エリートからステアリング機能搭載の勾配シミュレーター「RIZER」がラインナップされた。バーチャルサイクリングアプリ内のコースに連動し、勾配を自動で再現してくれる。インドアサイクリングをより充実させてくれる勾配シミュレーターをテストする。



エリート RIZERエリート RIZER photo:Gakuto Fujiwara
ホームトレーナーやボトル、ボトルケージを中心としたサイクルアクセサリーを展開しているイタリアンブランドのエリート。最近ではホームトレーナーに拡張性をもたらすスマートデバイスにも力を入れており、昨年はズイフト内でステアリング操作が行えるSTERZO SMARTをリリースした。

STERZO SMARTはバーチャル世界内でアバターを自由に左右に動かすことができ、ズイフトの自由度が向上した。今回リリースされたRIZERはバーチャルサイクリング世界内の勾配変化を再現し、更にステアリング機能も備えた次世代のスマートローラー用デバイスだ。

エレベーターのようにスムーズに上下へ稼働エレベーターのようにスムーズに上下へ稼働 photo:Gakuto Fujiwara
本体でモード切り替えと勾配設定ができる本体でモード切り替えと勾配設定ができる photo:Gakuto Fujiwara
RIZERはバーチャルライドコースの起伏と連動し、固定したフロントフォークを自動的に昇降することが特徴。画面上の勾配を実際に走ってるかのように自転車が傾くため、バーチャルサイクリングへの没入度や楽しみが増すデバイスだ。

再現できる勾配は-10~20%と幅広く、ズイフトやルーヴィーなどのバーチャルサイクリングアプリに登場するコースであれば十分に対応してくれるだろう。

フロントフォークの取付部は自転車のハンドル操作に対応するように可動する。もちろんズイフトではステアリング機能を使うことができ、アバターを自由に動かすことが可能だ。また、フォークの取付部は水平方向に左右にスライドするため、ハンドル操作に対応する回転方向との動きも相まって、ダンシングなどでも自然な操作感を味わうことができる。

インジケーターを備えるインジケーターを備える photo:Gakuto Fujiwara
12mmと15mmスルーアクスル、クイックリリース用のアダプターが付属12mmと15mmスルーアクスル、クイックリリース用のアダプターが付属 photo:Gakuto Fujiwara
さらにエリートはRIZERをより簡単に設定するために専用のアプリを開発した。走行中の傾斜表示、モード切り替えをスマートフォンで操作することができるため、RIZERを購入した方はApp StoreもしくはGoogle Play Storeから入手したほうが良いだろう。このアプリを使用すれば、バーチャルサイクリングの再現ではなく、特定の勾配を維持したままライドできるためヒルクライムのトレーニングにもうってつけだ。

RIZERはエリートが用意するDireto XR/XR-T、Suito/Suito-T、Tuoに公式対応している。またRIZERはトレーナーが送信する負荷データをもとに動作するため、RIZERが受信可能なデータを送信するトレーナーであれば使うことができる。しかし、自転車が傾いた時にリアディレイラー等がトレーナーに接触するなどのミスマッチの可能性もあるため、公式対応のトレーナー以外を使う場合は事前に使用するトレーナーのブランドに確認したほうが良いだろう。

また、RIZERには12mmと15mmスルーアクスル、クイックリリース用のアダプターが付属するため、リムブレーキのロードバイクやディスクブレーキのロード、CX、MTBなど様々な車種でRIZERを使うことができる。価格は131,000円(税込)。取り扱いはカワシマサイクルサプライだ。続いて、インプレッションに移ろう。



―編集部インプレッション

勾配0%(標準位置)勾配0%(標準位置) photo:Gakuto Fujiwara
勾配20%(最大勾配位置)勾配20%(最大勾配位置) photo:Gakuto Fujiwara
ステアリング機能付き勾配シュミレーターで話題のRIZERをインプレッション。担当するのは日頃からスマートトレーナーを使用して、ズイフトを楽しみながらイベントに参加しつつ、トレーニングの一環として取り入れているCW編集部員の高木。

箱からRIZERを取り出す時にまず驚いたのは本体の重量感。今回のインプレッションで使用したDireto-XR(16kg)と変わらない重さに意表を突かれた。重いとは言え、レザーのベルトも備えられているため、その重量感さえ知っていれば持ち運びやすい。そして、重量があるというのはメリットでもある。競輪選手が使用しているワットバイクやスマートバイクも決して軽いわけではないため、本格的にトレーニングマシーンとしては「重量=動かない=安心」と言えるだろう。

