で最適化
カラー：サテンカーボン/グロスブラック、グロスカーボン/サテンホワイト
税込価格：フロント193,600円、リア290,400円

ロヴァール　RAPIDE CL Ⅲ
重量：フロント716g、リア839g、前後セット1,555g（バルブ、テープ込）
ハブ：DTスイス 350
リムハイト：フロント51mm、リア48mm
リム内幅：21mm
スポーク数：フロント18本、リア24本
スポーク：DTスイス コンペティションレース
タイヤサイズ：28mm幅で最適化
カラー：サテンカーボン/グロスブラック、グロスカーボン/サテンホワイト
価格：フロント96,800円、リア145,200円