パナレーサーからリリースされたGravelKing SSをアメリカのグラベルレースで上位成績を収める竹下佳映がインプレッション。ダーティーカンザの女子部門で上位入賞実績を持つエリートライダーから見たGravelKingのセミスリックバージョンはいかに。



パナレーサー GravelKing SSパナレーサー GravelKing SS (c)パナレーサー
パナレーサーのグラベルタイヤ"GravelKing"のラインアップに新型GravelKing SSが追加された。SSとはSemi Slick(セミスリック)の略であり、トレッドの中央部分にスリックほどではないものの転がりの軽さを意識したウェービングパターン、サイドに向かうにつれてグリップ力を発揮するトレッドが配置されているモデル。

サイド部分のトレッドは中央に近い部分が目の詰まったダイヤ形状、ショルダー部分がGravelKing SKのセミノブを改良した円周方向に伸びる棒形状とされていることもポイント。部分によって与えられる役割が異なるタイヤの各パートに最適化されたトレッドパターンがそれぞれの性能を発揮してくれるはずだ。

マテリアル面ではGravelKing同様の仕様とされている。コンパウンドには耐摩耗性を重視した高反発弾性の天然ゴムをベースとしたZSGナチュラルコンパウンドを採用。ケーシングは0.14mm径の軽量極細コードを使用し、軽量かつ衝撃吸収性に優れるAX-αだ。加えて、アンチフラットケーシングも用いることで、サイドカットやリム打ちパンクへの耐性を身に着けている。

パナレーサー GravelKing SS(700x43C、ブラック/ブラック)パナレーサー GravelKing SS(700x43C、ブラック/ブラック) (c)パナレーサー
ラインアップは700×28Cのクリンチャーモデルと、各種サイズが揃うチューブレスコンパーチブル(TLC)モデル。TLCには700×32C、35C、38C、43C、650B×48というサイズが展開されている。クリンチャーモデルの価格は4,900円(税抜)、TLCモデルの価格は5,200円(税抜)だ。

今回のインプレッションライダーは、グラベルの本場アメリカでレースに参戦する竹下佳映。パナレーサーがサポートするチームに所属しており、GravelKingシリーズを使用し、ダーティーカンザの女子部門で4位入賞を果たしている実力派グラベルレーサーだ。GravelKingシリーズを知り尽くした竹下が下した評価はいかに?

インプレッション by 竹下佳映

草が生い茂るシングルトラックでもGravelKing SSはグリップしてくれる草が生い茂るシングルトラックでもGravelKing SSはグリップしてくれる
SSを手にとり、見たその印象は?

こんにちは、グラベルレーサーの竹下佳映です。グラベル専用機材がまだ自転車業界に存在せず、グラベル認知が広がる前の2014年から今まで、グラベルレースやイベントに数多く参加してきました。パナレーサーのグラベルキングタイヤ、特にオールマイティに大半のグラベルを難なくこなすグラベルキングSK(以下、GKSK)を2017年から愛用しています。

GKSKはグリップ・コントロール・安定感とどれも抜群で、スリックタイプのGK程ではないけれど速さもある大人気グラベルタイヤです。乗り潰してセンターノブの高さが少し減ってきたくらいが若干速いので、今回新発売されたグラベルキング・セミスリック(以下、GKSS)の凹凸の少ないロープロファイルさを写真で見て、手にする前からワクワクしていました。

GravelKingシリーズを使い込んできた竹下佳映が新型SSを試すGravelKingシリーズを使い込んできた竹下佳映が新型SSを試す
パッと見た感じは、GKとGKSKのちょうど中間くらいに見えるGKSSですが、よくよく見るとトレッドは全く新しい形状です。センターは流れるジグザグ、トランジション部分はダイヤモンド型、サイドは切れ目の入ったバー状のノブが両側に3本ずつ。見た目の印象は、センターの凹凸がない分GKSKよりはGKに近い。かなり速そうだけど、トラクション度はどれ程だろう、という感じでした。

さてGKSS入手後、チューブレスセットアップは特に問題なく完了しました。回転方向が決まっていないノンディレクショナルなので、シーラント入れてビードも上がった後になって向きを間違えたのに気付いた!なんておっちょこちょいハプニングも無しです。これはGKSKと同じですね。

GravelKing SSを装着した際の幅は37mm幅にGravelKing SSを装着した際の幅は37mm幅に
今回インプレッションしているGKSSは35cサイズで、使用したホイールのリム内幅は21mm。ホイールにタイヤを取り付けた状態で計ったタイヤ幅は37mmでした。サイドノブの高さがGKSKより低めなので、GKSK装備でフレームとのクリアランスがギリギリだった場合には、少々スペースに余裕が生まれます。

いよいよグラベルで走行。その走行シチュエーションは?

