黒枝士揮(愛三工業レーシング)が前半から逃げたツール・ド・ランカウイのクイーンステージ。晴れと雨を交互に繰り返す超級山岳キャメロンハイランドでアタックしたミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)がステージ優勝とリーダージャージを手にした。



逃げグループを見送ったメイン集団逃げグループを見送ったメイン集団 photo:Kei Tsuji
バイクに4人乗りしてレースを観戦バイクに4人乗りしてレースを観戦 photo:Kei Tsujiリーダージャージを着るアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)リーダージャージを着るアンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2016第4ステージツール・ド・ランカウイ2016第4ステージ photo:Le Tour de Langkawi2016年の総合争いは、実質的に、第4ステージの超級山岳キャメロンハイランド(現地名:タナラタ)山頂フィニッシュで決する。

逃げる黒枝士揮(愛三工業レーシング)、ホー・ブル(香港、HKSIプロチーム)、ルーカス・ヤウン(スイス、チームロス)逃げる黒枝士揮(愛三工業レーシング)、ホー・ブル(香港、HKSIプロチーム)、ルーカス・ヤウン(スイス、チームロス) photo:Kei Tsuji標高1,450mの高原リゾート地に向かう129kmコースは前半が平坦で後半が登り。残り50kmを切ってから3%弱の緩斜面が延々と続き、残り15km地点で1級山岳リングレットを一旦クリア。下り&平坦路を経て残り8kmで再びコースは登りに転じ、平均勾配5%の登りを駆け上がる。

逃げを率いる黒枝士揮(愛三工業レーシング)逃げを率いる黒枝士揮(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji過去にキャメロンハイランドで大逃げが何度も決まっているだけに、レース序盤のアタック合戦には多くのチームが参戦した。開幕から2日連続で逃げた山岳賞リーダーのワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)も逃げを試みたが、総合5位・10秒遅れというポジションにつけていたため先行は容認されない。

やがて先頭では3名がエスケープ開始する。黒枝士揮(愛三工業レーシング)、ホー・ブル(香港、HKSIプロチーム)、ルーカス・ヤウン(スイス、チームロス)が飛び出すとメイン集団はようやくスピードを弱める。前日の集団スプリントで6位に入った黒枝は2つのスプリントポイントを連続で先頭通過した。

先頭3名のアドバンテージが6分30秒まで広がったところでティンコフやドラパック、ユナイテッドヘルスケアが集団コントロールを開始する。黒枝とヤウンはすでに総合で10分以上遅れていたものの、ブルは総合55位・27秒遅れという危険な存在。レース後半に差し掛かり、1級山岳リングレットの緩斜面が始まるとタイム差は勢いよく縮まった。

先頭グループとのタイム差が2分を切ったところでメイン集団の中から動いたのはワン・メイインとロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)、ゴー・チュンフアット(シンガポール、トレンガヌプロサイクリング)の3名。すぐさま先頭グループに追いつくと、ヤウンと黒枝が脱落してブルだけが食らいついた。



プロトンがバナナの屋台を通過プロトンがバナナの屋台を通過 photo:Kei Tsuji
スプリントポイントを立て続けに先頭通過する黒枝士揮(愛三工業レーシング)スプリントポイントを立て続けに先頭通過する黒枝士揮(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsujiペースアップしたメイン集団が縦に伸びるペースアップしたメイン集団が縦に伸びる photo:Kei Tsuji
観光名所の滝を通過する黒枝士揮(愛三工業レーシング)ら観光名所の滝を通過する黒枝士揮(愛三工業レーシング)ら photo:Kei Tsujiユナイテッドヘルスケアとドラパックがメイン集団を率いるユナイテッドヘルスケアとドラパックがメイン集団を率いる photo:Kei Tsuji
ユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が献身的にメイン集団を牽引ユライ・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)が献身的にメイン集団を牽引 photo:Kei Tsuji


逃げグループを率いるロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム)逃げグループを率いるロー・シーキョン(マレーシア、マレーシアナショナルチーム) photo:Kei Tsuji1級山岳リングレットを先頭通過したワン・メイインらは約1分リードで最後の超級山岳キャメロンハイランドに向かう。しかし本格的な登りが始まると先頭グループは失速し、勢いあるメイン集団に飲み込まれる。

ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)を引き連れて先頭を走るミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)を引き連れて先頭を走るミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji雨に濡れた登りでアタックを繰り出したのはロペスモレーノ。残り5kmで動いたコロンビアンクライマーにはジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)が反応したものの、加減速を繰り返すロペスモレーノのペースに対応できずに脱落する。代わって追走したダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)を寄せ付けない快調な走りでロペスモレーノがキャメロンハイランドを単独で登りきった。

