逃げ、合流、選別、そしてクアルトゥッチの勝負勘。ソリューションテック・ヴィーニファンティーニのチーム戦術と勝利への執念が交差したTRRT 2025男子エリートレースを振り返る。

武蔵野の森公園をパレードスタートする選手たち photo:Hitoshi OMAE
グランドサイクル東京2025と名付けられた大イベントのなかでもっとも大きなイベント、ザ・ロードレース東京多摩(関係者間ではTRRTと略される)2025が開催された。ちなみに選手たちは(僕らも)多摩ロードと呼んでいる。
レースは東京五輪と同様、東京都府中市の武蔵野の森公園をスタートし、南下して多摩川を渡る是政橋までパレードしてリアルスタートとなった。コミッセールカー2に乗るコミッセールパネルの藤田将志さんから緑の旗が振られた瞬間、宇都宮ブリッツェンの武山晃輔がアタックしてレースが始まった。

「尾根幹」でトレンガヌがアタックする photo:Hitoshi OMAE 
散発的なアタックが掛かるものの、決定的な動きには繋がらない photo:Hitoshi OMAE

最初の補給地点に近づく上りで山本大喜(JCLチーム右京)が動き、新城がチェック photo:Hitoshi OMAE
尾根幹に至るまでにいくつかの上りがあるが、標高差はそれぞれ30〜40mほどと短いため、上りでそれほど大きいタイム差を開くことができない。逃げグループができ、しばらくしてそれが吸収されることが繰り返された。
尾根幹で12人の逃げができ、そこにソリューションテック・ヴィーニファンティーニからアレクサンドル・ベルメールが入った。「すべての逃げにチームから誰か入れる、それが約束」と新城幸也は事前に話していた。そして逃げには誰かしらが入っている。約束は守られているということだ。
45kmほど走ってできた14人の中には山本大喜(JCLチーム右京)、今村駿介(NIPPO・ワンティ・リユーズ)や沢田時(宇都宮ブリッツェン)、新城雄大(キナンレーシング)、新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティー二)、香山飛龍と入部正太朗(シマノレーシング)らが含まれ、45秒に差が広がって青梅市の周回コースに向かった。

JR青梅線の軍畑駅そばを右折。ここから登坂区間に入る photo:Hitoshi OMAE

榎峠に設定されたKOMポイントには多くのファンが押しかけた photo:Hitoshi OMAE
JR青梅駅前に設定されたフィニッシュラインを過ぎて16kmの周回コースに入っても状況は変わらず、1分弱の差を保ってレースが進む。この周回を4周回るため、このまま逃げが逃げ切るか、それとも追走から優勝者が出るか。タイム差が1分となるまでは逃げ集団にチームカーが上がってくることが許されないため、選手たちは補給地点に至るまで水を得ることができない。夏の日本のレースらしく、オーガナイザーからは水を入れたボトルを積んだオートバイが用意され、逃げの選手たちはここからボトルを受け取ることができた。
榎峠に設定されたKOM(キングオブマウンテン)への上りは2kmで130mほどなのだが、勾配は一定でなく途中で緩む区間がある分、キツい区間は10%を軽々と超える。JR青梅線の軍畑駅の地点でコースは国道411号から離れて榎峠へ上って行くが、このあたりには多くの観客が待ち構えていた。電車で見に来ることができるUCIレース、日本もここまで来たのだ!
KOM1度目の通過は逃げ集団が無事に、と言いたいが、ペースアップしたメイン集団から飛び出し、10数秒後にKOMを通過したのがロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)、さらにベンジャミン・プラデス(VC FUKUOKA)らが下りで逃げに追いつき、新しい逃げ集団が形成された。

新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)が強力に逃げグループを牽引する photo:So Isobe

3周目の榎峠。ロレンツォ・クアルトゥッチ(イタリア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)とベンジャミ・プラデス(スペイン、VC FUKUOKA)が抜け出す photo:So Isobe

