台湾のAcerが手掛けるサイクリングガジェットブランドのエクスプローバ。コストパフォーマンスに優れるスマートローラーでお馴染みの同社が、フラッグシップ機となるNOZA Vをリリースした。インプレッションと共に最上位機を紹介しよう。



エクスプローバ NOZA Vエクスプローバ NOZA V
エクスプローバのNOZAシリーズといえば、高い精度と優れた静粛性を有しつつ、手の届きやすい価格のダイレクトドライブ式スマートローラーとして高い人気を獲得してきたブランドだ。特にNOZAは各社のフラッグシップが20万円に達するような価格が多いなか、アンダー10万円というプライスタグを提げ、多くのサイクリストの目に魅力的に映ったはずだ。

そんなNOZAシリーズに新モデルの"NOZA V"が加わった。エクスプローバが初めて用意したNOZA、その第2世代NOZA S、そして機能を省略したNOZA oneというモデルをリリースしてきたエクスプローバは、今回の新モデルをラインアップの頂点に立つハイエンド機としてローンチした。

ミドルグレードのNOZA S(右)と比較すると、ボディワークが一新されたことがわかるだろうミドルグレードのNOZA S(右)と比較すると、ボディワークが一新されたことがわかるだろう
使い勝手を高めるボディワークにアップデート

これまで発表されてきた3機種、NOZAとNOZA S、NOZAのボディはそれぞれ似ており、各モデル間の違いはラベルなどを観察する他なかった。しかし、NOZA Vはひと目見るだけで、これまでのNOZAシリーズとは一線を画したボディシェイプ。従来の3機種とまったく違うモデルというのはすぐさま伝わるはずだ。

露出していたホイールとベルトはケースの内側に隠され、ドラム形状の負荷装置なども一体感のある作りに。機能面で大きなアップデートは取手が設けられたこと。20kgにも及ぶ重量のローラー台を移動させる時に、取手の有無は想像以上に利便性を左右する。

持ち手が備えられたことでユーザビリティが向上した持ち手が備えられたことでユーザビリティが向上した LEDによってローラー台の状態を把握することができるLEDによってローラー台の状態を把握することができる

フライホイール等もケースに収納されたフライホイール等もケースに収納された シマノ11速(一部12速)やスラム11速に対応するシマノ11速(一部12速)やスラム11速に対応する


実際に今回実施したインプレッションではNOZA VとNOZA Sを交互に入れ替えてテストを繰り返したのだが、NOZA Vを移動させるのはかなり楽で、取手の有り難さを身をもって感じた。もちろん取手がないからといって移動させられないわけではないけれども、どこを掴めばバランスがいいか、スプロケットで体や服を汚さずに済むか、といったことを考えずに済むのは、取手が備えられていればこそ。

さらに今回のアップデートでは、折りたたみ式のフロントレッグを採用することでユーザビリティを高めた。リアレッグは折り畳み式では無いものの幅狭でコンパクトなフットプリントとされており、フロントレッグを折り畳めば収納場所に困りにくくなっている。使用するごとにローラー台を片付けるサイクリストにとっては大きな進化だ。

NOZA Vではレッグを折りたたむことが可能となったNOZA Vではレッグを折りたたむことが可能となった
レッグを折りたたむとコンパクトになるため収納場所に困りにくいレッグを折りたたむとコンパクトになるため収納場所に困りにくい
インドアサイクリングの没入度を高めるフレキシブルなレッグ

加えてレッグ部分に関しては接地部分に柔軟性に優れるラバー素材が採用され、片側2.5°(左右合計で5°)の傾きを実現したことも特徴だ。使用した際のファーストインプレッションは「違和感なくスムーズに乗りこなせる」というもの。ペダリングに合わせてローラー台が自然に傾くため、バーチャルサイクリングなどにより没頭できる印象だ。

今回のテストに合わせて一緒に借り受けたNOZA Sに乗り換えてみると、ペダリングに合わせて動いてくれない固定ローラーの感覚を思い出す。違和感というよりも、「固定ローラーってこういうものだよね」という慣れであり、それに適応したペダリングを自然と行っていたようだ。

柔軟性のあるラバー素材台座とされたことで、左右合計5°の傾きを実現した柔軟性のあるラバー素材台座とされたことで、左右合計5°の傾きを実現した
NOZA Vでも固定ローラーに合わせた乗り方をしてしまったがために、自然なフィーリングに感じた可能性も捨てきれないため、大袈裟にバイクを揺らすような乗り方をシッティングで試してみたが、ファーストインプレッションは裏切られなかった。