クラークに代わって2番手に上がるダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)クラークに代わって2番手に上がるダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア) photo:Kei Tsuji若手の登竜門として知られるツール・ド・ラヴニールで2014年に総合優勝を飾り、2015年にアスタナ入りした22歳の新鋭クライマーが圧倒的な走りでステージ優勝とリーダージャージを獲得。ロペスモレーノは2015年ツール・ド・スイスで総合7位フィニッシュ。2016年1月のツール・ド・サンルイスでは、1級山岳フィニッシュでキンタナ兄弟を下してステージ優勝を飾るとともに総合4位&ヤングライダー賞に輝いた。

後続を30秒引き離して独走するミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)後続を30秒引き離して独走するミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji「とてもハイスピードなステージだった。今日は何としてもチームメイトの働きに報いる必要があったんだ。メンバーが1人足りない状況でも彼らは勝利に必要なお膳立てをしてくれた。この勝利は大きな自信になるし、(初グランツールの)ブエルタ・ア・エスパーニャに向けて落ち着いて準備ができるよ」と、控えめなボリュームのスペイン語でロペスモレーノは語る。ステージ3位に入ったレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)から29秒リードでロペスモレーノは残る4ステージを走る。

3位争いのスプリントを繰り広げるフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)とレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ)3位争いのスプリントを繰り広げるフランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)とレイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) photo:Kei Tsuji1級山岳で山岳ポイントを獲得したワン・メイインは2013年に続く山岳賞に向けて大きく前進。アジアンライダー賞ジャージはステージ24位でフィニッシュしたオスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ)の手に渡っている。

愛三工業レーシングは伊藤雅和と早川朋宏が1分17秒遅れの同グループでフィニッシュ(リザルト上は早川が1分35秒遅れになっている)。伊藤は「2年前の今日(ツール・ド・ランカウイ第1ステージで落車して)大腿骨を折ったんです。だから今日は結果を出したかった。残り5kmまでは集団内で走っていましたが、最後は力が及びませんでした。先頭でアタックがかかった時に、ついていくパワーが足りなかった。集団から遅れてからは、残り3kmで後ろから早川が追いついて、そこからフィニッシュまで引いてもらいました」と、悔しい表情を浮かべながらコメントする。

クイーンステージを終えて伊藤は総合24位。アジアンライダー賞ではモハマドアディクフサイニから6秒遅れの2位につけている。逃げた黒枝はポイント賞7位に浮上した。



超級山岳キャメロンハイランドに先頭でフィニッシュするミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)超級山岳キャメロンハイランドに先頭でフィニッシュするミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ) photo:Kei Tsuji
1分18秒遅れでフィニッシュする伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)1分18秒遅れでフィニッシュする伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji揃ってフィニッシュした伊藤雅和と早川朋宏(愛三工業レーシング)揃ってフィニッシュした伊藤雅和と早川朋宏(愛三工業レーシング) photo:Kei Tsuji
第4ステージ2位ハラミーリョディアス、1位ロペスモレーノ、3位ヤンセファンレンズバーグ第4ステージ2位ハラミーリョディアス、1位ロペスモレーノ、3位ヤンセファンレンズバーグ photo:Kei Tsuji


ツール・ド・ランカウイ2016第4ステージ結果
1位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)        3h25’37”
2位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)   +30”
3位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) +35”
4位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
5位 ジョナサン・クラーク(オーストラリア、ユナイテッドヘルスケア)
6位 ジュリオ・チッコーネ(イタリア、バルディアーニCSF)
7位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)
8位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ)
9位 ルーカ・キリコ(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア)
29位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                 +1’18”
33位 早川朋宏(日本、愛三工業レーシング)                 +1’35”
42位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                 +3’33”

個人総合成績
1位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)        14h08’03”
2位 レイナルト・ヤンセファンレンズバーグ(南アフリカ、ディメンションデータ) +29”
3位 ダニエル・ハラミーリョディアス(コロンビア、ユナイテッドヘルスケア)   +34”
4位 ジョージ・ハーパー(イギリス、ワンプロサイクリング)           +39”
5位 ジャスパー・ハンセン(デンマーク、ティンコフ)              +45”
6位 ヤネス・ブライコヴィッチ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア)
7位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)
8位 フランシスコ・マンセボ(スペイン、スカイダイブドバイ)
9位 アントニオ・ピエドラ(スペイン、ファンヴィクソールサイクルズ)
10位 イヴァン・サンタロミータ(イタリア、スカイダイブドバイ)
24位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                 +1’28”
34位 平塚吉光(日本、愛三工業レーシング)                 +3’48”

ポイント賞
1位 アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)

山岳賞
1位 ワン・メイイン(中国、ヘンシャンサイクリング)

アジアンライダー賞
1位 オスマン・モハマドアディクフサイニ(マレーシア、トレンガヌ)    14h09’25”
2位 伊藤雅和(日本、愛三工業レーシング)                  +06”

text&photo:Kei Tsuji in Cameron Highlands, Malaysia