先頭2人に食らいつく沢田時(宇都宮ブリッツェン) photo:So Isobe 
山本大喜(JCLチーム右京)が4番手で榎峠をクリア photo:So Isobe
2周目、新たに形成された逃げに複数人数を抱えるのはVC FUKUOKAのプラデスとガルシア、ソリューションテックの新城とクアルトゥッチだ。さらにKOMの上りでソリューションテック・ヴィーニファンティーニのキリロ・ツァレンコが先頭集団に近づく。ソリューションテック・ヴィーニファンティーニにとってはかなり有利なレース運びとなった。
3周目、国道411号の上りから新城がペースを上げ、逃げ集団を絞っていく。そしてKOMの上りに入ってクアルトゥッチがアタック、それに追従できたのはプラデス一人。この2人が勝利へのアンサンブルを奏で始めた。新城は仕事を終えてマイペース走法に切り替えた。
クアルトゥッチら2人の追走はもともと逃げ集団にいた数名と、メイン集団から上がってきたツァレンコだ。タイム差は20秒ほど。さあ、どうなるか!先頭は青梅坂下の交差点を右折しながら最終周回に入るジャンを聞いた。

残り2周でアタックしたクアルトゥッチとプラデスが先行 photo:Hitoshi OMAE
長い直線ではお互いが目視できるはずの先頭2人と追走9人、そこにはクアルトゥッチのチームメイトが含まれた。ツァレンコだ。そしてツァレンコは補給地点から青梅坂への上りで前の2人から追走のツァレンコまでの差は10秒。
「あそこでミスをした」とレース後に話すプラデス、追いつかれることを恐れて力を使い、そのまま下りにかかった。トンネルからの下りはたった500m、左折して500mがフィニッシュラインだ。

両手を挙げてフィニッシュラインを駆け抜けるロレンツォ・クアルトゥッチ(イタリア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Hitoshi OMAE

3位に滑り込んだキリロ・ツァレンコ(ウクライナ、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Yuichiro Hosoda 
4位グループの勝負を制した沢田時(宇都宮ブリッツェン) photo:Yuichiro Hosoda
クアルトゥッチはプラデスをやすやすと交わし、両手を挙げて青梅駅前のフィニッシュラインを越えた。「最後は『勝つ!』『勝つ!』『勝つ!』と思って走った」と話すクアルトゥッチ。唯一参加のプロチームが、1位と3位の賞金を笑顔で持ち帰った。

「最後は絶対に勝つと自分に言い聞かせていた」と言うロレンツォ・クアルトゥッチ(イタリア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) photo:Yuichiro Hosoda

THE ROAD RACE TOKYO TAMA 2025男子エリート表彰台 photo:Yuichiro Hosoda

グランドサイクル東京2025と名付けられた大イベントのなかでもっとも大きなイベント、ザ・ロードレース東京多摩(関係者間ではTRRTと略される)2025が開催された。ちなみに選手たちは(僕らも)多摩ロードと呼んでいる。
レースは東京五輪と同様、東京都府中市の武蔵野の森公園をスタートし、南下して多摩川を渡る是政橋までパレードしてリアルスタートとなった。コミッセールカー2に乗るコミッセールパネルの藤田将志さんから緑の旗が振られた瞬間、宇都宮ブリッツェンの武山晃輔がアタックしてレースが始まった。



尾根幹に至るまでにいくつかの上りがあるが、標高差はそれぞれ30〜40mほどと短いため、上りでそれほど大きいタイム差を開くことができない。逃げグループができ、しばらくしてそれが吸収されることが繰り返された。
尾根幹で12人の逃げができ、そこにソリューションテック・ヴィーニファンティーニからアレクサンドル・ベルメールが入った。「すべての逃げにチームから誰か入れる、それが約束」と新城幸也は事前に話していた。そして逃げには誰かしらが入っている。約束は守られているということだ。
45kmほど走ってできた14人の中には山本大喜(JCLチーム右京)、今村駿介(NIPPO・ワンティ・リユーズ)や沢田時(宇都宮ブリッツェン)、新城雄大(キナンレーシング)、新城幸也(ソリューションテック・ヴィーニファンティー二)、香山飛龍と入部正太朗(シマノレーシング)らが含まれ、45秒に差が広がって青梅市の周回コースに向かった。


