故マルコ・パンターニがかつてトレーニングを行なっていた1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャと、ジロ初登場となる1級山岳モンテコピオーロの山頂フィニッシュがセットになったタフな一日。今大会最初の本格山岳ステージで、ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)がその勝負強さを見せつけた。



晴れ渡るフォリーニョをスタートしていく晴れ渡るフォリーニョをスタートしていく photo:Kei Tsuji


ジロ・デ・イタリア2014第8ステージ高低図ジロ・デ・イタリア2014第8ステージ高低図 image:RCS Sport大会9日目にして本格山岳が姿を現した。ジロはイタリア半島の背骨にあたるアペニン山脈に脚を踏み入れる。

第8ステージの全長は179km。そのうち残り50kmを切ってからは登りと下りしかない。最初の難所である平均勾配9.9%/最大勾配14%という1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャは、故マルコ・パンターニがトレーニングで使用していた登りだ。

さらに2級山岳ヴィッラッジョ・デル・ラーゴを越え、短い下り区間を経て1級山岳モンテコピオーロへ。ジロ初登場の平均勾配7.8%/登坂距離6.4kmの登りでマリアローザ争いが加熱した。

スタート直後からのアタック合戦で逃げのチケットを手にしたのは以下の10名。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
ジュリアン・ベラール(フランス、AG2Rラモンディアール)
マティア・カッターネオ(イタリア、ランプレ・メリダ)
ペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)
エドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)
マウロ・フィネット(イタリア、ネーリソットリ)
マルコ・バンディエラ(イタリア、アンドローニジョカトリ)
ステファノ・ピラッツィ(イタリア、バルディアーニCSF)
カルロス・キンテロ(コロンビア、コロンビア)

逃げグループを形成するエドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)ら逃げグループを形成するエドゥアルト・ヴォルガノフ(ロシア、カチューシャ)ら photo:Kei Tsuji24km地点で飛び出したこの10名を追って、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が単独追走を仕掛けたものの届かず。この大人数の逃げグループは、最大8分のリードをもってアペニン山脈を北上した。

1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャでAG2Rラモンディアールがペースを作る1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャでAG2Rラモンディアールがペースを作る photo:Kei Tsujiレース後半にかけてメイン集団のペースメイクを担ったのはBMCレーシングとモビスター。

最初の難所である1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャに4分遅れで突入したメイン集団からは、マリアローザのマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が千切れていく。総合争いにおいてカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)に攻撃を仕掛ける必要のあるモビスターがペースを上げた。

最大勾配14%の登りで先頭はアレドンド、ピラッツィ、ケムヌールの3人に絞られ、ここからアレドンドが再度加速して独走を開始。アレドンドはそのまま1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャを先頭通過して先を急ぐ。

AG2Rラモンディアールがペースを作るメイン集団は、人数を減らしながら2分遅れでこのパンターニ所縁の登りを越える。すると、テクニカルで細い下りでピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)がアタック。総合24位・3分01秒遅れのロランの動きには誰も反応しなかった。



1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャを登るメイン集団1級山岳チッポ・ディ・カルペーニャを登るメイン集団 photo:Kei Tsuji
逃げグループから飛び出したジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)逃げグループから飛び出したジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji逃げていたピラッツィを捉えるピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー)逃げていたピラッツィを捉えるピエール・ロラン(フランス、ユーロップカー) photo:Kei Tsuji



スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)率いるメイン集団スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)率いるメイン集団 photo:Kei Tsujiロランは逃げていた選手たちを抜きながら、前から下りてきたケムヌールのヘルプを得ながら、先頭をひた走るアレドンドを追撃する。残り10km地点の2級山岳ヴィッラッジョ・デル・ラーゴ頂上で、先頭アレドンドと追走ロランのタイム差は55秒。AG2Rラモンディアールが率いるメイン集団は1分40秒遅れで続いた。

