2年振りの開催となったE3サクソバンク・クラシックはカスパー・アスグリーン(デンマーク)が勝利。レース中盤からドゥクーニンク・クイックステップが展開を掌握する圧巻の勝利を見せた。



逃げに乗った2018年覇者のニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)逃げに乗った2018年覇者のニキ・テルプストラ(オランダ、トタル・ディレクトエネルジー)
昨年はコロナ禍により中止され、2年振りの開幕を迎えたロンド・ファン・フラーンデレンの前哨戦「E3サクソバンク・クラシック(UCIワールドツアー)」。フランダース地方を東西に駆け巡る204kmのレースに、ベルギーの春を待ちわびた重量級クラシックレーサーたちがスタートラインに並んだ。

一昨年の「E3・ビンクバンククラシック」から再び名称を変えた本大会は、クラシックの中では比較的新しい1958年に開幕したセミクラシック。ウェストフランデレン州に位置するハーレルベーケを発着し、パテルベルグやオウデクワレモントといったベルギークラシック定番の石畳の登りを含む、15カ所の急坂を17回駆け上がる。

共に出場した別府史之のチームメイト、ジュリアス・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーションNIPPO)を含む12名が逃げ集団を形成すると、メイン集団がタイム差を2分前後でコントロールしたままレースは進む。そんな穏やかな展開を一変させたのは、この大会2連覇中の常勝ドゥクーニンク・クイックステップだった。

残り80km地点に位置するターインベルグ(650m/平均9.5%/最大18%)でウルフパックが先頭に人数を集めると、集団を選別するペースアップを開始。大きな集団からその動きについていけたのは、前回大会(2019年)2位のワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)や初出場のマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)、マッテオ・トレンティン(イタリア、UAEチームエミレーツ)にマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ)ら数名だけだった。

パンクしたワウト・ファンアールト(ベルギー)を引き上げるユンボ・ヴィズマパンクしたワウト・ファンアールト(ベルギー)を引き上げるユンボ・ヴィズマ
約50kmを単独で逃げたカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)約50kmを単独で逃げたカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
ウルフパックが4人を揃えた追走集団が速度を上げると、残り72kmを過ぎた辺りでファンアールトがパンクでストップ。後方の大集団に残っていたチームメイトによる牽引で、前を追う展開を強いられてしまう。

残り70km地点でドゥクーニンクが形成した追走グループが逃げ集団を飲み込むと、そこからデンマークチャンピオンのカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)が単独で飛び出す。しかしドゥクーニンク以外はアシスト不在であり、積極的に追う動きが出てくることなくその差が一気に開いていった。

ユンボ・ヴィズマの率いた集団がようやく追走グループに追いつくと、集団は大きな一塊に。20秒差をつけるアスグリーンを追うべく、何度も小集団が形成されては吸収を繰り返し、そのまま30kmが消化されていく。

先頭を追うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)先頭を追うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
登りで積極的に牽くワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)登りで積極的に牽くワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィズマ)
この日は精彩を欠いたトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・ グレナディアーズ)この日は精彩を欠いたトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・ グレナディアーズ)
最終的にアスグリーンを追う追走集団に残ったのは、ファンデルプールやファンアールトを含む11人。新旧シクロクロス世界王者が積極的に前を引くも、レース巧者のゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)らが集団の協調を阻害する。

アスグリーンとの差が30秒まで広がると、しびれを切らしたファンアールトが飛び出す。しかしそれに追従したファンデルプールがカウンター気味に飛び出すと、ここまで脚を使わされてきたファンアールトはついに遅れてしまう(1分30秒遅れの11位)。

相変わらず協力体制が作れないままの追走集団だったが、残り12kmでようやくアスグリーンを引き戻すことに成功すると、勝利は残った7人に絞れられた。

先頭集団(7名)
ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)
カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギーAG2Rシトロエン)
オリバー・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)
ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)

アタックの機会を伺う先頭集団の選手たちアタックの機会を伺う先頭集団の選手たち
それぞれがアタックの機会を伺うなか、残り5kmを過ぎて最初に飛び出したのは約50kmの単独逃げを終えたばかりのアスグリーン。しかし集団はスプリント力のあるセネシャルと前回大会の覇者スティバルをマークしていたため反応ができない。唯一チームメイトのいるナーセンがブリッジを試みるが届かず、今度はファンアーヴェルマート追うも力は残っていなかった。そしてそのままアスグリーンが、2度目の飛び出しで勝利を掴み取った。

また、後続の集団スプリントではセネシャルがファンデルプールに競り勝ち、チームメイトの勝利に花を添えている。

一度集団に吸収されるも勝利を掴んだカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)一度集団に吸収されるも勝利を掴んだカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
「誇るべき最高の勝利となった。とても嬉しいよ。大好きなレースが僕に適しているのだと示せたと同時に、冬に行ったハードワークが実を結んだ結果でもある」と語ったのは、ドゥクーニンク・クイックステップに3大会連続の勝利をもたらせたアスグリーン。

「この春に試走をしていたので自信を持ってレースに臨むことができた。そのおかげで序盤から仕掛けることに恐れはなく、それが上手くいったんだ。世界最高峰のクラシックライダーたちを相手に勝てたことは、これから待ち受ける大きなワンデーレースへの士気を高めてくれる」。

ロボットによるメダル授与ロボットによるメダル授与
優勝トロフィーを受け取ったカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)優勝トロフィーを受け取ったカスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)
「僕の動きが他の選手たちを驚かせたかどうかは分からないが、縁石を使い集団と距離を取ったことが差を生み出すことに繋がったんだ。もしそれが成功しなかったとしても、フロリアンとゼネクがやってくれると分かっていたからね」と、アスグリーンは最後のアタックについて語った。

アスグリーンの次なる目標は10日後に控えるロンド・ファン・フラーンデレン。トム・ボーネンやファビアン・カンチェラーラ、ニキ・テルプストラなど、E3サクソバンク・クラシックと同年優勝することが多いことから、デンマークチャンピオンに一層の期待がかかる。
E3サクソバンククラシック2021
1位カスパー・アスグリーン(デンマーク、ドゥクーニンク・クイックステップ)4:42:56
2位フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)0:32
3位マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
4位オリバー・ナーセン(ベルギー、AG2Rシトロエン)
5位ゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)
6位グレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギーAG2Rシトロエン)
7位ディラン・ファンバーレ(オランダ、イネオス・グレナディアーズ)
8位マルクス・フールゴー(ノルウェー、ウノX・プロサイクリングチーム)1:28
9位ジャンニ・フェルメルシュ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)1:30
10位マルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・ヴィクトリアス)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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