一方で、バイクとローラー台が傾くからと調子に乗ってダンシングでわざとバイクを振るのはおすすめしない。左右合計5°のキャパシティを超えてしまい安定感を欠く上、ペダリングがギクシャクしてしまう。

NOZA Vは前脚が広く、後ろ脚が狭く作られているNOZA Vは前脚が広く、後ろ脚が狭く作られている
このラバー台座のメリットは傾くだけでなく、ローラー台の振動を床に伝えにくくなっているのではないかと感じた。タイヤ/ホイール由来の振動が発生しないダイレクトドライブながら、ベルトなどの影響で発生する振動はゼロではない。比較してもNOZA Vのほうが静かな印象で、ラバー台座による振動カットの効果もあってNOZA Sと比べて静粛性が高まっているように感じた。

ソフトウェア重視に変化した負荷調整機能

フライホイールや負荷装置周りの静粛性も心なしかNOZA Sよりは静かな印象だ。今作では負荷装置の電磁モーターを増加させることで、負荷調整をソフトウェア重視した設計に進化したという。その結果フライホイール重量はNOZA Sよりも軽量だという。

9mmクイックリリースや、12mmスルーアクスルに対応する9mmクイックリリースや、12mmスルーアクスルに対応する レッグは5つあり、前脚中央に取り付ける物は硬質な素材とされているレッグは5つあり、前脚中央に取り付ける物は硬質な素材とされている


実際に乗ってみても負荷のかかり方が異なるようだ。NOZA Vは文字通りのシームレスに負荷が切り替わり、ズイフトの世界での勾配1%の変化が滑らかに足へと伝わる。元気な状態で勾配1%〜2%の登りに差し掛かっても、負荷に気がつくまでタイムラグがあるほど自然すぎる負荷調整には驚くばかり。(疲れている時はその1%を顕著に感じられるのだけれど……)

同時にテストしたNOZA Sも、もちろんストレスに感じないほどシームレスに1%ごとの負荷切り替えが行われるのだが、勾配変化はより感じやすいような印象だ。それを考慮するとNOZA Vの流れるような負荷調整機能はさすがフラッグシップといった性能を実現していると言っても過言ではないだろう。

エクスプローバ NOZA Vエクスプローバ NOZA V
NOZA Vのパワー計測精度は±2%に収まっており、国内代理店の日本コンピュータダイナミクスの独自テストによると1.2%ほどの精度だという。再現可能最大勾配は20%で、マックスパワーは2200W、待望のケイデンス計測機能も搭載とフラッグシップモデルとしてのスペックを網羅しているため、高いスペックを求めるサイクリストのニーズにも応えられるはずだ。

加えて、NOZA Vにはペダリングパワーに応じて発光カラーが変化するLEDも搭載されており、Xplova Workout Plusアプリで設定されたFTPに応じてパワーゾーンのカラーを表示してくれるという。低パワーの場合は青、高パワーの場合は赤色に光り、出力の状況を直感的に把握できるようになっている。

パワーによって色が変化するLEDが備えられたパワーによって色が変化するLEDが備えられた
NOZA Sのインプレでは「これ以上の機能は望まない」と書いたが、上位モデルを試してみると、やはりリッチな機能が提供するバーチャルライド体験は上質と感じる。フラッグシップ機としては手頃な129,800円(税込)という価格も含めてバリューが高いスマートローラーを実現しているため、インドアサイクリングを充実させたい方にはぴったりの一台だろう。




エクスプローバ NOZA V
パワー精度:±2%
最大出力:2,200 W(58km/h)
フライホイール重量:3.4 kg
ドライブトレイン:ベルトドライブ
ブレーキタイプ:電磁式 × 2 セット
ハブサイズ:130/135/142/148(アダプター同梱)
カセットタイプ:9/10/11速 SRAM( 12スピードはXD/XDRを別途購入する必要があります)、9/10/11/12 速シマノ(カセットは製品に含まれません)
最大シミュレーション勾配:20%
垂直傾斜角度:左右2.5°
リアホイールのサイズ:WH:26 インチ~29 インチのロードバイク
接続性:BLE FTMS および ANT+ FE-C
互換アプリ:ZWIFT、ROUVY、Kinomap、Strava FTMS
最大ユーザー重量:114 kg
出力要件:入力:100–240V
梱包寸法(長さ x 幅 x 高さ):700 x 280 x 580 mm
製品寸法:615 x 598 x 505 mm
価格:129,800円(税込)

text&photo:Gakuto Fujiwara

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