今季は3月のロックダウン以降、予定していたレースもイベントも全部延期か中止になってしまいました。ある程度規制緩和されても遠出は難しく、GKSSを走らせることが出来る場所は通常と比べると限られてしまいました。それでも舗装路・未舗装路ミックスで、70km程度の短いライドから240km強のライドも数回、出来る限り多くの路面タイプでGKSSを乗り回してきました。

ある日は、車通りの少ない早朝から舗装路で飛ばして、少し湿り気のある森林ダートに入り、知る人ぞのみ知る隠れシングルトラック区間で遊び、細かい石灰石が敷き詰められた多目的トレイルへ。

田舎のスムーズなグラベルロードを飛ばす田舎のスムーズなグラベルロードを飛ばす 小石が散らばるダートでも遊んだ小石が散らばるダートでも遊んだ


ある日は、一日中都市部・郊外から離れ、田舎にあるスムーズなグラベルロードから、チップシール舗装、小石グラベル、地面が波打つ洗濯板化したグラベルの上りに下り。

ある日は、絹のように滑らかアスファルト、そして穴ぼこ・ひび割れ・細かい石・ゴミ・プラスチック破片の多く交通量も多い悪状態舗装、数か月訪れていなかったらいつの間にか植物が自分の背丈よりずっと高く伸びてジャングル化していた草っ原。

実走で感じたSSの走行性能は?

さて実走時、地面がどんな種類であってもすぐに感じたのは、とにかく直線がひたすら速いんです。トレッド形状からある程度のスピードは想像していましたが、思っていた以上に直進スピードが速く、正直びっくり。

アメリカのグラベルでGravelKing SSを試す竹下佳映アメリカのグラベルでGravelKing SSを試す竹下佳映
GKSSで舗装路を走ると、トランジションとサイドノブが走行中に邪魔になることはなく、速さはGKとあまり変わらないのでは?という印象でした。今までも舗装路をグラベルバイクとGKでよく走りに行っていて、ロードバイクと一緒のグループライドでも後れを取ることはなかったので、舗装の割合が多めのイベントやレースでもGKSSはかなり期待できます。

砂ベースグラベル、大き目サイズの石が転がるグラベル区間も難なくクリア。ふかふか砂道や酷いガタガタ道が長く続くような場所では、乗り心地・安定感アップの為に大きめのタイヤサイズに替えて空気圧を下げればバッチリですね。

「思っていた以上に直進スピードが速く、正直びっくり」竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)「思っていた以上に直進スピードが速く、正直びっくり」竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change) タイヤの各部で細かくパターンが変えられているタイヤの各部で細かくパターンが変えられている


GKの場合、舗装路ライドでは天候に関わらず文句なしですが、グラベル上では速さと引き換えにグリップ不足が感じられることもあります。特に、コーナー最中に舗装からグラベルに変わる時、グラベル上での鋭角コーナー、新しく撒かれたばかりで砂利が深くザクザクしている曲がり角では、滑りやすいので注意が必要です。

ダイヤモンド型トランジションノブと、両側に3本のサイドノブがついているGKSSでは、しっかりコーナー最中に支えてくれているのを感じます。安定した状態で自信を持って曲がることが出来、ハイスピードで走行するくねった下り道もコントロールが利いて安心です。緩めグラベルの上り坂でも、ジグザクセンタートレッドがグリップ力を発揮するので、GKSSではタイヤが空回ることもなく登りきることができました。

石灰石が敷き詰められたグラベルでも試している石灰石が敷き詰められたグラベルでも試している
また、農業トラックがつけたタイヤ跡の上を走るのが一番楽ちんな農道グラベル走行中、片方のタイヤ跡からもう片方のタイヤ跡に乗り換える時に真ん中の部分が酷く緩く感じる場合が多いのですが、そこでも前輪を取られることもなく、しっかりトレッドがグラベルを掴んで抑え込む感じで、GKSSへの信頼度はGKSKを乗っている時と同じでした。

乗馬等の趣味で飼われている馬がよく歩きに来るトレイルでの急な馬糞回避も問題なし。加速もスムーズ、止まりたい時には滑らず減速します。

重量スペックから見たGravelKing SSを考察

自分で計量する前に、ホイールに装着してしまったので、公表されているタイヤスペックチャートでの重量比較になりますが、確認すると、35cだとGKSKとGKSSの重量は両方とも380gと同じ。38cだとSSは410g、SKは420g。43cだとSSは480g、SKは510g。思っていた程の重量の開きはありませんでした。

あらゆるシチュエーションでGravelKing SSをテストした竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)あらゆるシチュエーションでGravelKing SSをテストした竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)
エンジニアではない私のユーザーとしての予測に基づくと、見た目はGKSSの方が随分軽く、しかしゴムの量がそこまで変わらないということは、タイヤの一番上のレイヤーであるZSGナチュラルコンパウンド部分、凹凸の少ないGKSSトレッドの平均的な厚みが、GKSKトレッドの凹の部分よりあるということでしょうか。耐久性も抜群に良さそうです。