9分39秒遅れたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ)9分39秒遅れたミケーレ・スカルポーニ(イタリア、アスタナ) photo:Kei Tsuji序盤から逃げていたにも関わらず、ペースを落とさずに最後の1級山岳モンテコピオーロを駆け上がるアレドンド。しかし追走するロランとのタイム差は縮まっていく。残り3kmを切ってついにロランはアレドンドを捉え、食らいつくコロンビアンを引き離して先頭に出た。アレドンドは惜しくも逃げ切りを逃したが、その健闘の成果としてマリアアッズーラを手にしている。

キセロフスキーを振り切ったディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)が2勝目キセロフスキーを振り切ったディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)が2勝目 photo:Kei Tsuji先頭ロランはメイン集団に対して18秒リードで残り1km。スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)の強力な牽引によってそのタイム差は縮まっていく。残り400mから始まる急勾配区間で、メイン集団からダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)が発進した。

ステージ2勝目をマークしたディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)ステージ2勝目をマークしたディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsujiモレーノは残り250mで先頭ロランをキャッチしたが、13%の勾配を前にペースダウン。その後方からロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)がアタックし、ここにディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)が反応した。

総合首位に立ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)総合首位に立ったカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji集団から飛び出す形となったキセロフスキーとウリッシが、先頭で最終ストレートに姿を現してスプリントへ。ウリッシがキセロフスキーを抜き去り、驚きの表情を浮かべながら両手を大きく広げた。

第5ステージに続く今大会2勝目を飾ったウリッシは「自分でもこの勝利は予想していなかった」と驚く。「最後の登りはリミッターぎりぎりだった。でも何とか堪えて、勝負どころと踏んでいた急勾配区間でキセロフスキーのアタックに反応したんだ。再びこんな美しい勝利を掴むことが出来て本当に嬉しい」。

難易度の高い山岳ステージでその能力の高さを見せつけたウリッシは総合6位にジャンプアップ。本来のエースであるダミアーノ・クネゴ(イタリア)らが落車の影響でコンディションを落とす中、24歳のウリッシが大健闘を見せている。

メイン集団は急勾配区間で崩壊し、それぞれバラバラにフィニッシュ。山岳でリードを奪うと見られていたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)を引き離したものの、そのタイム差は僅かに2秒だった。

35分近く遅れたマシューズに代わって、エヴァンスがマリアローザを獲得。エヴァンスは総合2位以下を1分近く引き離している。

リーダーチームはレースコントロールを担う必要があるため、閉幕まで2週間を残してのマリアローザ獲得は早すぎるとの声も。しかし、エヴァンスは「クライマー向きの山岳がまだまだ残っているので、もっと大きなタイム差が生まれる可能性がある。だから少しでもリードしておくことが肝心」と、このまま首位の座を明け渡すことなくトリエステまで走りきる構えだ。マリアローザはついに本命の手に渡った。



21分52秒遅れの集団でフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング)21分52秒遅れの集団でフィニッシュする別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji1級山岳モンテコピオーロにフィニッシュする新城幸也(ユーロップカー)1級山岳モンテコピオーロにフィニッシュする新城幸也(ユーロップカー) photo:Kei Tsuji









ジロ・デ・イタリア2014第8ステージ結果
1位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
2位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
3位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
4位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
5位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
8位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
9位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
10位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
80位 別府史之(日本、トレックファクトリーレーシング)
112位 新城幸也(日本、ユーロップカー)
4h47'47"

+06"

+08"


+14"
+17"
+20"
+21'52"
+27'01"


マリアローザ 個人総合成績
1位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
2位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
4位 スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)
5位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
6位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
7位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、トレックファクトリーレーシング)
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
34h22'35"
+57"
+1'10"
+1'31"
+1'39"
+1'43"
+1'44"
+1'45"
+1'49"
+1'50"


マリアロッサ ポイント賞
ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)

マリアアッズーラ 山岳賞
ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)

マリアビアンカ ヤングライダー賞
ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

チーム総合成績
BMCレーシング

text&photo:Kei Tsuji in Montecopiolo, Italy