昨年フランドル・クラシックを席巻したクイックステップ・アルファヴィニルが、いま、トップ10にすら入ることのできない苦境に陥っている。その理由は主要選手の相次ぐ体調不良。常勝軍団ウルフパックに何が起きているのか、ルフェーブルGMの言葉から現状を紐解く。



2022年のロンド・ファン・フラーンデレンは勝負どころで遅れ、見せ場を作れなかったカスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル)2022年のロンド・ファン・フラーンデレンは勝負どころで遅れ、見せ場を作れなかったカスパー・アスグリーン(デンマーク、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:CorVos
ここ数年に渡り、春のクラシックで無類の強さを誇ったクイックステップ・アルファヴィニルがいま、苦境に立たされている。

2021年はオキシクリーンクラシック・ブルッヘ〜デパンネやE3サクソバンククラシックなどのロンド・ファン・フラーンデレン前哨戦を獲り、本戦をカスパー・アスグリーン(デンマーク)で制した常勝軍団ウルフパック。しかし今年はそれぞれのレースでチーム最高10位、32位、23位と勝負にすら絡めていない惨状だ。

この緊急事態とも言える春のクラシック前半戦について、パトリック・ルフェーブルGMは「現在(31人いる選手の中で)11人が体調を崩している。何を隠そう私も現在、家で療養中だ。人数が揃わないため、他チームの動きに反応する不慣れな展開で勝負するしかないんだ」と説明する。

体調不良を理由に戦線離脱を余儀なくされる選手は、何もクイックステップ・アルファヴィニルに限ったことではない。4月3日に行われたロンド・ファン・フラーンデレンで、優勝候補に挙がりながらも直前でコロナに感染したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)もその1人。「昨日の朝起きたら喉が痛み、2度の簡易検査の結果コロナ陽性ということが判明した。幸い喉の痛みと悪寒だけ。感染源はわからない。この2年間徹底した感染対策を行っており、この数ヶ月から数週間は特に気をつけていた」と、自身の欠場を伝えるビデオメッセージで語っている。

クイックステップ・アルファヴィニルのパトリック・ルフェーブルGMクイックステップ・アルファヴィニルのパトリック・ルフェーブルGM photo:Makoto AYANO
イスラエル・プレミアテックもまた、選手の相次ぐ離脱の影響をもろに受けているチームだ。「多くの選手がコロナやそれ以外の病気への罹患、また落車による怪我人が続出したため、チームとしてロンドへの出場を取り止める決断に至った。とても心苦しい判断だった」と、ロンド開催の2日前にリリースを発表。チームは4月6日にベルギーで開催される「スヘルデプライス(1.Pro)」への出場も取り止めるほど、非常事態に陥っている。

コロナ禍で行われる3年目のシーズンにして、コロナ感染や体調不良に陥る選手が急増している理由は何なのだろうか。トレック・セガフレードのチームドクターを務めるガエターノ・ダニエーレ氏は「多くの選手が1、2月にコロナに感染し、その副作用として免疫システムに乱れが生じているのだろう」と分析。また「その影響でパリ〜ニース、ミラノ〜サンレモ、そして寒い日のあったボルタ・ア・カタルーニャを走った選手に上気道炎が続出した」と、免疫が下がった状態で出場した悪条件でのレースも要因の一つだと語っている。

最後にルフェーブルGMはインタビューを「困難な状況から学ぶべきことは必ずある。反対に僕は”パニックから学ぶものはない”と冷静であることの重要性を常々訴えているんだ。この後に勝利を掴むことができれば、きっとこの経験が活きるはずだ」と締めくくり、「春のクラシックで1勝も挙げられぬまま臨んだ2001年のパリ〜ルーベでトップ3を独占(優勝はセルヴァイス・クナーヴェン)したことがある。だから最後まで何が起こるかは分からない」と加えている。

クイックステップ・アルファヴィニルのエースであるジュリアン・アラフィリップ(フランス)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー)は、昨日開幕したイツリア・バスクカントリー(2.UWT)に出場中。2人は昨日開催された第2ステージで勝利を掴んでおり、ラ・フレーシュ・ワロンヌ(1.UWT)とリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(1.UWT)で勝利を逃したフランドルのリベンジを成功させるかどうかに注目が集まっている。

text:Sotaro.Arakawa