機材にもライダーにも負担の厳しい、道とすら呼べなさそうな場所も含め、ありとあらゆるグラベルを今まで走ってきていますが、グラベルキングシリーズ全体の耐久性は高得点。タイヤのサイズ選択、空気圧選択が正しかったのと、運も少しあるでしょうが、過去4年間でのパンクは、ホッチキスの針を踏ん付けたのと、ガラスの破片が其処ら中に散らばっている都市部の舗装路でやられた2回のみ。どちらもシーラントで直ぐに塞がれ、帰宅するまで気付きもしませんでしたから、パンク未遂と言うほうが正しいですね。GKSSの耐久性は従来通りかそれ以上ということで、自信を持ってグラベルを走破出来ます。

GravelKing SSの意外な美点

そしてGKSSには見落としがちな利点が一つ。GKSKの場合、走行中にタイヤが小石を後方に吐き出すように飛び散らせて真後ろのライダーにパラパラ当たることがあります (ドラフトしようとするライダー防止策?)。トレッドの違うGKSSは、後方から苦情が聞こえることもなく、少人数ライドがスムーズに進みました(笑)。

大きめの石が敷き詰められたグラベルで笑顔が溢れる竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)大きめの石が敷き詰められたグラベルで笑顔が溢れる竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)
GravelKing SSはどのようなシチュエーションで使えるのか

ウェットコンディション走行は、この夏は雨が殆ど降らず干ばつ状態なので残念ながら出来ていません。予想では、泥がノブの間にこびりつき凹凸を埋めてしまうような泥沼ライドや、つるっつるの路面は別として、雨でちょっと湿った・濡れた・水っぽい位ならばGKSSトレッドで十分なのでは、と思っています。

今回シングルトラック・ダブルトラックも少し走りましたが、テクニカル度の高い、グラベルロードと言うよりはMTBコースに近い場所であれば、GKSKの方が適しているという印象ではあります。冬になったらGKSSで雪道テスト走行も行ってみようと思います。踏み固まった雪道ではGKSKの走り具合が良く、真冬にコロラド州でレース参戦したことも数回ありました。

今までは、「前後GKSKは必要なくGKでほぼ十分そうだけどグリップ力はもう少し欲しいな」というような状況では、前輪をグリップ重視でGKSK、後輪を速く転がるGKのコンビネーションにすることもありましたが、GKSS登場によってその必要はもう無くなりそうです。

滑りやすい路面でもトレッドが走りを支えてくれる滑りやすい路面でもトレッドが走りを支えてくれる
舗装路も未舗装路もGK並みのスピードが出て、GKSK同様とまではいかないにしろトラクションもしっかりあるGKSSは、まさにGKSKとGKの良いとこ取りした優等生ですね。今後のドライコンディショングラベル走行時の私の選択肢のトップに来ること間違いなしです。

緊急旅行規制が解けたら、遠くに足を運んで「ヤバい」グラベルもGKSSでガンガン走りたいです。鋭く切れ味のいいグラベル、タイヤ側面カットのリスクが高いグラベルを走るなら、(まだ日本で発売されていませんが)更にパンクしにくいGKSS Plus(プラス)バージョンを選択するのがベストでしょう。

日常使いやトレーニングでも、ロードも乗りたいけど冒険もしたいし…と言う時に妥協せずどちらも目いっぱい出来るGKSSは、サイズ選択も28(チューブドのみ)、32、35、38、43、650B×48と充実していて、自転車の楽しみ方をぐんと広げる可能性は無限大という超好印象です。グラベルを極めたいライダーだけでなく、何でも出来るタイヤを1セットだけ選びたい、初めてグラベルタイヤを購入したいけどどれが良いのか分からない、と思っている方へも、多目的GKSSはお勧め度120%です。

インプレ筆者プロフィール

竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change)竹下佳映(Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change) photo:Salsa Cycles
竹下佳映(たけした かえ)
北海道札幌市出身
米国Panaracer/Factor p/b Bicycle X-Change所属
2019年女性グラベルライダー・オブ・ザ・イヤー (米国Groadioグラベルポッドキャスト主催)
2019年グラベル・パワーランキング女子1位 (米国PureGravel.com主催)
ダーティ・カンザ 女子オープン4位 (2018年、2019年)
ベリー・ルーベ 世界最大グラベルレース 女子オープン1位 (2019年)
ランドラン100 女子オープン2位 (2019年)



パナレーサー GravelKing SS
カラー:ブラック/ブラック・ブラウンサイド
テクノロジー:ZSG Natural Compound、AX-α Cord、Anti-Flat Casing
サイズ タイプ 重量 税抜価格
700×28C チューブド 310g 4,900円
700×32C TLC 320g(ブラックサイド)/330g(ブラウンサイド) 5,200円
700×35C TLC 380g 5,200円
700×38C TLC 410g 5,200円
700×43C TLC 480g 5,200円
650B×48 TLC 540g 5,200円
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