第112回ツール・ド・フランスは2週目に突入。第11ステージはスタート直後から逃げ続けたヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が、ファンデルプールの猛追を振り切り勝利。一方、終盤に落車したポガチャルに大きな怪我はなかった。

ツール2週目に向かうポガチャル photo:A.S.O. 
スタート前に子どもたちと触れ合うファンアールト photo:CorVos

ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)ら4賞ジャージが集団先頭に並ぶ photo:A.S.O.
7月16日(水)第11ステージ
トゥールーズ〜トゥールーズ(平坦)
距離:156.8km
獲得標高差:1,750m
天候:晴れ
気温:30度

第11ステージ トゥールーズ〜トゥールーズ image:A.S.O.
トゥールーズで1度目の休息日を挟み、2週目の初日は同じトゥールーズを発着する。ツール・ド・フランス第11ステージは市街地から北へ向かい、東側の郊外を時計回りに巡る156.8km。カテゴリー山岳が密集する南側から再び中心部へ戻る、平坦基調のステージだ。
しかし終盤には4つのカテゴリー山岳が詰め込まれ、ラストの3級山岳(距離0.8km/平均12.4%)は最大勾配20%を超える。そのため集団スプリントよりも逃げ切りの可能性が高いと見られていた。
第10ステージで逃げ、マイヨジョーヌを着用するベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)を先頭に、172名の選手たちがスタート。直後にヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が勢い良く飛び出し、そこに2名が合流。あっという間に3名による逃げ集団が形成されたものの、メイン集団はこれを容認せずアタック合戦が続いた。

スタート直後に飛び出したヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)ら3名 photo:A.S.O.
特にワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が積極的に仕掛けるが、プロトンは何度もそれを引き戻す。残り90km地点でようやくフレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)とマチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)の追走が決まり、残り83km地点で先頭に合流。5名となった逃げ集団が、プロトンに対して1分強のリードを築いた。
第11ステージで逃げた5名
マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ)
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)
それでもレースは落ち着かず、グルパマFDJの2名にジャンニ・フェルミールス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を加えた3名がアタック。その後ファンアールトやアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)を含む19名の第3集団も形成される。この激しい攻防により、平均時速は50km/hを超えるハイペースに持ち込まれ、今大会の過酷さを象徴する展開で2週目が始まった。

2名が合流し、逃げグループは5名となった photo:A.S.O.

この日もひまわり畑の間を進む photo:A.S.O.
この混沌とした状況に終止符を打ったのは、ここまで総合敢闘賞にふさわしい活躍を見せているクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)のアタックだった。この動きにファンアールトやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が反応し、豪華な追走グループが生まれる。これを機に、残り59.5kmの中間スプリントを前にプロトンはようやく小康状態となった。
レースは先頭5名をファンデルプール・グループが約50秒で追い、イスラエル・プレミアテックが牽引するメイン集団は1分15秒後方という構図。そのまま選手たちは終盤へと突入した。
最後から2番目の4級山岳で、スタートから逃げてきたアブラハムセンが加速する。これにはシュミットだけが食らいつく。そして大観衆が詰めかけ、発煙筒が焚かれる最後の3級山岳へ突入すると、レース後に「無線が壊れて前に選手がいると知らなかった」と語ったファンデルプールが満を持してアタック。ライバルのファンアールトらを置き去りにし、先行する選手たちを次々とパスして、先頭の2名を単独で猛追を開始した。

マイヨジョーヌを着てプロトンを走るベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.
一方、メイン集団ではヴィスマ・リースアバイクが補給ゾーンでアタックを仕掛けるなど、批判覚悟の攻撃をタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)に対して繰り返す。そして3級山岳では頂上手前でヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が動いたが、ポガチャルとレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を引き離すには至らなかった。
区間2勝目を目指し懸命に踏み続けたファンデルプールだったが、0km地点からコンビを組むアブラハムセンとシュミットは強力で、その差はなかなか縮まらない。
そんな中、フィニッシュまで残り5kmの平坦路でプロトンにアクシデントが発生する。前を走るトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)の後輪と接触し、ポガチャルが落車。しかし幸いにもすぐに立ち上がり、ニュートラルサービスの素早い対応でレースに復帰。メイン集団も総合2位を待つためにペースを緩め、ポガチャルは無事に集団へ合流した。チームの発表によれば、擦過傷のみで大きな怪我はなかったという。

最後から2つ目の山岳で飛び出し、先頭はアブラハムセンとシュミットの2名に絞られる photo:A.S.O.