JR青梅駅前に設定されたフィニッシュラインを過ぎて16kmの周回コースに入っても状況は変わらず、1分弱の差を保ってレースが進む。この周回を4周回るため、このまま逃げが逃げ切るか、それとも追走から優勝者が出るか。タイム差が1分となるまでは逃げ集団にチームカーが上がってくることが許されないため、選手たちは補給地点に至るまで水を得ることができない。夏の日本のレースらしく、オーガナイザーからは水を入れたボトルを積んだオートバイが用意され、逃げの選手たちはここからボトルを受け取ることができた。
榎峠に設定されたKOM(キングオブマウンテン)への上りは2kmで130mほどなのだが、勾配は一定でなく途中で緩む区間がある分、キツい区間は10%を軽々と超える。JR青梅線の軍畑駅の地点でコースは国道411号から離れて榎峠へ上って行くが、このあたりには多くの観客が待ち構えていた。電車で見に来ることができるUCIレース、日本もここまで来たのだ!
KOM1度目の通過は逃げ集団が無事に、と言いたいが、ペースアップしたメイン集団から飛び出し、10数秒後にKOMを通過したのがロレンツォ・クアルトゥッチ(ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)、さらにベンジャミン・プラデス(VC FUKUOKA)らが下りで逃げに追いつき、新しい逃げ集団が形成された。




2周目、新たに形成された逃げに複数人数を抱えるのはVC FUKUOKAのプラデスとガルシア、ソリューションテックの新城とクアルトゥッチだ。さらにKOMの上りでソリューションテック・ヴィーニファンティーニのキリロ・ツァレンコが先頭集団に近づく。ソリューションテック・ヴィーニファンティーニにとってはかなり有利なレース運びとなった。
3周目、国道411号の上りから新城がペースを上げ、逃げ集団を絞っていく。そしてKOMの上りに入ってクアルトゥッチがアタック、それに追従できたのはプラデス一人。この2人が勝利へのアンサンブルを奏で始めた。新城は仕事を終えてマイペース走法に切り替えた。
クアルトゥッチら2人の追走はもともと逃げ集団にいた数名と、メイン集団から上がってきたツァレンコだ。タイム差は20秒ほど。さあ、どうなるか!先頭は青梅坂下の交差点を右折しながら最終周回に入るジャンを聞いた。

長い直線ではお互いが目視できるはずの先頭2人と追走9人、そこにはクアルトゥッチのチームメイトが含まれた。ツァレンコだ。そしてツァレンコは補給地点から青梅坂への上りで前の2人から追走のツァレンコまでの差は10秒。
「あそこでミスをした」とレース後に話すプラデス、追いつかれることを恐れて力を使い、そのまま下りにかかった。トンネルからの下りはたった500m、左折して500mがフィニッシュラインだ。



クアルトゥッチはプラデスをやすやすと交わし、両手を挙げて青梅駅前のフィニッシュラインを越えた。「最後は『勝つ!』『勝つ!』『勝つ!』と思って走った」と話すクアルトゥッチ。唯一参加のプロチームが、1位と3位の賞金を笑顔で持ち帰った。


1位 | ロレンツォ・クアルトゥッチ(イタリア、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) | 2:46:29 |
2位 | ベンジャミ・プラデス(スペイン、VC FUKUOKA) | +0:03 |
3位 | キリロ・ツァレンコ(ウクライナ、ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ) | +0:24 |
4位 | 沢田時(宇都宮ブリッツェン) | +1:12 |
5位 | 入部正太朗(シマノレーシング) | |
6位 | エリオット・シュルツ(オーストラリア、ヴィクトワール広島) | |
7位 | 今村 駿介(ワンティ・NIPPO・リユーズ) | |
8位 | カーター・ベトルズ(オーストラリア、ルージャイインシュランス) | |
9位 | 久保田悠介(ヴィクトワール広島) | +1:15 |
10位 | 山本大喜(JCLチーム右京) |
text:Hitoshi OMAE
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