レザーのベルトが取り付けられ、持ち運びやすいレザーのベルトが取り付けられ、持ち運びやすい photo:Gakuto Fujiwara
スマートローラーと同じ様に付属するアダプターを入れ替えるだけで、様々な自転車で使えるのはありがたい。ディスクブレーキモデルのロードバイクとシクロクロス、リムブレーキモデルのTTバイクを持っている私にとって制限なく全てのバイクを使えるのはとても嬉しい部分のひとつ。

自転車をRIZERに取り付ける流れは、後輪をローラー台にセットし、その後前輪を固定する。特に難しい部分はなく、非常にスムーズ。ズイフトで使う場合は、センサー類のペアリング画面でステアリング機能からRIZERを選択するだけ。その際に、正常に作動させるためにキャリブレーションを行う事を忘れずに。

左右にハンドルを切ってみたが自然なハンドリング左右にハンドルを切ってみたが自然なハンドリング photo:Gakuto Fujiwara
取り付け部が左右に動き、ダンシングしやすい取り付け部が左右に動き、ダンシングしやすい photo:Gakuto Fujiwara
RIZERの昇降機能はスムーズで、まるでエレベーターのようにゆっくり動き始め、ぶれることなく動き、ゆっくりと止まってくれる。自然な勾配の変化で、実走しているかのように感じる。本体自体が前後にスライドする機構が組み込まれており、勾配の変化に応じて前後するフロントの動きをフォローしてくれるため、重量とベースの安定感と相まって自然なフィーリングを得られたと感じる。

再現勾配は-10~20%と非常に幅が広い可動域で、ズイフトやルーヴィーなどバーチャルサイクリングアプリ内に存在する、コースを忠実に再現できる。登り勾配ではシッティングやダンシングなどライディングポジションを変えることが多いので、それらの練習ができることはもちろん、狙っているレースや乗り越えたい峠がある方であれば、インドアでそれらの予習に使えそうだ。

可動部の上面は汗が付いても大丈夫な仕様に可動部の上面は汗が付いても大丈夫な仕様に photo:Gakuto Fujiwara
前後にスライドしてくれるため、安定感に優れる前後にスライドしてくれるため、安定感に優れる photo:Gakuto Fujiwara
RIZERの勾配再現は設定画面から調整することが可能。デフォルトの50%では上下の動きの変化量が控えめなので、バーチャルコースで上下にアグレッシブに動いてほしい方は調整が必要だ。

また、RIZERはバーチャルサイクリングアプリを使用しなくても、専用アプリの「RIZER」を使用することで操作可能。走行中の傾斜が表示され、自動で勾配が変化するモードと手動で勾配を操作するモードの切り替えができる。

さらにRIZERはハンドルを左右に切る動きも自然にフォローしてくれ、STERZO SMARTよりも滑らかに動く印象だ。ダンシングの場面では取付部がスライドしてくれるため、ライダーや自転車の動きを妨げず、実際に外でダンシングをしているようだった。エリートのステアリング機能はズイフトのレースで集団の位置取りをしてドラフティング効果を得たり、グループライドで先頭交代ができたりするため、ズイフトの楽しみを引き立ててくれる。


ダンシングでも安定感は抜群ダンシングでも安定感は抜群 photo:Gakuto Fujiwara
先述したように重量感のあるボディのためスプリントでは高い安定性を感じられた。ズイフトのレースではアタックが掛かるタイミングやフィニッシュスプリントなどで高出力でもがくことがあるが、RIZERはびくともせずスプリントに集中することができた。スマートトレーナー+RIZERの組み合わせは非常にバーチャルサイクリングへの没入感を高めてくれるものかもしれない。

これから訪れる冬場には路面の凍結や雪の影響で、峠などを走ることが出来なくなってしまうが、これがあれば、天候や季節に影響されることもない。年中トレーニングやサイクリングを継続する事もできるため、多くのサイクリストのサイクリングライフを豊かな時間にしてくれるだろう。ズイフトの常連の皆さんに是非使ってもらいたいと思ったエリート RIZERであった。




エリート RIZER
可動域:20%(上昇)/-10%(下降)
互換性:Direto XR/XR-T、Suito/Suito-T、Tuo
サイズ:728x345x387mm(HxWxL)
付属品:クイックリリース、アダプター(QR、12x100、15x100、15x110mm)
重量制限:最大120kg
価格:131,000円(税込)


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