猛追するマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:A.S.O.
ステージ優勝の行方はアブラハムセンとシュミット、残り3km地点で12秒まで縮めたファンデルプールの3名に絞られる。しかし前世界王者をもってしてもスムーズにローテーションを回す先頭2名には追いつかず、スタート直後から逃げ続けた2名による一騎打ちに持ち込まれる。最後はハンドルを投げ合う僅差のスプリントとなり、アブラハムセンが写真判定の末、キャリア最大の勝利を掴み取った。

同時にハンドルを投げるヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)とマウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) photo:A.S.O.

勝利を確信したヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:CorVos
「4週間前のツール・ド・ベルギーで鎖骨を骨折し、病室で『これでツールには出場できなくなった』と涙を流した。しかし翌日にはもう家でローラーを回し、出場に向けてあらゆる方法を試した。そしてたどり着いたツールで勝てたなんて、本当に信じられない。昨年はマイヨアポワを着たが、どうしてもステージ勝利が欲しかった。ようやく夢が叶ったよ」と語ったアブラハムセン。2度目の出場となった昨年は何度も逃げから勝利に迫り、ノルウェー人選手としては初めてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着用。その時届かなかった初めてのツール区間優勝を、アブラハムセンは表彰台で雄叫びを上げ喜んだ。
一方、7秒差で3位に終わったファンデルプールは「勝利に迫っただけに残念だ」と悔しさを滲ませた。ヒーリーやポガチャルなど総合上位勢にはスプリンターらを含む後続が追いつき、3分28秒遅れでフィニッシュ。そして翌日からは、いよいよピレネーを舞台にした山岳3連戦が始まる。

追走が届かなかったマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

悲願のステージ優勝を飾ったヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) photo:A.S.O.

マイヨジョーヌを守ったベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:A.S.O.



7月16日(水)第11ステージ
トゥールーズ〜トゥールーズ(平坦)
距離:156.8km
獲得標高差:1,750m
天候:晴れ
気温:30度

トゥールーズで1度目の休息日を挟み、2週目の初日は同じトゥールーズを発着する。ツール・ド・フランス第11ステージは市街地から北へ向かい、東側の郊外を時計回りに巡る156.8km。カテゴリー山岳が密集する南側から再び中心部へ戻る、平坦基調のステージだ。
しかし終盤には4つのカテゴリー山岳が詰め込まれ、ラストの3級山岳(距離0.8km/平均12.4%)は最大勾配20%を超える。そのため集団スプリントよりも逃げ切りの可能性が高いと見られていた。
第10ステージで逃げ、マイヨジョーヌを着用するベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト)を先頭に、172名の選手たちがスタート。直後にヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)が勢い良く飛び出し、そこに2名が合流。あっという間に3名による逃げ集団が形成されたものの、メイン集団はこれを容認せずアタック合戦が続いた。

特にワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)が積極的に仕掛けるが、プロトンは何度もそれを引き戻す。残り90km地点でようやくフレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)とマチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)の追走が決まり、残り83km地点で先頭に合流。5名となった逃げ集団が、プロトンに対して1分強のリードを築いた。
第11ステージで逃げた5名
マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー)
ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ)
ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)
フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)
マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー)
それでもレースは落ち着かず、グルパマFDJの2名にジャンニ・フェルミールス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)を加えた3名がアタック。その後ファンアールトやアルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット)を含む19名の第3集団も形成される。この激しい攻防により、平均時速は50km/hを超えるハイペースに持ち込まれ、今大会の過酷さを象徴する展開で2週目が始まった。


この混沌とした状況に終止符を打ったのは、ここまで総合敢闘賞にふさわしい活躍を見せているクイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック)のアタックだった。この動きにファンアールトやマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)が反応し、豪華な追走グループが生まれる。これを機に、残り59.5kmの中間スプリントを前にプロトンはようやく小康状態となった。
レースは先頭5名をファンデルプール・グループが約50秒で追い、イスラエル・プレミアテックが牽引するメイン集団は1分15秒後方という構図。そのまま選手たちは終盤へと突入した。
最後から2番目の4級山岳で、スタートから逃げてきたアブラハムセンが加速する。これにはシュミットだけが食らいつく。そして大観衆が詰めかけ、発煙筒が焚かれる最後の3級山岳へ突入すると、レース後に「無線が壊れて前に選手がいると知らなかった」と語ったファンデルプールが満を持してアタック。ライバルのファンアールトらを置き去りにし、先行する選手たちを次々とパスして、先頭の2名を単独で猛追を開始した。

一方、メイン集団ではヴィスマ・リースアバイクが補給ゾーンでアタックを仕掛けるなど、批判覚悟の攻撃をタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG)に対して繰り返す。そして3級山岳では頂上手前でヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)が動いたが、ポガチャルとレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)を引き離すには至らなかった。
区間2勝目を目指し懸命に踏み続けたファンデルプールだったが、0km地点からコンビを組むアブラハムセンとシュミットは強力で、その差はなかなか縮まらない。
そんな中、フィニッシュまで残り5kmの平坦路でプロトンにアクシデントが発生する。前を走るトビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ)の後輪と接触し、ポガチャルが落車。しかし幸いにもすぐに立ち上がり、ニュートラルサービスの素早い対応でレースに復帰。メイン集団も総合2位を待つためにペースを緩め、ポガチャルは無事に集団へ合流した。チームの発表によれば、擦過傷のみで大きな怪我はなかったという。


ステージ優勝の行方はアブラハムセンとシュミット、残り3km地点で12秒まで縮めたファンデルプールの3名に絞られる。しかし前世界王者をもってしてもスムーズにローテーションを回す先頭2名には追いつかず、スタート直後から逃げ続けた2名による一騎打ちに持ち込まれる。最後はハンドルを投げ合う僅差のスプリントとなり、アブラハムセンが写真判定の末、キャリア最大の勝利を掴み取った。


「4週間前のツール・ド・ベルギーで鎖骨を骨折し、病室で『これでツールには出場できなくなった』と涙を流した。しかし翌日にはもう家でローラーを回し、出場に向けてあらゆる方法を試した。そしてたどり着いたツールで勝てたなんて、本当に信じられない。昨年はマイヨアポワを着たが、どうしてもステージ勝利が欲しかった。ようやく夢が叶ったよ」と語ったアブラハムセン。2度目の出場となった昨年は何度も逃げから勝利に迫り、ノルウェー人選手としては初めてマイヨアポワ(山岳賞ジャージ)を着用。その時届かなかった初めてのツール区間優勝を、アブラハムセンは表彰台で雄叫びを上げ喜んだ。
一方、7秒差で3位に終わったファンデルプールは「勝利に迫っただけに残念だ」と悔しさを滲ませた。ヒーリーやポガチャルなど総合上位勢にはスプリンターらを含む後続が追いつき、3分28秒遅れでフィニッシュ。そして翌日からは、いよいよピレネーを舞台にした山岳3連戦が始まる。



ツール・ド・フランス2025第11ステージ
1位 | ヨナス・アブラハムセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | 3:15:56 |
2位 | マウロ・シュミット(スイス、ジェイコ・アルウラー) | |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | +0:07 |
4位 | アルノー・ドゥリー(ベルギー、ロット) | +0:53 |
5位 | ワウト・ファンアールト(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) | |
6位 | アクセル・ローランス(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | |
7位 | フレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス) | |
8位 | マチュー・ビュルゴドー(フランス、トタルエネルジー) | |
9位 | クイン・シモンズ(アメリカ、リドル・トレック) | |
10位 | ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、XDSアスタナ) | +1:11 |
マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 41:01:13 |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | +0:29 |
3位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:29 |
4位 | ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) | +1:46 |
5位 | マッテオ・ジョーゲンソン(アメリカ、ヴィスマ・リースアバイク) | +2:06 |
6位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +2:26 |
7位 | オスカー・オンリー(イギリス、ピクニック・ポストNL) | +3:24 |
8位 | フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:34 |
9位 | プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ) | +3:41 |
10位 | トビアス・ヨハンネセン(ノルウェー、ウノエックス・モビリティ) | +5:03 |
マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 | ジョナタン・ミラン(イタリア、リドル・トレック) | 231pts |
2位 | タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツXRG) | 163pts |
3位 | マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) | 156pts |
マイヨアポワ(山岳賞)
1位 | レニー・マルティネス(フランス、バーレーン・ヴィクトリアス) | 27pts |
2位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 16pts |
3位 | マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック) | 11pts |
マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 | ベン・ヒーリー(アイルランド、EFエデュケーション・イージーポスト) | 41:01:13 |
2位 | レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) | +1:29 |
3位 | ケヴィン・ヴォークラン(フランス、アルケア・B&Bホテルズ) | +2:26 |
チーム総合成績
1位 | ヴィスマ・リースアバイク | 123:02:09 |
3位 | UAEチームエミレーツXRG | +19:20 |
2位 | グルパマFDJ | +31:42 |
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos, A.S.O.
photo:CorVos, A.S.O.
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